おいしいケーキ「あ、あのう…黙太郎くん」
「ドワッ!な、な、なんすか!」
後ろからゆっくりとかけられた金田一の声に、黙太郎は勢いよくパソコンを閉じた。やましいことはしていないが、ヘンなものが映ってやしないかと驚いたのだ。
「あの、ぼく…動画が見たくて…」
「ア、い、いいですよ!アドレスってわかります?」
金田一から小さな紙を手渡されると、黙太郎は気を取り直してパソコンを再度開いた。
『クリスマスにぴったり!ステキでカワイイケーキのご紹介です!』
表示されたのは、テレビでも人気な配信者のケーキのレシピ動画だった。
「へえー!美味そうなケーキだなあ!金田一さんが僕に作ってくれたらいいのにナア!な~んて…」
「あっ、あのう、その…予定なんです…」
「へっ?」
黙太郎が驚いて振り返ると、金田一は湯気が出そうなほど赤い顔をしていた。
「ほ、ほんとうは…秘密にするはずだったんですが…もう、ばれちゃいましたね…」
「そ、そうすねえ…い、いや!そんなコトより!金田一さん、僕にケーキ作ってくれるんですか!?く、クリスマスにっ!?」
黙太郎は、ぐわんと前のめりになって金田一の両手を握った。金田一はその反応に驚きながらも、恥ずかしそうに笑った。
「そのつもり、です…作ったら、食べてくれますか?」
「た、たたった食べます!食べるに決まって…ネエ!食べるに決まっちゃいますよ、そりゃあ!なんたって、クリスマスですから!ねッ!!」
「ふふ、よかったです」
クリスマスに金田一と過ごせる喜びと、ナイショでケーキを作りたいという可愛らしさ。その同時の愛しさで、黙太郎は金田一をギュッと抱きしめたのだった。