湿度露に濡れた下草を疲れた足で踏む。
視界を遮る枝葉を銃身で避けながら、湿度に満ちたジャングルを進む。
鳥の声、川の音、何か分からない生き物の金切り声、俺たちの足音。
木々の間をまばらに落ちる日光も、霧に拡散されてぼやけている。
背中に背負った腹いっぱいのキャンバス地のバッグは、一歩進むごと、疲労が溜まるほどその存在を主張して、布地が湿気を吸って更に重くなっている錯覚さえする。
蟻のように進む俺たちの縦隊は、軽口を叩くやつはいなくなってしまった。
口を湿気で塞がれたに違いない。
ピリピリとした緊張感だけが湿気の中を支配する。
鳥の声、川の音、生き物の声。
4人ほど前の縦列の先頭が枝を払い切り開く道のない道。
途端、ボン、と間抜けな音が爆ぜる。
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