Trap Drip こじんまりとした、個人経営の喫茶店。
親戚の紹介によってそこでアルバイトをしていたピーニャには、ここ最近ささやかな楽しみがあった。
「いらっしゃいませ! 今日も来てくれたんですね、先生」
ピーニャに“先生”と呼ばれた男──ジニアは、静かな喫茶店によく似合う…とはお世辞にも言い難いくたびれた格好で入口のベルを揺らした。幸い空いている時間のためテーブル席も空いているが、ジニアはいつも決まってカウンターに腰を下ろす。
「こんにちはあ。いつものコーヒーと…今日のおすすめは何ですかあ?」
「ご飯より先にコーヒーでいいんですよね。うーん、結構お腹空いてます?」
「そうですねえ」
「じゃあ、今日はドライカレーがありますよ! 親戚がガラルに行ってたんですが、すっかりカレーにハマっちゃったみたいで」
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