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    風呂_huro

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    風呂_huro

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    D坂/語り手“私”×明智

    わたしの奥さん「ただいま、明智君」
    「アラ、おかえりなさい。今日は早かったのですね」
     玄関を上がると、晩飯の支度をしているのか、美味そうな匂いがしてくる。割烹着を着た明智は台所にいて、私が傍に寄るとゆったりと微笑んだ。
    「君に早く会いたかったから、すぐに終わらせてきたんだ。何を作ってるんだい?」
    「里芋の煮っころがしですよ。八百屋さんで安かったので、買ったんですよ。店主さんが、可愛い奥さんにはオマケだなんて言って、何個か余分に袋に入れてもらいました」
     嬉しそうに笑う明智に、チクリと心が刺されたように感じた。
    「その店主ってのは何なんだい、君にそんな失礼な事を言って」
    「オヤ、失礼なんて。ぼくは何とも思いませんでしたし、むしろ、奥さんなんて誇らしいくらいですよ」
    「僕がその男に会ったら、殴りかかるかも知れないよ。全く、失敬な奴だ」
     私が腹を立てているのを見て、明智は知ってか知らずか、ニコニコと笑う。明智を誰の目も触れずに独占したいのに、現実はそうはいかず、私は常に歯痒い思いをしていた。明智の不思議な魅力に男が惑わされるなど、十分に有り得る事だからだ。
    「明智君、もっと警戒をしなくちゃ…」
    「警戒って何です?」
    「危ないんだ、この世の中は…」
    「里芋をぶつけられた位で、死にゃあしませんよ。ぼくはそこまで弱く見えるのですかね」
     からかわれていると思ったのか、明智は楽しそうにニコニコしている。そういう意味では無いよ…と言おうとして、心の中で溜め息をついた。
    「ウン…まあ、先に風呂に入るよ」
    「ハイ、湯は沸いていますよ。出てきた頃に里芋も煮えるでしょう。ご近所さんから頂いた、千枚漬けもあるんですよ」
     店主の次はご近所さんときた。明智の優しさはいっそ罪だ…。
     絶対に離したくない、誰よりも想っている、心から君を…そう思いながら、里芋を箸でつついている明智を、背後からギュウと抱きしめた。首筋に顔を埋め、耳元で甘く囁く。
    「愛してるよ、明智君…」
    「フフ、甘えん坊さんですね」
     明智はゆっくりと私の方を向いて、懐に収まると、クスクス笑いながら接吻をした。
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