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    艾(もぐさ)

    雑多。落書きと作業進捗。

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    艾(もぐさ)

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    2019.11.4発行。
    準々決勝後の月島と山口。トスと影山と春についての話。
    カプ要素ないですが、書いてる人間が月影の民なのでアレルギー持ちの方は気を付けてください。

    FINAL1作目公開記念再録。
    と言っても話的には2作目後なのでアニメ派の人にはネタバレです。閲覧は自己責任でどうぞ。

    完売して再版予定もありません。当時手に取ってくださった方ありがとうございました!

    #月島蛍
    hotaruTsukishima
    #山口忠
    tadashiYamaguchi
    #影山飛雄
    hideoKageyama
    #HQ二次腐
    hqSecondaryRot

    【web再録】春/境「春が終わったら、何になると思う?」



    *  *  *



    春高、準々決勝後。
    鴎台に敗北を喫したその日、民宿に戻ってから夕飯まで自由時間を言い渡されたものの満身創痍の身体に出歩く気力はなく、結局部屋に残ることにした。
    そもそも、まだ高校生の自分には滅多に来れない地だというのに観光なんて浮かれた気持ちは全く起こらず、画面越しに見たことのあるようなする街並みに、ああ実在するんだな、なんて呑気な感想を抱いただけだったのだ。
    それよりも。あの雑踏の中に紛れ込むよりも、早くコートに立ってみたい、だなんて。
    どこかのバレー馬鹿達が乗り移ったような思考に、うげえ、と思わず顔を顰めたのはほんの数日前の事だというのに、何だかもう何週間も経ったような気がしている。それだけ怒涛で、詰まりに詰まった三日間だった。
    「(それももう、終わった。)」
    だけどこれは、自分自身の終わりじゃない。そのことをもう知っているから、少しでも身体をほぐそうと、くたり、力を抜く。今は少しでも体を回復して、次に繋がる力をつけたい。今のうちに休んでおけば、寝る前に鴎台の動画を確認するくらいの体力は戻るだろう。
    壁によりかかったまま弛緩した体は、そのままズズ、と壁伝いにずり下がる。だらしないと分かってはいるが、今この部屋には山口と影山しかいない。しかも影山は、部屋に着くなり隅に寝転がるとあっさり寝入ってしまった。恐るべしオヤスミ三秒。日向への差し入れを買って来る、と言って出て行った二年生の面々がいつ頃戻るかは分からないが、暫くはそこまで人の目を気にしなくても構わないのは確かだ。
    そんな取り留めのない思考にぼんやりしていると、「ボール来た」と小さな声が聞こえた。何の前置きも無い唐突なそれに、独り言だと分かりつつも声の主─自身の足先より少し向こう、ジャージから着替えもせず仰向けで寝転んでいる山口を見遣る。
    「何が?」
    「え?あ、俺、声に出てた?ごめんツッキー。起こしたかな。」
    「いや、起きてた。っていうか、山口こそ起きてたの。」
    言えば、うん、とどこか困ったように笑う。
    仰向けになったまま顔だけを仰け反らせるようにしてこちらに向けた山口は、部屋に荷物を置くなり寝の体勢に入った影山を見て、俺も疲れた、と言って寝転がったきりだった。だからてっきり、寝るつもりなのだと思っていたのに。
    「何かちょっと、考えちゃって。」
    「…そう。」
    その感覚は分からないでもない。疲れている筈なのに一向に訪れない睡魔は、試合後特有の興奮のせいだけじゃない。
    目を閉じると鮮やかに蘇る、自分たちがつい一時間前まで立っていたオレンジコート。瞼の裏に焼き付いたその一瞬一秒を、気付けば無意識に辿っている。例えばそう、今この時も。
    敗北が受け止められないのでも、哀愁に浸っているのでもない。熟考の間もなく過ぎ去って行った一コマ一コマを、改めて記憶に刻みこむように。
    「ボール、来たなぁ、って。」
    もう一度ぽつり、山口が呟く。先程よりはっきりしているその声は、今度は自分に投げかけられたものだと分かった。
    「今までも影山のトス打ったことあったけど、公式戦のは初めてでさ。これまで出たのも、ピンサーだから後衛だったし。」
    レシーブの方が多かったしね。言いながら顔をまた天井に向けた山口の声音が、いつも通りの明るさの中にどこかからからとした苦笑を纏っているような気がするのは思い違いではないだろう。
    どこか他に穴がない限り、ピンチサーバーは返しのスパイクで狙われやすい。そういう欠点となる部分は、本人のレシーブ力強化や周囲のカバーで補ってきたけれど、サービスエースが取れなければ自身が穴として狙われるというプレッシャーと屈辱は、スタメンの比ではないだろう。サーブを持ち味として起用されるのなら、尚のこと。だからこそこれまで山口は、スパイクよりもレシーブを重点的に練習を重ねてきた。
    なんとなく、唯の相槌であっても自分がここで何かを返すのは違う気がして黙って言葉の続きを待つ。
    山口が静かに、投げ出していた右腕を持ち上げ掌を目前に翳した。しげしげと平を見詰めるその眼には、きっと違う物が映ってる。
    「ツッキー達が言ってた、ボールが来る!って感じ、すごく分かった。あれっ欲しい所に本当にある、って。」
    そうしてぐ、ぱ、と何かを確かめるように握ったり開いたりを繰り返す。それが何か、なんて聞かなくても分かる。
    ボールだ。ボールをスパイクするあの感触。自分が決めたという高揚。もう感覚なんて残っていない、けれど自分の中に確かに刻まれたもの。
    でもさ。山口が続ける。
    「でも、それもなんだけど…ボールが、違ってて。」
    見てたから分かるんだ、ずっと近くの、外で見てたから。その言葉に改めて山口に、今度は視線だけでなく顔ごと向けた。寝ころんだまま掲げた手を見詰めるその顔はこちらからでは全く伺えず、どんな原理か出会った頃から変わらず跳ねてる旋毛近くの癖っ毛が一房、重力に逆らわずぺたりと畳に流れてるのが見えるだけだ。それでも、その瞳がどんな色をしているかなんて見なくても分かった。
    ぐ、っと。やわらかく、けれど固くその拳が握られる。
    俺の位置、俺の打点。─俺に向けての、トス。確かめるように、山口はゆっくり、はっきりと口にする。
    「俺の為の、ボールだった。」
    その瞳はきっと、諦めを知らない、挑み続ける強い色だ。逃げていた自分を叱責したあの日のような。
    同時に、ああ凄く分かるな、と思った。
    自分の為のボール。影山のトスは、いつだって丁寧で精密で繊細で、そして何より真摯だ。スパイカーには、ああこれは自分に向けてのものだ、ってすぐに分かる。そんなセットアップ。それは春高前の伊達工との練習試合で吹っ切れてからはより磨きが増して、自分に託されたそれを打ち逃すことは、託されていることが分かるからこそただの空振りよりも悔しく腹立たしい。
    ─けれどその成長過程では散々振り回されもしたし、何より癪だから本人には絶対言ってやらないのだけれど。
    「俺さ、あの時影山に背中押された気がしたんだ。影山がボールを託してくれた時。」
    でも多分、山口が言いたいのはそれだけじゃない。そんな、僕が知っている感覚だけの話じゃなくて。
    「お前も烏野のミドルブロッカーなんだぞ、って、言われた気がした。」
    山口は、鍛え上げているジャンフロの腕を買われてピンチサーバーとして起用されることがこれまでの常で定石だ。だからこそ、自身が狙われることを見越してレシーブ練を、スパイク練より比重を高めにして行っている。
    だけど、山口は元々ミドルブロッカーだ。そもそも、ピンチサーバーとしての役割だけを希望してバレーをやる奴なんて居ない。
    「うちのスパイカーは皆強い」。日向が抜けたタイムアウトで影山がなぞった、いつかの先輩の言葉。元は彼に対して言い聞かせる意味合いで掛けられていたそれは、今日は確かめるような響きで僕らを奮い立たせた。「ですよね?」。投げかけながら、否定は許されない─否、してたまるか。こいつがこう言っているのだから、とふつふつ湧き上がらせたそれは、けれどあの時コートに立つことになっていた僕たちだけではない。控えに居た全員、正しく『皆』を指していたのだ。
    普段口にもしないし認めていない体を装ってはいるが、影山のゲームメイク技術と状況判断、そして場を見る目は確かなものだ。及川も卒業した今、宮城の高校セッターの中では他の追随を許さない。
    その影山があのセット、山口に託したのは単純に相手チームの意表を突いたわけではない。確かにあそこで一番警戒が薄かったというのはあるかもしれないが、それ以上に、影山が『山口は決められる』と読んだからだ。交代してろくに合わせてもいない一発目、それでも『コイツならやれる』と。
    そして、その事が分からない僕ではないし、それは山口にしたってそうだ。いや、そういう意味では山口の方が分かっているのかもしれない。なにしろ、山口はずっと〝見ていた〟のだから。
    「嬉しかったんだ。」
    噛み締めるその言葉に浮かぶ喜色に、今度こそ「そう」と返事を返す。
    うん。そう言って、へへへと気の抜けた笑いを零す幼馴染に、何故だか終わりというものの実感が唐突に湧き上がる。ああ、終わったなぁ。
    この長く短かった春への区切りが、明確に心にすとんと落ちる。それと同時、ふと思い出した。
    ─春が終わったら。思い出す、あの日のこと。なんてことない日常の会話。
    「『春が終わったら、何になると思う?』」
    「へ?」
    思い出して口にする、あの日の言葉。
    聞いた山口は、掲げていた手を下ろすとそのまま仰け反って顔をこちらに向かせた。そのぽかんとした間抜け面に、まぁこんな反応になるよね、なんて却って納得した。あまりに脈絡がない自覚はある。ところで山口、お前その姿勢で背中キツくないの。
    「って、王様に訊いたことがあるんだ。」
    「そうなんだ。心理テスト?」
    こんな唐突な話題でも、本題は別にあるということを十二分に理解してる山口は大体スルーしてくれるから楽だ。
    「心理テスト…っていうのとは違うんだけど。まぁ似てるかな。どう答えるかで、その人となりが見えるっていう遊び。」
    それを心理テストって言うんじゃないかな。うるさい山口。ごめんツッキー。
    力のいらないお決まりの応酬をしながら、脳裏に浮かぶのは春高前の部室。

    冬休みとはいえ学生である以上課題というものはあって、それが補修常連組の日向と影山となれば他より少し多めに出された。それも冬休み明けに待ち構えている期末テストの為だと言われたらしいが、通常の課題で手一杯な馬鹿二人はそれはもうものの見事に詰んだ。というか、物理的に積んだ。何をって課題を。
    二人のフィジカル面も考慮し、今回だけは春高後に急ピッチで、ということでまとまったもののその量を捌かされるのは最終的に僕と山口と谷地さんだ。たまったもんじゃない。ということで、僕は二人に春高前の練習中、部活後三十分の時間を作らせて一ページずつとは言わなくても、一問だけでも終わらせていくよう指示した。
    そんな中で一度、僕と影山だけ部室に残る日があった。普段は山口と日向も残るが、用事で帰ってしまったのだったか。正直その辺りはよく覚えていない。
    その時の僕は、部活後の三十分勉強について、一番口やかましいだろうと思っていた影山が思いのほか大人しくて無駄口を叩かないことに拍子抜けしていた。その上僕と二人だけで残ることにも異論を唱えず、「分かった、頼む」と言ったきり真面目に課題と向き合っている。…成果が結びついていないことについては、この際ツッコまないでおいておく。
    思えば伊達工との練習試合の最中、一悶着あった後から影山はどこか憑き物が落ちたようにすっきりしていて無駄に騒ぐことがぐんと減った。それでも、ボゲェだのバカだの、五月蠅い時は五月蠅いし暴言のボキャブラリーは相変わらずのものだったけれど。
    だからかもしれない。そんな、これまでならしないような雑談を彼とする気になったのは。
    ねえ。文章題を追ってうんうん唸る旋毛に投げかける。相変わらず、嫌味な程に癖の無いストレートな黒髪だ。
    「王様はさ、春が終わったら何になると思う?」
    「…は?」
    きょとん、というオノマトペがここまで合う顔はそうそうないだろう。そんな呆け顔で、俯かせていた顔を持ち上げた影山に「うわあ間抜け面」と思わず吹きだした。
    「うっせぇ、お前が変なこと言うからだろ!春が終わったらって何だよ。」
    「五月蠅いのは王様の方だし、聞いてるのこっちなんだけど。ただの質問だよ。春が終わったら何になると思う?って。」
    どう思う?もう一度、後押しのように尋ねる。僕が本当に質問しているだけなんだと分かったらしい王様は、どこか釈然としないまま口を開いた。
    「な」
    「夏、とかいう答えじゃなくて。君がどう思うか、考えるかってこと。」
    「はあ?」
    なんだそれ、と言われると思った。ワケわかんねーこと言ってんじゃねぇ、と突っぱねられるだろうと。少なくとも、一所懸命に課題と向き合ってるのを邪魔して課題の足しにもならない質問をしたのは自分の方だと分かっているから、答えがなくともまぁいいか、と思っていたのだ。
    けれどあいつは迷いもせず、「そういうやつかよ」とあっさり口を開いた。そして──、

    ─そこまで話したところで口を閉ざす。くん、と意識が都会の古びた民宿に引き戻された。
    「それで影山、なんて答えたの?」
    「なんて答えたと思う?」
    にや、と少し意地悪く返すのは勿論わざとだ。
    「えー…夏だろボゲ!って押し切った、とかだったらツッキーこんな風に話題に出さないと思うしなぁ…」
    流石、幼馴染は伊達じゃない。「ご明察」と言ってやれば、山口は「ええ」と力なく、けれどとても楽しそうに笑った。
    「分かんない、影山なんて言ったの?」
    自分では到底答えに辿り着けない。少なくとも今の僕らには、影山の言動は推測不能だ。そういう意味ではまだ日向の方が分かりやすい。それが多分わかってるんだろう、山口は早々に白旗を上げた。
    自身がどう思うか。そう訊いたらあっさりと返したあの声を思い出す。
    それなら簡単だ、と。さも当然のことと言わんばかりの静かな声音。
    「春。」
    ぽかん、と山口が本日二度目の間抜け面を晒す。影山の答えを聞いた時の自分もこんな顔をしてたのかな、なんて他人事のように思う。少なくとも、自分は呆気にとられ過ぎて顰めるだけの表情筋が動かなかったことだけは確かだ。
    「春が終わったら春が来るだろ、って。」
    あの時彼が返した通りに言葉をなぞれば、くつくつと笑いが込み上げた。逆らう気も起らず肩を揺らせば、そんな僕の様子を見て益々困惑してますと言わんばかりの山口が居る。
    「それどういう…?」
    「分かんないよね。僕も分かんなかったし、分からなすぎて弄るのも諦めたよ。」
    そうだ、あの時僕は確かに突拍子も無く思ったそれに、ただ一言「そう」とだけ返して流した筈なのに。
    「でも、今なら分かる。」
    この言葉を聞いたあの日は、確かに今の山口と同じ心持だった筈なんだけれど。いつの間にこんなにバレー馬鹿に感化されてしまったのだろう。
    今?山口が、何かを探るように繰り返す。そう、今。最大のヒントで、答えとも呼べるそれを僕も繰り返した。
    「今…今、って…、あ。」
    眉根を寄せてああでもないこうでもない、と唸っていた幼馴染が、はっと目を見開く。
    ああ、分かったか。自分よりも断然早いその到達に、けれどそうだろうなと納得する。何せ今日は、今日こそが彼の言った春の終わりで、春が来る前の日々の一歩目だからだ。
    ─春が終わったら、春が来る。つまりはそういう事だ。
    「成程、そういう事か。影山らしいね。」
    「ね?ホント、バレー馬鹿。」
    こちらを見遣るために仰け反らせていた体の力を抜いて、今度は天井を見上げたままからから笑う山口に同意しながら、そんなこちらなどお構いなしに夢の世界に旅立ったままの渦中のセッターを見遣る。
    春高が終わった。そうして季節は、春を迎える。きっと彼は、あの時既に心得ていた。これが一つの区切りであっても、決して終わりではないことを。
    「な、山口。」
    だからここで感極まったとしても。だから、って、そればかりをただ眺めるなんて。
    「部活に戻ったら、新体制の調整が始まる。新しいチームで、次の大会に向けて。」
    春が来たら、新しくまた動き出す。ここが終わりじゃあないのだから。
    「その中で僕らは少なくともあと二年、あいつのトスを打てるんだ。…打つことが出来るんだ。」
    諦めなければ、その限りに。嬉しかったなんて言葉で完結させず、その先を望み続ければ。
    限られた枠に入り続ける難しさは山口だけじゃない、自分もよく分かっている。何の感慨も無く、先輩を差し置いてレギュラーの座についている訳じゃない。分かっているけれど、だからこそ諦めの悪さが肝心なんだと今の僕はもう知っている。
    僕が言いたいことは、全部口にしなくても山口には伝わったのだろう。「うん」、返る声が震えている。
    「そうだねツッキー。俺、…俺も、まだ、これから沢山、コートに立ちたい…っ!」
    ぐず、と啜る中にも宿る、静かな闘志を感じ取る。挑み続けることへの強さは、悔しいけれど山口の方が一歩上手だ。だけどまずいことをした、なんて全く思わなかった。それは彼を舐めているからではない。こうでないと面白くないという、切磋琢磨する相手が増えたことに対する純粋な楽しみだ。
    どこかのチビと思考がダブったような気がして一瞬嫌になったけど、結局のところは自分もバレー馬鹿なのだろうと思う。容易に認めたくはないけれど。
    けれどレギュラーの座は渡さないという気概は、既に心に宿っていた。
    「帰ったら、影山とも改めて合わせたいなぁ。」
    「それ、日向の奴が食いついて五月蠅そう。」
    「確かに。でも、」
    山口が、今度は天井に向かって右手を伸ばす。そうしてぐ、っと、何かを掴むように拳を握りしめた。
    「諦めないよ。」
    ツッキーにも負けないからね!なんて堂々と宣言する声に、上等、とばかりに返す。
    「僕も負けないし。」
    見返した幼馴染の眼は、もうあのスパイクを追うばかりではない。
    この先に待っている新しい季節を見据え、挑み続けることを厭わない不屈の色を宿していた。

    ─もうすぐ、春が来る。



    == 以下当時後書き ↓ ==============

    本誌の展開が楽しすぎてやった。後悔はしてない。
    …のですが、予定してた新刊の原稿を途中で放り投げて書き出すのはやりすぎたかなと少し反省してます。でも満足。
    怒涛の終章突入ですが、その中で個人的には、MBとしてコートに立った山口と、三年時の春高にさらっと出てる月島に最高に滾りました。
    因みに、この話の中で寝てる影山は狸寝入りでなくガチ寝。
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    艾(もぐさ)

    PAST2019.11.4発行。
    準々決勝後の月島と山口。トスと影山と春についての話。
    カプ要素ないですが、書いてる人間が月影の民なのでアレルギー持ちの方は気を付けてください。

    FINAL1作目公開記念再録。
    と言っても話的には2作目後なのでアニメ派の人にはネタバレです。閲覧は自己責任でどうぞ。

    完売して再版予定もありません。当時手に取ってくださった方ありがとうございました!
    【web再録】春/境「春が終わったら、何になると思う?」



    *  *  *



    春高、準々決勝後。
    鴎台に敗北を喫したその日、民宿に戻ってから夕飯まで自由時間を言い渡されたものの満身創痍の身体に出歩く気力はなく、結局部屋に残ることにした。
    そもそも、まだ高校生の自分には滅多に来れない地だというのに観光なんて浮かれた気持ちは全く起こらず、画面越しに見たことのあるようなする街並みに、ああ実在するんだな、なんて呑気な感想を抱いただけだったのだ。
    それよりも。あの雑踏の中に紛れ込むよりも、早くコートに立ってみたい、だなんて。
    どこかのバレー馬鹿達が乗り移ったような思考に、うげえ、と思わず顔を顰めたのはほんの数日前の事だというのに、何だかもう何週間も経ったような気がしている。それだけ怒涛で、詰まりに詰まった三日間だった。
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    艾(もぐさ)

    PAST第三者視点や写り込み・匂わせ自カプ好きが高じた結果。
    別キャラメインの話に写り込むタイプのくりつるです。
    村雲(&江)+鶴丸。村雲視点&一人称。
    別題:寒がり鶴と、腹痛犬の恩返し。

    この他、創作独自本丸・演練設定捏造など盛り込んでます。
    鶴丸が村雲推し。つまりは本当になんでも許せる人向け。

    ※作中に出てくるメンカラーは三ュのものをお借りしていますが、三ュ本丸の物語は全く関係ない別本丸です。
    【後夜祭/鍵開け】わんだふるアウトサイド ここの鶴丸国永は、寒がりだ。
     とは、俺がこの本丸にやってきて数日経った日、同じ馬当番に当たった日に彼から教えてもらったことだ。
    「鶴の名を冠しておきながらこれじゃあ、格好つかんだろう?」
     内緒だぜ、と少しばかり気恥しそうに言った彼に、じゃあ何で縁もゆかりも無い俺に、と表情─どころか声に─出してしまったところ、彼はさして気にした風もなく「気候から来る腹痛なら気軽に相談してくれよ」と笑った。心から来るものには力になれないかもしれないが、とも。
     それだけで、上手くやっていけそうかも、とお腹の奥底、捻れた痛みが和らいだのを覚えてる。
     実際、彼が寒がりだということを知っている仲間は少なかった。彼と同じ所に長く在ったという刀が幾振りか。察しがよく気付いている風な刀もいたけれど、そういった刀達はわざわざ口や手を出そうとしていないようだった。それは、彼が寒さを凌ぐことに関してとても上手だったからかもしれない。
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    艾(もぐさ)

    PAST第一回綴恋合せ展示用小説。突然ハムスター化した伽と、それについては心配するでもなく一緒にいる鶴の小噺。まだデキてない2人。創作動物審神者がいます&喋ります注意。捏造は言わずもがなです。
    22'3.27 ぷらいべったー初掲

    パスワードは綴恋内スペースに掲載しています。
    【後夜祭/鍵開け】君と食む星 伽羅坊がハムスターになった。
     何故なったのか、と聞かれても分からない。朝起きて、畑当番の用意をして、朝ご飯を食べ、冬でもたくましく芽吹こうとする名も無き雑草たちを間引き土を作り、さて春に向けての苗を──と立ち上がったところで、何やら足袋を引っ張られる感触があるなぁと思ったら足元にハムスターがいた。
     小さくふくよかで、野鼠とするには頼りない焦げ茶のそのかたまりを目にした瞬間、何でこんなところに、と考えるより早く思った。
     あ、伽羅坊だこれ。と。
    「伽羅坊?」
     悩むより聞くのが早い。呼びかければ、ハムスターもとい、伽羅坊は小さく「ぢっ」と鳴いた。ハムスターの基本的な鳴き方自体は鼠と変わらないからこれが普通なんだろうが、すこぶる不機嫌極まりなさそうなそれにくつくつ笑いが込み上げる。見れば、小さな耳の下は微かに赤毛が混じっていた。ああ、やっぱり伽羅坊だ。
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