僕は――卑怯な男なんです。僕と出会った方はみな良い人で、金田一さんが卑怯ならみんなそうですよ、なんて言って下さるんです。でも、そう思えない自分もいます。なぜですかね、僕は――あなたと同じですよ。あなたも、卑怯だと、ご自身を卑怯だと思っているのでは、ないですか。この世で一番、卑怯で悪人だと、感じているのではないですか。僕にはそう見えるんです。あなたが言わなくても、僕は分かっているつもりです。だから、どうか、本当のことを話して下さい。今なら、誰も聞いていませんから。警察の方々が来るまで、あと一時間あります。その間に、ご自分のことを仰って下さい。何を仰られても、僕は全部胸に留めます。誰にも言いません。今なら何も、怖いことはありません。怖がらなくていいんです。だから、話して下さいませんか。僕はそのために、探偵をやっておるのです。きっと、この瞬間のために。