AndL.(2) 二
僕の顔が以前のものに戻ってから数日が経った。
アンドロイドの顔で過ごしたのは僅か一日にも満たない時間だったし、その間に自分の姿を目にすることもなかった。けれど自覚しているよりも自分の肉体や見た目がアンドロイドになったことに僕は緊張していたようで、反射する滑らかな性質のものから目をそらす癖のようなものがいつの間にか染みついていた。
フィガロは僕の顔を手術した後、車いすに僕の体を乗せると、どこかずっと待ち望んでいたことかのように僕をあの室内から連れ出した。僕が眠っていた部屋の隣室は、暗めの茶色のフローリングに白の紙クロスの壁紙を貼ったシックな雰囲気の部屋だった。いわゆる事務デスクや壁掛けのホワイトボード、革張りのソファ、IHのコンロと電気ケトルがあり、会社の一角と言われればすんなりと受け入れられた。(僕はまだ就職活動を始める前だから、あくまでイメージの会社だが。)患者からの贈り物だろうか、手紙や折り紙、押し花の栞が飾ってあるのが愛らしい。
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