agape(師弟時代フィガファウ) 与えることには慣れていた。なにせ生まれた時から『神様』をしていたから。
幸いも、恐怖も、知識も、絶望も、助言も、予言も、実りも、安らぎも。それが例えどんなものであれ、相手が望むものを与えることには慣れていた。そうすることを望まれていたからそれに従い、それに疑問と飽きを覚えたから与える事を止めた。生きてきた千年以上。良い事も悪い事も、出来ることは何だってして来た。与えてきたから、奪う事もした。つくることも、壊すことも、出来ることなら、大概はなんだって。
乞われれば許し、貢がれれば対価に見あった事くらいはしてきたつもりだ。それくらいの優しさも情も持ち合わせている。けれど煩わしい事は嫌いだし、自分が組み上げた予定や計画を乱されるのは好きでは無かった。総てが思うままに動くのは一種の快感に似ていたから。
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