お医者さん「お、オイ風間…お前、ちゃんと飯食べてるのかい?」
「おう、食べてるさ。何だよ、急に」
「前会った時より、やつれてる様に見えるからさ」
「ああ…マア、最近…な。ちょっとばかし、眠りが浅いんだよ」
「仕事が忙しいのかい?」
「それもあるけどな。おせつが医者に行けって散々云うから、看てもらったら、心身性のアレなんだと」
「心身性のアレ?」
「よく分からねえが、精神的に強い負担が…とか何とか。耕ちゃん、こういうの大得意だろう?解決できるモンならさァ、してくれよ」
「うぅん、得意…かどうかは分からないけど。最近、何か大きな出来事とか…変わった事とか、そういうのは?」
「出来事…ンー、これと云って、ねえな」
「ウーン、何だろうねえ…僕もお医者様じゃないからね、詳しくは…」
「ああ、そうだ」
「んっ?」
「出来事、一つだけあったよ」
「なに?」
「耕ちゃんが帰ってきた」
「はっ?」
「久しぶりに松月に帰ってきたな。そりゃあ大きな出来事だ。大事件だな」
「じゃあ、僕が原因…ってことかい?」
「イヤ、どうだろうなア。だが、まあ…そういえば、寝る前にお前のこと考えて、眠れなくなったりはするな。また出ていくんじゃないか、とか…いつ会える、とか…」
「エッ!?なっ…な、悩んだりするのっ…?」
「そうだよ。当たり前じゃないか」
「あたりまえ…」
「俺が耕ちゃんの事で思い悩んで、寝れなかったり、食欲失くしたり、ぼうっとしたり、階段踏み外したり…そんな事、当たり前じゃないか。なに言ってるンだよ、耕ちゃん!ハッハハハ!」
「かっ、風間……」
「うん?」
「い、いやぁ…なんでも、ない…」
「そんなさァ、眠れねえだの何だの、どうでもいいのさ!耕ちゃんがいてくれれば。なっ、耕ちゃん!」
「(アァ…しばらく…離してくれないだろうなァ…)」