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    辻紫しの

    辻紫(つじむら)

    司類/ミコジョン(0909)/dndzほか

    検索避けしたいジャンルの文とか、えちちなのとか、供養したいやつ投げるつもり。

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    辻紫しの

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    キバ練(キバレン,練レン)

    誕生日に偶然再会してしまうふたりの話。
    捏造設定がかなり多いのでなんでも許せる人向け。
    いつかキバとレンが再会できて、笑いあえますように。

    ※練牙区長ノベル、練牙BD(2024)カドストネタバレ
    ※キバが西園家の裏稼業(血なまぐさいこと)を全て引き受けているが故に、表に出て来れない設定
    ※キバの服装諸々捏造あり
    ※なんでも許せる方向け

    サイカイ(キバ練)「……変わってない、か。」

    路地裏にある、薄汚れた室外機の下。
    古びたクッキー缶を開ければ、「キバの太陽」の面が月明かりを浴びて鈍く輝いていた。

    ___今日は、『西園練牙』の誕生日。
    キバからのメッセージを貰って、もしかしたら今日この場所に来るのかも、なんて考えた。こっそり寮を抜け出して、あの時みたいに胸を高鳴らせて。逸る鼓動を押えながら薄暗い路地を覗けば、そこは静まり返っていた。

    ……ほんの、ほんの少しだけ、期待をしていた。今日なら、…今日こそ、キバに__練牙に、会えるかもしれないって。きゅ、と胸の奥底が痛んだ。

    自分の期待と寂しさを沈めるように、ゆっくりと缶を閉まっていく。……大丈夫、練牙はオレを、ずっと見ててくれる。きっと、いつかまた逢えるはず。
    沈んだ気持ちを晴らすように、顔を上げた。

    __その時。

    「……は、」

    薄暗い路地裏の奥。
    __顔を覆い隠すような黒いフードの隙間から覗いた、赤い髪と赤い瞳が見えた。

    オレは慌てて走り出した。靴のつま先で蹴飛ばした空き缶が、鐘のように鳴り響く。
    翻った黒い羽織を逃すまいと、必死に手を伸ばした。狭い路地裏で体制を崩し、伸ばした手はフードの下の方へ伸びる。

    ぐっ、と黒いフードを掴み、震える声で、その名を呼んだ。

    「__っ、キバッッ!!!!」

    顕になったフードの下__オレと同じ顔をしたキバは、酷く驚いた様子でオレを見ていた。

    ああ、ようやく、__ようやく、会えた。堪らずじわ、と涙が滲む。まるであの頃の、ストリートのレンに戻ったような、そんな気持ちだった。

    言いたいことが山ほどあったはずなのに、言葉にならず、喉に詰まっていく。せっかく会えたのに、言いたいこと沢山あったのに、出てくるのは涙だけだ。あぁだって、この薔薇の優しい香りだって、キバそのもの__と、考え、思考が止まる。

    __薔薇の匂いに交じって、鉄臭い、錆びたような匂いがした。
    ひゅ、と少しだけ呼吸が止まる。暗く狭い路地裏じゃ分からないけど、キバは何処か怪我をしている。青ざめるオレとは対照的に、キバは優しく微笑むだけだ。

    言えず溜まった言葉を飲み込み、詰まりかけた声で言う。その声は、今にも泣き出しそうな程、情けなく震えていた。

    「…っ、何処か怪我して__」
    「__レン、」

    言いかけた言葉が、キバの呼びかけで消えていく。……オレにキバの言葉を遮ることは出来なかった。キバの言葉なら、なんだって聞きたかったから。

    あの時と変わらず、優しく名前を呼ぶキバは優しく微笑む。その顔は少し悲しげで、オレもなんだか泣きそうになった。
    キバはオレの手を握る。その手は、少しだけ冷たかった。

    「__絶対、絶対にまた逢えるよ。…だから、レン、」

    する、とキバの手が離れていく。キバは、その言葉の続きを言わなかった。……言わなくても、馬鹿なオレですら分かってしまった。

    キバはもう行ってしまう。
    でも、オレに引き止める術はない。……あの頃から、ずっとずっとそうだ。オレは行ってしまうキバの手を、掴むことはできない。オレが、キバを縛ることはできないから。

    堪らず、下を向く。
    あの頃のキバみたいに、気の効いた言葉すら言えない。視界から消える黒い羽織を、名残惜しく見ていた。

    __と、その時。
    ぐっ、とその冷えた手がオレの手を掴んだ。顔を上げるオレの瞳には、練牙の笑った顔が映る。壊れ物を扱うみたいに、キバはオレの手を絡めると、太陽みたいに笑って言った。

    「__レンは俺が守るよ。だから絶対に、また会える。」
    「……や、約束?」
    「あぁ、約束。」

    そう言って、キバは祈るように繋いだ手に口づけた。そうして名残惜しく、その手が離れる。

    キバはフードで顔を隠し、黒い羽織を翻した。キバが行ってしまう。悲しくて寂しい気持ちは変わらない。けれど__キバが約束してくれたから、堪えることができた。

    黒い羽織が路地裏の奥へ消える直前、はっ、と思い出す。そうだ今日、言わなきゃいけない言葉がある。オレばかり貰っている言葉を、少しでも返さなきゃ。

    すぅ、と薄汚れた息を吸った。消えゆく優しい彼に、どうか届くように。

    「__き、…キバッ!!誕生日…っ、おめでとう!!!!」

    キバがパッ、と顔を上げる。そうして小さく何かを呟くと、路地裏の奥、暗い方へ消えていった。
    声は聞こえなかったけど、キバが何を言ったかは分かった気がした。

    『ありがとう。レンも、おめでとう。』

    路地裏に月明かりが差し込む。
    握られていた手を見てみれば、少しだけ赤い血がついていた。その血を守るように、優しく手を握る。
    そうして、あの時のキバのように、拳を鼻先に当てて、目を瞑った。

    キバに会えたのは嬉しかった。……でも、この再会は少しだけ喜べない。言いたいことも言えなかったし、何よりキバが心配だ。
    まるであの頃のオレのように、顔を隠すキバは、何かから逃げ隠れているように思える。

    ……なぁ、キバ。
    キバは今、幸せか?
    馬鹿なオレは、あの一瞬でキバが幸せか、大丈夫かなんて、わからなかったから。
    ……また次会えた時、キバの言葉で、教えて欲しい。勿論、言える範囲で構わないけれど。
    だから、…だからどうか。

    先程のキバの仕草を真似て、手の甲に唇を押し当てた。そうして、祈る。

    __どうか、どうか神様。
    また次会える時まで、……いいや、会えたその先も、ずっとずっと。

    「…キバが、__練牙が、幸せでありますように。」

    オレの声が、路地裏に小さく木霊していく。
    その反芻を聴きながら、ゆっくり目を開けた。……もうそろそろ寮へ帰らなきゃ、心配かけてしまう。
    クッキー缶を隠したことを確認して、路地裏から大通りへ歩いていく。大通りはまだ賑わっていて、人の声も多く聞こえた。

    大通りに出る直前、来た路地裏を振り返る。
    キバが行った路地裏の奥は、もう見えなくなっていた。

    __キバが約束してくれた。だから、大丈夫。絶対にまた会える。……だから、その時までは。

    オレは滲みかけた涙を無理やり拭うと、大通りへ歩いていく。月明かりに照らされた大通りは、光を受けて、あのレンガのようにきらきら輝いているように見えた。
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    辻紫しの

    DONEキバ練(キバレン,練レン)

    誕生日に偶然再会してしまうふたりの話。
    捏造設定がかなり多いのでなんでも許せる人向け。
    いつかキバとレンが再会できて、笑いあえますように。

    ※練牙区長ノベル、練牙BD(2024)カドストネタバレ
    ※キバが西園家の裏稼業(血なまぐさいこと)を全て引き受けているが故に、表に出て来れない設定
    ※キバの服装諸々捏造あり
    ※なんでも許せる方向け
    サイカイ(キバ練)「……変わってない、か。」

    路地裏にある、薄汚れた室外機の下。
    古びたクッキー缶を開ければ、「キバの太陽」の面が月明かりを浴びて鈍く輝いていた。

    ___今日は、『西園練牙』の誕生日。
    キバからのメッセージを貰って、もしかしたら今日この場所に来るのかも、なんて考えた。こっそり寮を抜け出して、あの時みたいに胸を高鳴らせて。逸る鼓動を押えながら薄暗い路地を覗けば、そこは静まり返っていた。

    ……ほんの、ほんの少しだけ、期待をしていた。今日なら、…今日こそ、キバに__練牙に、会えるかもしれないって。きゅ、と胸の奥底が痛んだ。

    自分の期待と寂しさを沈めるように、ゆっくりと缶を閉まっていく。……大丈夫、練牙はオレを、ずっと見ててくれる。きっと、いつかまた逢えるはず。
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