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    amagasa_69

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    amagasa_69

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    「年越し」
    ※同居している風降。
    黒の組織壊滅後初めての年越しに休みをもらった2人。長野県警の大和と諸伏に長野で過ごさないかと誘われる。

    前半は飯テロです。
    急いで仕上げたので言葉遣い・誤字・プロットなど至らないところも多いかと思います。すみません💦
    雰囲気で読んで下さいm(_ _)m

    #風降
    windfall

    年越し「降谷さん!!終わりました!!!」
    風見の声に、降谷は振り返った。
    「僕も後少しだ。少し待っていてくれ」
    今日は12月30日。
    ここは公安部のデスクで、2人は仕事中だった。
    しかし、それも今日まで。上司の黒田が年末は休めと休みを取ってくれたからだ。今日は2人の仕事納めだ。そしてたった今、風見は仕事を全て終えたところだった。
    それから30分。
    降谷も全ての仕事を終え、2人はRX-7に乗り込んだ。

    「降谷さん!雪です!!」
    車窓についた白いものを指して、風見は言った。声量こそ落としているが、目はキラキラと輝いている。
    「東京ではめったに降らないからな。今年の長野は凄いらしいぞ」
    「楽しみですね!」
    2人は新幹線に乗っていた。
    外は暗いためどのような景色なのかはわからないが、長野に近づき標高が高くなるにつれ、段々と気温が下がってきているのがわかった。
    組織が壊滅して、初めての年末。長野で過ごさないかと2人を誘ったのは諸伏高明と大和敢助だった。
    東京から2時間弱。あっという間に長野に到着し、2人は改札をくぐった。
    「いらっしゃい」
    「おう!よく来たな!」
    そこに居たのは、諸伏と大和。あれよあれよという間に荷物を奪い取られ、気づけばシトロエンの後部座席に乗っていた。
    「夕飯はまだか?」
    大和の問いかけに風見が頷く。降谷も返事をしようとしたところで、車内にきゅるるという可愛い音が鳴った。
    「わ、笑うな…!」
    怪力で背中を叩かれ、噎せる。
    「す、すみません(笑) 余りにも可愛らしくて」
    降谷は顔を真っ赤にしている。それがまた可愛らしくて、風見は笑みが抑えられなかった。
    「お腹は空いているようですね。どこに行きましょうか?」
    ルームミラー越しに諸伏が微笑む。
    「そりゃ、長野に来れば蕎麦だろ」
    「いや、明日は年越し蕎麦でしょう。ここはパスタで」
    「いや蕎麦だ!」
    「パスタです」
    「よし、風見はどっちが食べたいか?」
    「えっ」
    ぽんぽんと言い合う大和と諸伏に呆気に取られていると、大和が急に話を振った。
    「えーっと…」
    「ラーメンにしましょう」
    困っている風見を見かねて、降谷が口を挟んだ。
    「お、信州味噌ラーメンか」
    「今日は特に寒いですし、いいですね」
    「店はあそこか?」
    「そうですね」
    言い合いをし始めたかと思えば、意気投合した2人に降谷と風見は顔を見合わせた。長年培われた信頼関係が作る、独特の空気。
    シトロエンの振動とその雰囲気が新鮮で、心地よかった。

    到着したのは、長野県警本部に程近い老舗らしきラーメン店だった。趣のあるどっしりとした看板に紺色の暖簾。
    入ると「らっしゃい!」と威勢のいい声が聞こえた。
    「おう大和!久しぶりだな!」
    店員の一人が大和に話しかけた。
    「ちょっと立て込んでてな。ようやく落ち着いたところだ」
    「諸伏も久しぶり!そっちは…」
    「東京から来た友人ですよ」
    「そうか!ゆっくりしてってくれよ!」
    伊達を思い出させるようなガタイの良さに、明るい笑顔。
    自己紹介しようとしたところで、他の客に呼ばれて行ってしまった。
    「ここは行きつけなんだよ。あいつは俺と高明の高校時代の同級生だ」
    「そうだったんですね」
    「さ、早く注文しましょう」
    諸伏に促されてメニューを広げる。メニューには3種類程の麺類と、様々なサイドメニューが載っていた。
    隣からきゅるきゅると微かに音が聞こえた。ジュージューと何かが焼ける音やカチャカチャと食器が当たる音で、風見にしか聞こえない程の音量だ。
    堪え切れずにふっと笑うと、足を踏んづけられた。
    「ふ、降谷さんは何にするんですか?」
    「そうだな…辛味噌ラーメンと…」
    「オススメは野菜炒めですよ」
    「じゃあ、それで」
    「自分は辛味噌ラーメンとしそ餃子でお願いします」
    「決まりですね」
    テキパキと大和が注文を伝えていく。その間に諸伏がセルフサービスのお冷とおしぼりを持ってきた。
    手を拭いて、水を一口のみ、ふぅっと息を吐き出す。
    そういえば、まともな食事にありつけるのは3日ぶりだな、と風見は思った。ここのところはずっと溜まった仕事を片付けるために保存食生活だったからだ。コンビニに行く暇すらなかった。
    「へいおまち!」
    運ばれてきた料理に2人は感嘆の声を上げた。
    ほかほかと上がる湯気、美味しそうな香り。風見のお腹もついに悲鳴を上げた。
    「「「「いただきます」」」」
    まずはスープを一口。鼻を抜ける味噌の香りにうっとりとする。まろやかでコクのあるスープ。甘味と塩気のバランスが実に良い。そして後から来る辛さ。冷えていた身体がぽかぽか温まっていく。
    次は麺を一気に。ずぞぞっと小気味良い音を立てて中太の麺が入っていく。スープがよくからんだコシのある麺は、あっという間に咽頭を通過して行った。
    そしてチャーシュー。肉厚なそれは赤身が多めで、噛む度に筋肉の繊維から旨みが溢れ出すようだった。
    「うまい…」
    思わずほぅっと息をつく。
    水を飲んで、今度は餃子にかぶりつく。
    じゅわっと溢れる肉汁に、ふわっと香るしその爽やかさ。余りの美味しさに笑みがこぼれた。
    「風見!この野菜炒め、すっごく美味いぞ!」
    降谷に呼ばれて風見は隣を見た。
    降谷は野菜炒めを楽しんでいた。
    キャベツ、人参、ピーマン、玉ねぎ、豚肉、カラフルな具材達がごま油で包まれ、つやつやと輝いている。
    「小ライス追加でお願いします!」
    「はいよ!」
    降谷が米を注文すると、すぐにやってきた。
    「長野の新米だよ!味わって食べな!」
    「はい!」
    野菜炒めを放り込むと、米をかきこむ。「ガツガツ」という音がピッタリなぐらい、降谷は良い食べっぷりだった。
    美味しそうに食べる降谷を見て、風見も嬉しくなる。
    大和も諸伏も嬉しそうに降谷を見ていた。



    「今から順番に入浴すると遅くなっちゃいますから、今夜は銭湯にしましょうか」
    ラーメンを楽しみ、会話も楽しみ、そうこうしている間に時刻は23時を回った。
    諸伏の運転で一同は長野県警行きつけだという銭湯に来ていた。
    「この時間だし、客はほとんどいないだろう」
    大和の言葉は本当で、4人の貸切状態だった。
    昭和の映画で見たことがあるような、富士山の壁画。年季は入っていそうだが手入れが行き届いていて、大切にされているのが分かた。
    それぞれシャワーで頭と身体を洗った後、4人で湯船に浸かる。
    ゆっくり湯船に浸かるのも何日、いや何週間ぶりか。湯の温かさが指先まで伝わっていく。
    風見はうっとりと目を閉じた。降谷もゆったりと寛いでいる。
    本当は温泉に連れて行きたかったんだがな、と言う大和は申し訳なさそうだったが、風見も降谷も大満足だった。
    「この雰囲気、警察学校の大浴場を思い出しますね」
    降谷が諸伏に話しかけた。
    「ええ」
    「高明さんは知っていると思いますけど、僕達、かなりやんちゃで。色々やってたので罰として体育祭シーズンに毎日風呂掃除を言いつけられていたんですよね」
    「知っていますよ。景光から電話で聞いていました。その間に犯人を逮捕したことも」
    「ふふふ。掃除を放り出して、犯人の元へ乗り込んだんですよね。その後慌てて学校に戻って掃除をしたんですけど、終わるはずもなくて、僕が教官を引き止めて時間稼ぎをしたんです。たまたま爆弾を発見して、たまたま行方不明になった女の子を見つけてって」
    「他にも、事故で首が締まった教官を助けたり、病気で気を失ったトラック運転手を救ったりしたんでしょう?」
    「はい(笑) 今まで生きてきて、1番濃い半年でしたよ」



    夜が耽けて、12月31日。
    4人は大和の自宅に宿泊していた。
    まだ外が明るくなる前に、降谷のスマホが鳴った。緊急の呼び出しだ。
    やはり、現実はそう甘くない。久しぶりにゆっくり過ごせ、と貰った年末年始の休みだったが、犯罪者は待ってくれなかった。
    慌ただしく準備をし、始発に飛び乗る。
    「またいつでも来てくださいね」
    「これ、つまらんもんだが土産だ。落ち着いたら食べてくれ」
    「これは朝ごはんに」
    「「ありがとうございます!」」
    大和から大きなボックスを、諸伏から紙袋を渡された。2人がそれを受け取った途端、扉が閉まる。新幹線が動き始めて、あっという間に2人が小さくなっていく。
    「降谷さん、座りましょうか」
    ホームが完全に見えなくなってから、風見は言った。
    12月31日。始発の上りの列車は空いていて、自由席でも2人がけの席がすぐに見つかる。
    「朝ごはん、何でしょう?」
    席に座ってすぐ、風見は紙袋を開けた。
    中には丸いものが4つ。一つ一つ紙に包まれていて、何かよくわからない。とりあえず1つずつ持って包を開けてみる。
    「おやきか!」
    降谷が嬉しそうな声を上げた。
    風見もそれを聞いてピンとくる。長野名物、おやきだ。まだ温かい。
    「何味でしょうか?」
    「書いてないから、食べてみないことには…。冷めないうちに食べよう」
    「「いただきます」」
    2人で一緒にかぶりつく。
    「ん!…きんぴらごぼうだ!」
    飲み込んでから、降谷が言った。
    「自分はりんごとカスタードです!」
    風見も続いて言う。
    シャキシャキとしたきんぴらごぼうの食感、白胡麻の香りと甘辛い味つけ。甘酸っぱくジューシーなりんごにバニラをふんだんに使ったカスタード。薄めの生地も香ばしい。今まで味わったことのない美味しさに2人は顔を綻ばせた。
    あっという間に一つ目を平らげて、二つ目に手を伸ばす。
    次は降谷がかぼちゃ、風見がチーズとキノコだった。
    ほくほくとしてほんのり甘いかぼちゃ、クリーミーなチーズ、どちらもとても美味しい。
    「美味しいな…」
    「はい、美味しいですね…」
    心を満たす幸せに、ほっと息を着く。
    「後でお礼の電話を入れましょう」
    「ああ、勿論。…さ、仕事を始めよう」
    「仕事納めはもうしたと思ったんですけどね」
    「犯罪者はそういう事情もお構い無しだからな」
    どこからともなく、風見がiPadを取り出す。まずは資料の確認だ。
    一年が終わるのもあと少し。
    今年最後の仕事が始まった。



    「お、終わった〜」
    気の抜けた風見の声が部屋に響いた。首を曲げれば、ボキボキと激しい音が鳴る。降谷も声こそ出さないが、大きくのびをしていた。
    時刻は23時59分。まだ年は越していない。だが、自宅でのんびりと年を越してみたいという願いは今年も叶わない。
    「なぁ、風見」
    降谷がいつのまにか傍に立っていた。
    「キス、してくれないか」
    「え…」
    ここは庁舎だ。部下は1時間ほど前に帰らせているため部屋には2人きりだが、公私をかっちり分けて外では全く恋人っぽいことをしたがらない降谷がそんなことを言うなんて。
    珍しくて、いや初めてのことで、風見は戸惑った。
    その反応に業を煮やしたのか、降谷が自分から顔を近づけてきた。
    唇と唇が重なる。

    ボ-ン… ボ-ン…

    遠くから聞こえる低い鐘の音に、風見は目を開けた。除夜の鐘だ。
    降谷の青い瞳と目が合う。
    「キス納めとキス始めだよ」
    時刻は0時0分。新年の始まり。
    「初めて2人きりで過ごせる年越しだったんだ。どうせなら、君とその瞬間に繋がっていたくて…」
    耳を赤くして降谷は話した。
    繋がっていたかった。なんて可愛い願いだろうか。
    愛おしくて仕方がない。
    「風見…その、嫌だったか…?」
    降谷が上目遣いで風見を見た。
    「降谷さん」
    返事の代わりに、降谷の右手を取る。
    そして、そこに口付けを落とす。
    「右腕として、恋人として。今年もよろしくお願いします」
    「風見…」
    「さ、帰りましょう、降谷さん」
    茹でダコのように顔を真っ赤にしている降谷を引っ張り、部屋を出る。
    あれは少しキザすぎただろうか、そうは思うものの、手を繋いだ降谷は夢見心地の表情で、自分は間違っていなかったのだと悟る。
    風見の運転で2人の家に帰る。
    ただ触れ合わせるだけのキスでは足りない。新年最初の夜はあっという間に更けていった。



    鳥の声がして、目が覚める。日が高く昇っていた。
    カーテンの隙間から陽の光が差して、降谷の髪をキラキラと輝かせていた。
    降谷はまだ眠っている。すぅ、すぅ、と規則正しい呼吸に合わせて胸が上下する。
    世界に2人きり。静かで、穏やかな時間。
    ああ、幸せだ。
    サラサラの金糸に手を伸ばそうとした途端、睫毛が震えた。
    降谷は何度か瞬きをした後、風見を捉える。
    「おはよ、かざみ…」
    「おはようございます」
    「んー…」
    寝ぼけ眼で、降谷がのびをする。
    「まだ寝ててもいいんですよ」
    今度こそ手を伸ばして金糸を梳く。
    くすぐったいのか、降谷が微笑む。
    「うー…」
    珍しく完全にスイッチオフの降谷だ。
    「お雑煮作りますね」
    「もうちょっと…」
    ベッドを出ようとして、降谷に掴まれる。
    もぞもぞと動いて降谷を胸に抱きしめると、降谷は耳を胸に押し付けた。
    降谷は心音を聞くのが好きだ。♩=100の安心のリズム。いつか、人は本能的に心拍と同じ速さの音を聞くと落ち着くのだ、と言っていた。
    しばらくして、寝息が聞こえ始める。
    風見の身体に包まれて眠る降谷はまるで胎児のようだ。
    今日は1月1日。今日ぐらいのんびりしてもいいだろう。もう少しだけこの穏やかな時間を楽しみたい。
    もう少しだけ。
    やってきた眠気の波に身を任せて、風見は目を閉じた。



    だがしかし、ここは米花町だ。
    その時間は一瞬で。

    ブ-ッ ブ-ッ

    着信を知らせるバイブ音が鳴った。
    「風見!行くぞ!」
    「はい!!」
    新年早々事件は起こり、2人は呼び出しを受けた。
    やはり犯罪者は待ってくれない。

    2人の忙しい一年が始まる。
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