リンゴの国 宇宙の果ての、地球に少し近い世界のお話です。
リンゴの国にコースケとシュンロクという男が二人、暮らしていました。リンゴたちはコースケとシュンロクが大好きで、めいめい二人の役に立とうと頑張っておりました。アスパラガスの収穫を手伝ったり、洗濯をしたり、薪割りをしたり、リンゴたちは大層働き者でした。でも、すぐ仲間同士でケンカするので、コースケが言い分を聞いてあげて、仲直りさせてあげていました。
シュンロクには夢がありました。その夢は宇宙の外に飛び立つことでした。今のリンゴの国も気に入っているけれど、他の国にも行きたくなったのです。どんな果物が住んでいるか、どんな世界が広がっているか、日に日に願いは高まっていきました。
シュンロクはリンゴで宇宙船を作りました。リンゴ果汁で吹っ飛ぶジェットパックをくっつけて、リンゴの皮の壁で大気圏も突入できるというモノスゴイ船でした。
コースケはリンゴたちとお別れするのが寂しかったのですが、シュンロクと旅をするのもきっと楽しいだろうなと思っていました。なので、リンゴたちにお礼を言って、宇宙船に食料のリンゴを山ほどのせて、とうとう二人で宇宙に出発しました。
リンゴの宇宙船はグングン上昇していって、あっという間に雲を飛び越えて、もう銀河まで手が届くくらいの距離になりました。コースケはぼーっと星が瞬く景色を眺めていました。すると、アッと言って、シュンロクが叫びました。
「しまった!」
「どっ、どうしたんだい?」
「お弁当を忘れた!耕ちゃんが作ってくれたのに!」
シュンロクが思い出したように叫ぶと、急に赤いアラートが鳴りました。途端に、ひゅうんと船の力がなくなって、がくんと振動があったかと思うと、なんと真っ逆さまに落ちていきました。
「うわあ!」
宇宙船は落ちながら、だんだん火が出てきて、リンゴの焼けるいい香りがしてきました。そのまま、リンゴゼリーの森にぼっちゃんと落ちてしまいました。二人はオーブンの中に入ったような気持ちで、顔を赤くして出てきますと、宇宙船はおいしいリンゴパイになっていました。
「ともかく、計画は成功だな!こうしてウマいパイも焼けたしさ」
「ばかじゃないの、もう…」
呆れ半分と、失敗を恐れないシュンロクの姿が眩しいのと…コースケは顔を赤くしたまま、わっはっはと笑うシュンロクを見て、あらためて、好きの気持ちが満ちあふれてくるのを感じました。リンゴたちが集まってきて、リンゴパイを喜ぶダンスを踊りました。コースケもシュンロクも、その輪に入って、楽しそうに踊りました。
それからリンゴの国は、たくさんのパイを他の国におすそ分けして、なんの心配もなく、二人はずうっと幸せに暮らしたそうですよ。
(おしまい)