指輪を失くして焦るロナくんの30年後ロド「―――!――――」
「――――?」
ある夜の事。
防音だというのにリビングから聞こえる騒がしい音でドラルクは目を覚ました。
「ふぁ……」
あくびをしながら体を起こし手探りでスマホを探して時間を見ると、ドラルクは画面の眩しさに一度死んだ。
すぐに再生して画面を暗くし今度こそ時間を確認すると、いつも起きる時間より少し早かった。
「全く。騒々しいったらないな……何をしてるんだあのゴリラは」
ドラルクは近くに置いてあったカーディガンを羽織り自分を起こした元凶の元に向かう。
「おいこらうるさいぞ50歳児今何時だと思ってるんだ君のせいでいつもより早く起きて「ドラルク!!!」うるっさ」
寝起き1発目にロナルドの大声を浴び、あまりの大きさにドラルク砂になる。
「ヌーー!!」
するとすぐさまジョンが駆け寄り涙を流しながら砂山に寄り添う。
「おはようジョン」
ドラルクはすぐに再生するとジョンを抱き上げその小さな額にそっと口付ける。
「ヌヌヌヌヌヌ、オヌヌーヌヌイヌヌ!」
ジョンはすぐに泣き止み嬉しそうにヌヒッと笑う。
「それで、君はどうしたんだいロナルドくん」
ドラルクの名を呼んでから一言も発していないロナルドを見ると、その顔は真っ青になっていた。
「全くなんて顔してるんだ……おいで、一度座ろう」
ロナルドは言われるがままにソファに腰掛けたドラルクの隣に座る。
ドラルクは少し空いている距離を詰めてピッタリとくっつくと、泣きそうになっているロナルドの頬を両手で包み込み額を合わせる。
「何があったか、教えてくれるかい?」
急かすような言い方はせず、ゆっくり、ロナルドが安心できるような、優しい話し方だった。
初めは躊躇っていたロナルドだったが、やがてゆっくりと口を開く。
「……お、俺、ゆ、指輪、失くしちまったみたいで、」
「指輪?」
「ああ、お前とお揃いの結婚指輪……」
「……」
「その、昨日の昼間はあったんだ、それはちゃんと覚えてる、でも、今朝起きたら指になくて、退治人服の中も風呂場もキッチンも事務所もどこ探してもなくて、」
「指輪がなくて、それでジョンと騒いでたの?」
「うっ、そ、そうだ……まだ早い時間なのに起こして悪い……ゆ、指輪も、な、なく、失くし、っぅ、」
ついに泣き出してしまったロナルドを見て、ドラルクはくすりと笑みを溢す。
「ちょっと待ってて」
「……?」
ドラルクは立ち上がるとクローゼットに向かい、昨日着ていた自分のジャケットのポケットに手を入れる。
何かを取り出し、そのままロナルドの元に戻ってくる。
「ロナルドくん、手出して」
「おう……?」
言われた通りにロナルドがドラルクに向かって手を出すと、ドラルクがその掌に何か置いた。
「!?おま、これ……!?」
ドラルクがジャケットから取り出したのは、今まさにロナルドが失くしたと思っていた結婚指輪だった。
「昨日預かってたの、私も忘れてた」
「えっ俺預けたっけ……!?」
「預けただろう、ほら、あの時」
「あの時……?」
ロナルドの声を合図に、2人は昨日の出来事を遡る。
「昨日は確か吸血鬼タイマンステゴロ大好きとかいくめちゃくちゃマッチョな吸血鬼が出て、最初は若い奴らが頑張ってたけど次々伸されていって、」
「そう、それで向こうがせっかくロナ戦を書いてる本人がいるならって君を指名してきただろう?武器を使うならまだしも肉弾戦なら指輪が歪んでしまったり怪我をするかもしれないからって私に預けたじゃないか」
「!!!そうだ預けた……!!思い出した……!!!」
「全く……ボケるには早すぎるぞ」
「う、悪い、朝起きて指輪がなかったから俺もテンパっちまって……」
「ふふ、君もまだまだ若いな……今更指輪ひとつくらいで私達の仲がどうにかなったりするわけないだろう」
「それはわかってるけどよ……2人で一緒に選んだ大事な指輪だろ?」
「ん、そうだね」
ドラルクはそう言いながらロナルドの手に乗っている指輪を掴む。
「ほら、ロナルドくん左手出して」
「お、おう」
スッと薬指に嵌めると、恭しい仕草で指輪に口付ける。
「愛してるよロナルドくん、今も、これからも、ずっとずーっとね」
「ん、俺も愛してるぜ、ドラルク、今も、これからも、ずっとずーっと、絶対に離してやらねえからな」
そう言ってどちらともなく口付ける2人の指には、今日もお揃いの指輪が輝いていた。
ハッピーエンヌ♡