Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    nonoji_2ji

    @nonoji_2ji

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 15

    nonoji_2ji

    ☆quiet follow

    ルスハンマヴェのスリーサム🐓🥴🐺
    すぐ出て行こうとする🐺と🥴に怒る🐓
    ルスマヴェ、ルスハン、ハンマヴェハンの順に色が強いと思います

    #ルスハンマヴェ
    ruthHammamwe.
    #ルスマヴェ
    rousmavet
    #ルスハン
    #ハンマヴェ
    hammavé
    #TGM

    幸せを願う話 今、俺は気が立っている。ついさっき、任務のために発つマーヴと少し揉めたからだ。マーヴは仕事の前には決まって、自分に何かあっても俺とジェイクが困らないように色々準備してあるという旨の説明をする。金や土地のこと、マスタングやバイク等の持ち物について、自分のいない世界のことをあれこれ指図してくるのだ。三人で暮らし始めた頃は「そんなこと言うなよ」とか「心配しなくても俺達は大丈夫だよ」と答えていたが、二ヶ月前にも聞いたことをそっくり繰り返すものだから、苛ついた俺はつい口を挟んでしまった。

    「あんた、何度も同じことを言ってるけど老化か?」

     大変に失礼な発言だった。当然これにマーヴが怒り、「僕は君達の未来を思って言ってるんだ」とがなるから、俺はまたもやつい「勝手に思うな」と言い返してしまった。

    「お二方、ここらで止めるのが賢明ですよ」

     そこでジェイクが割って入って来なければ口論になっていたところだ。むっとして眉間に皺を寄せて黙るマーヴと俺の間に立ったジェイクは「やれやれ」と妙に演技がかった大袈裟な仕草で首を振る。

    「二人共、アヴィエイターとしての自覚が足りないんじゃないですか? 本当にこんな喧嘩が任務前に相応しいとでも?」

     ジェイクのあまりに正しい指摘に俺もマーヴも言葉に詰まった。俺達は愚かにも忘れがちだが、「いってきます」と「ただいま」はセットとは限らない。そもそもマーヴもそういう話をしていたのに、揃って本質を忘れて下らない言い合いをしてしまった。……いや、悪いのは最初にひどいことを言った俺の方だな。いくらか落ち着いた俺はマーヴに謝ろうと彼を見た。しかし、マーヴの方が早かった。

    「……ブラッドリー、ジェイク、君達を心から愛してる。でも僕は謝らないし、さっき言ったことは撤回しない!」

     マーヴは犬が吠えるみたいに捲し立てると、ボードにかけてあるバイクの鍵を素早く掴むとリビングから走って出ていった。

    「は!? あんた、ホント……!! 俺も愛してるよ、バカ!!」

     玄関のドアが閉まる前にジェイクも「俺も愛してますよ」と笑いながら大きな声で呼び掛けた。間もなく表でエンジンを吹かす音がしたかと思うとすぐに遠ざかっていった。

     ……そういうわけで、俺は怒っている。

    「何だよ、アレ。マジでありえない」

     マーヴの外見は実年齢に見合わない若さだが、精神もそれと同様だと感じることがある。若いというより幼いと言ってもいいくらいだ。任務前だとジェイクが教えてくれたばかりなのに、それでも腹が立つ。本当にあれが最後の会話になったりしたらと思うと、下らなさすぎてよりムカつく。

    「カッカすんなよ、雄鶏君」

     部屋の中央でドアを睨んでいたが、ジェイクの声で我に返った。気づくとコーヒーの香りがする。両手に一つずつ湯気の立つカップを持ったジェイクがいつもの軽い笑みを向けてきた。俺の横を通りすぎ、カウチに腰を下ろすとカップの片方を自分の口へ、もう片方 をカウチ前のローテーブルに置いた。「座れ」ということらしい。口調はともかく、彼の言うことは大体正しいと経験から知っている。俺は大人しくジェイクの左隣に座ってコーヒーを一口啜ると、程よい温もりとほろ苦さが気分を落ち着かせてくれた。ちなみに、ジェイクの淹れるコーヒーが三人の中で一番美味い。

    「見たか、あの態度……。マーヴのヤツ、マジで大人げない」

    「どっちもどっちだろ。たしかに彼の方が年上だけど、お前だってそこそこオッサンのくせに」

    「……………………」

    「ま、そこも魅力的だが」

    「……どっちのこと? マーヴ? それとも俺?」

     俺の質問にジェイクは「さあね」ととぼけた顔をする。尋ねはしたが、はぐらかすだろうと予想していたし、実は答えを知っている。ジェイクはふざけた言動が多いが、マーヴのことも俺のことも好きだという本心はいつだって隠しきれていない。

    「俺が余計なこと言ったってわかってるよ。でも、マーヴ相手だとどうにも自制が効かないんだ」

    「ベッドでもな」

    「バーカ。マーヴはさ……他の人が躊躇うようなことをマジで実行するって知ってるだろ。だから、いつまでも予防線貼るような言動されるとこっちも不安になる」

     彼は頑固だし、一人で突っ走る傾向がある。「自分がいなくなったら」という設問を曲げに曲げて「自分がいなくなった方がいい」と結論づけないとも限らない。「時間が解決してくれる」と十年以上問題を放置するような男だ。滞空時間が長すぎて、マーヴにだけ時差が生じているのかもしれない。万が一逃げられたら、捕まえるのに次はどれ程の時間がかかるのか……。

    「俺にはあの人の気持ちもわかるがな。図体ばかり立派に育ったビビりの坊やを抱えてたら心配にもなるさ」

    「たぶんマーヴは、そういうお前のこともガキ扱いしてるぞ」

    「別に俺はそれでもいい。可愛がられるのも悪くない」

     軽口ばかりだが、こいつは何でも人より器用にこなす。彼の振る舞いを真似られるものならそうした方がいいのかもしれないが、俺には難しい。俺は一度気になってしまったら、何もいなせないし、何にも目を瞑れない。手に収まるカップの縁を指でなぞりながら俺はため息を吐いた。

    「離れてた時間が長かったからかな。上手くやりたいのに、なかなかしっくり来ない」

     長年のわだかまりが解消されて、その上恋人になった今でも小さな衝突は何度も起こっている。一緒にいるのが嫌になるような大事ではないが、上手く落としどころをつけてくれるジェイクがいなければ拗れてしまったかもしれないと思う場面もあった。それでも俺は三人でいられて幸せだし、マーヴとジェイクも幸せでいられるよう努力を惜しみたくない。不器用なりの方法を俺は探さなければならないのだろう。

    「二人になりたかったら早く言えよ」

     考え込む俺の横顔を見ていたジェイクが、ふと思い付いたような口振りで言った。何を言われたのかよくわからず、俺はとりあえずジェイクの方に顔を向けた。俺の視線が自身に注がれるのを確認したジェイクはごく自然な動作でカップを机に置き、いつものように口角を上げてニッと笑う。

    「俺の荷物は少ないが、さすがに急だと困るからな」

     ジェイクの荷物の話が何故ここで出てくるのか、全く思い当たる理由がなく、俺はたっぷり十秒は悩んだ。しばらく考えてようやく謎が解けた瞬間、俺の目も口もひとりでに大きく開いていた。"それ"は、俺の頭で自発的に生じる可能性がないアイデアで、俺にとってはあまりに今更で、非現実的で、馬鹿げていた。

    「……はあ!? はあああああああ!??! おまッ……お前もかよ!!」

     俺が叫ぶとジェイクはしかめっ面で左耳を抑えた。俺が驚くことに驚くのも意味がわからない。

    「ふざけんな、耳がイカれるところだったぞ! この寝ぼけ一番鶏!」

    「ふざけてんのはそっちだろ! なんで揃いも揃ってすぐ出ていこうとするんだ!?」

     ジェイクは俺が理解するまであの人を小馬鹿にした笑みを張り付けていたが、冗談で言ったのではないとわかる。そして、今日降って湧いた考えでもないことも。
     俺が見るからに激怒したからか、自身の下策を悔いたのか、若干気まずそうに視線を下方にさ迷わせたが、すぐに顎を突き出して歯を見せて笑った。

    「お前らの準備が足りてないのかと気遣ってやってるんだよ、俺は」

    「準備ってなんの?」

    「二人が歩み寄るための」

    「俺達は三人だ!」

     どうして話がこうも食い違うのか。マーヴもジェイクも、当然のように自分自身を省いて物事を進めようとしているし、どちらも俺に了解を取っていない。頭が痛くなってきた。
     
    「……そうだ、思い出したぞ。この家に決めてそれぞれが越してきた時、お前はやけに荷物が少なかったよな。で、それを聞いたら、ヘラヘラしながらミニマリストだとかなんとか抜かしてたが、いつでも出ていけるように保険かけてただけかよ!」

    「だとしても、何か悪いか?」

    「悪いだろ! 逆に何で開き直れるんだ!?」

     俺がここまで怒鳴ってもジェイクは非を認めないし、謝りもしない。ついに不機嫌そうに俺と反対方向に顔を反らして黙ってしまった。
     目眩がするほど強烈な既視感。わずか十五分前の諍いの再演だ。

    「…………」

     俺はかえって冷静になり始めていた。頑なに俺に顔を見せないジェイクの首筋を眺めながら、温くなったコーヒーを口に含んで頭の中を整理する。
     マーヴとジェイクは三人で過ごすことに納得していないのか? 望んでいるのは俺だけ? ……それは違う。二人とも愛情深い人間だ。日々俺は二人から与えられる温もりを享受しているし、マーヴとジェイクの間も思い遣りで満たされているのを目の当たりにしている。それなのに、何故自ら離れようとするのか。

     積み重なった過去がなければ駄目なのか?
     年齢層が同じでなければ駄目なのか?

    「……なるほどな。考えても無駄だったんだ」

     深く吐いた息と共に俺が呟くと、ジェイクの肩が微かに揺れた。俺が出した結論が気になるのだろう、背中を向けたまま神経を尖らせてこちらの動向に集中しているようだ。俺は肩を掴むと思い切り引き寄せた。バランスを崩して俺の腕の中に落ちるように倒れたジェイクを抱き締めると、「ふぎゃあ」と野良猫みたいな叫び声を上げた。逃れようともがくが、体勢も悪いし、背中から抱きすくめられて動けないようだ。じたばたと暴れるジェイクを押さえ込み、耳の後ろやつむじにキスの集中砲火を浴びせてやる。

    「離せ!!」

    「やだね。可愛がられるのが好きって言ってただろ」

    「お前からって意味じゃない! 見ろよ、この鳥肌!」

     ジェイクは海軍の名に恥じない逞しい体躯を持っているが、残念ながら俺の方がでかい。しばらくすると抜け出すことを諦めたらしく大人しくなったため、俺は満足いくまで重量たっぷりの体を撫でたり唇を寄せたりして遊んだ。

    「……怒ってたんじゃないのかよ」

    「めちゃくちゃ怒ってたさ。でも、いくら怒っても意味がないって気づいたんだ」

    「つまり?」

    「二人の変な気遣いも、俺がそれに怒るのも、お互いを思うが故なわけだ。まず、それを大事にしたい」

     俺の表現にジェイクは不満そうに鼻を鳴らす。

    「俺としてはその気遣いの方向性を変えたもらいたいんだけど……。すぐには無理だろうから、それは一旦置いておいて、俺の暴走にも二人に付き合ってもらおうと思う」

    「……暴走?」

     やっとジェイクが俺に顔を見せた。首をひねって俺を見上げる瞳は訝しさと不安でいっぱいだ。

    「暴走って言ったか? やる前から自分で暴走だとわかってることをやるのか?」

     その問いかけにはもう言葉では答えない。俺はどうせ上手く伝えられないし、お前もマーヴも上手く受け取れないだろうから。俺は返事の代わりにきれいなカーブを描く額にキスを落とした。

    「早速一緒にショッピングに出かけよう」




    ________✈





    「…………帰ったよ」

     玄関のドアが開き、二週間ぶりに聞く小さな声が帰宅を告げる。俺はバイクのエンジン音を聞いて出迎えようとしていた。しかし、俺より先にジェイクがバタバタと走り寄って彼に抱きついた。

    「ジェイク!?」

    「待ちくたびれましたよ! ルースターの野郎が酷いんです! 見てくださいよ、これ!」

     これ! とジェイクがマーヴェリックから離れて自分を指した。白地に真っ赤なでかいハートマークと"H"のロゴの刺繍が施されたスウェットだ。

    「お帰り、マーヴ」

    騒ぐジェイクの後ろから俺も顔を出して、ついでに俺が着ているスウェットも見せてあげた。ジェイクのものと同じハートマークに"R"の刺繍が入っている。

    「もちろんマーヴの分もあるからね」

    「更に三人お揃いのくそダセェカップに下着まであるんです。こいつ、使えって強要してきて……」

    「まあまあ、二人ともとりあえず部屋に入って。いい時間だし、食事にしよう」

     帰ってきて早々の騒動に目を白黒させているマーヴと喚くジェイクを俺は部屋に押し込む。マーヴのジャケットを剥ぎ取り、着替えてくるように促した。

    「……それに?」

    「うん、そう。"M"のやつがマーヴの部屋に置いてあるから」

    「…………着なきゃ駄目なやつ?」

    「駄目なやつだよ」

     ジェイクが後ろでまだ何か騒いでいるし、マーヴは物言いたげな目で俺を見上げてくるが、俺はもう考えないことにしたのだ。

    「俺も俺の我が儘を二人に押し付けてみることにしたんだ。手始めに恋人らしくお揃いのアイテムを身につけてくれ」

    「……その、なんていうか、馬鹿みたいなやつ?」

    「そう、この馬鹿みたいなやつ」

     マーヴは衣服に頓着なさそうに見えてこだわりがあるのか、単純にこのスウェットがお気に召さないのか黙りこくっている。往生際が悪い。

    「マーヴにもジェイクにも思うところがあるだろうけど、それはおいおい擦り合わせていこう。あんた達はいい加減観念すべきなんだよ」

    「……何に?」

    「俺達はもうこの先ずっと三人一緒なんだってことに」

     俺はマーヴにキスをしてから容赦なくリビングから叩き出し、文句ばかりのジェイクをキッチンに引きずって料理の準備を手伝わせる。じきにマーヴが"馬鹿みたい"と称したスウェットを着て現れる。食事が済んだらその格好のまま三人で映画でも観て、ジェイクが"くそダセェ"と罵ったお揃いのマグカップに俺があまり美味くないコーヒーを淹れてやろう。想像したらそれはどうしようもなく間抜けで、あまりに俺の理想通りの俺達だった。


    Tap to full screen .Repost is prohibited

    related works