溶けたアイスを舐めとる舌の赤が鮮やかで目眩がした 僕はなんて愚かな人間なのか。これほどまでに自分の選択を後悔したことはない。それでも色彩豊かで魅力的な広告を目にしたら、華やかで濃厚な香りを嗅いでしまったら、僕はきっと同じ過ちを繰り返してしまうのだろう。詰まるところ甘い物の誘惑には逆らえないのだ。
「やっぱりミカグラ島のスイーツはどれも斬新で、まさに最先端って感じだよな。おまけに味だけじゃなくて見た目への拘りは芸術の域に達してると思うんだ」
傍らに立つ相棒からの突き刺すような視線に気付かない振りをしつつ、僕はやっとのことで手に入れたソフトクリームをまじまじと見つめた。
一片の歪みもない美しい螺旋を描いた練乳風味のソフトクリームには、ピンク色をしたハート型のマシュマロが散りばめられ、狐色にこんがり焼けたワッフルコーンの内側には、ミルクチョコレートが満遍なく塗られている。マシュマロやチョコレートの匂いに加えて、ワッフルコーンの香ばしさが鼻をくすぐれば、だらしないくらいに口元が緩んでしまう。店にできた長蛇の列に爆発寸前だった相棒を、大量の肉と引き換えに宥めた甲斐があったというものだ。
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