サイマヴェ未満/お題:お酒「マーヴェリック、この後時間はあるか?」
そう声をかけたのが就業時間をとうに過ぎたタイミングだったので、年上の部下は心なしか背筋を伸ばした。今しがた提出したばかりの書類のことについて残業を命じられると思ったのだろう。
サイクロンは苦笑し、中身を確認したファイルを机の上に置いた。
「いや、仕事じゃない。これの内容は問題なかった。良ければ飲みに行かないか」
「中将と、ですか?」
「駄目か? あれからバタバタしていてゆっくり話す機会もなかったからな。それに、アイスマンの話もしたい」
マーヴェリックの僚機の名前を口にする瞬間、あふれるような思慕の気配がサイクロンの口元に浮かんだほのかな笑みを彩った。仕事を離れると彼はこんなにも雰囲気が柔らかくなるのだと、初めて知る。必要以上に怒らせているのはマーヴェリックにほかならないわけだが。
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