キスの日果てなく続く荒野の世界。
ウルフウッドは砂塵舞う中、バイクを走らせていた。
サイドカーで呑気に鼻歌を口遊む男を一瞥し、その褐色肌の額に青筋を浮かべる。渇いた喉では声を出すことすら億劫だった。
「ねぇ、ウルフウッド。」
サイドカーから覗き込むペリドットの瞳。
ヴァッシュ・ザ・スタンピードは歌うように言葉を紡いだ。
「砂漠での1番の死因を知ってるかい?」
「…生憎、死因は選べんのや。おどれの死因はワイが決める。」
「え、僕殺されちゃうの?」
殺しちゃイヤン、なんて抜かすアホ面のなんと憎たらしいことか。ハンドルを握ってさえいなければ、間違いなくトリガーを引いていただろう。
首筋を流れる汗がシャツの中へと消える。肌に布地が張り付く感覚は、どうにも好きになれなかった。
1756