充電させてよ「耕ちゃんの充電が切れたあ~」
松月の座敷に転がり込むように入ってくると、風間は金田一の華奢な身体めがけて飛びついた。そして勢いよく腕を伸ばし、力いっぱいにギュウと抱きしめた。
「風間、仕事お疲れさん」
金田一は風間のされるがままにゆらゆら揺れながら、ねぎらいの言葉をかけた。
「ああ。すっげえやったよ、俺は…充電させてくれよ…」
「ウンウン、わかったから。ヨシヨシ」
疲れきってクタクタの風間の頭を、金田一は幼子のようにナデナデと撫でる。
「耕ちゃんがいるから、俺ぁやってけるんだよォ」
金田一の首筋にぐりぐりと顔を埋めながら、思う存分深呼吸をする風間。大企業のクールな社長さんも、これでは形無しである。
「ウンウン。お前はよくやってると思うよぉ、風間」
「耕ちゃん、これから空いてる…?」
甘えるように言う風間の言葉に、金田一は一瞬ドキリとする。金田一に予定がない事などは、目に見えて明らかだからだ。
「空いてる、といえば空いてるけども…」
「ンじゃあさぁ、これから…飯でもいこうよ…」
その「飯」が何を意味しているのか…金田一は目を閉じて、ウーンと考えた。当然、風間と飯と酌の交わし合いなのだが、そこから先がどうにも怪しい。飯を食べるだけで済めばいいが、なにか先に思惑があるような…だが、予定がないのも事実である。
「ウーン…まあ、よござんす。お供しましょうかね」
「なんでも喰え。天ぷらも寿司もビフテキも鰻でも何でもいいぞ」
さすが大御所の社長、風間俊六である。事に金田一には贅沢をさせたいらしく、たぬき蕎麦ひとつで腹が一杯になった金田一に、高級な牛肉ステーキを勧めるくらいであった。
「ちょ…ちょっと腹を満たせればいいから…」
「イヤ、耕ちゃん、もっと食べなきゃダメだ。ホラ、こんなに細っこくて…」
腰を撫でている風間の手つきが、何だかいやらしいような…。金田一は何となく察しながらも、ご褒美の意味も込めてされるがままになっていた。自分で癒されるならそれに越したことはない、風間は大変だナア…なんて、しみじみ思いながら。
風間の充電が満杯になったのは、翌朝ホテルで目覚めてからであった。金田一はその間どうしていたか…結果は然もありなん、である。