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    kokkokkkokkk

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    ワンドロお題『笑顔』お借りしました。

     春眠暁を覚えず、処々蹄鳥を聞く。
     春の短い沖縄なれど、その言葉に違いはない。窓からは、春のうららかな日差しが降り注いでいて、嫌でも眠気を誘い出す。
    「……ふ、……ぅ……」
     請願書、代理出席を頼んだ勉強会の報告、会議の議事録。秘書たちがそれぞれにまとめた資料に目を通しながら、愛之介は小さく欠伸を噛み殺した。
    「まあ神道先生。お疲れですか?」
    「……見られてしまったかな。みんなには内緒にしてくださいね?」
     追加の書類を手渡しに来た、父の代から務めている年かさの事務員の声に、愛之介は困ったように苦笑いを浮かべてみせた。
     疲労がたまっていないわけではないが、愛之介には、この抗いがたい眠気に殊更の心当たりがあった。しかし、それを表に出すわけにもいかず、眠気を押し隠して、人当たりの良い好青年の笑顔を浮かべている。
    「神道先生……っと、失礼。お話し中でしたか」
     他愛のない雑談のさなか、不意に扉が開き、地味なスーツの男が現れた。会話中であった愛之介の姿に、デスクへと向かう足が止まる。
    「あら菊池さん、お疲れ様です。じゃあ神道先生、その書類お願いしますね。……あんまり無理しちゃ駄目ですよ」
     一礼と共に彼女が立ち去った後に、忠は愛之介のデスクの前に立ち、タブレットの画面を開いて見せた。
    「神道先生、スケジュールに変更が」
    「……無理しちゃダメだそうだよ?」
     寝不足の原因のくせに。
     愛之介の唇が、忠にだけ聞こえる声とともに小さく動く。頬杖をついて小首を傾げた愛らしい仕草と、困ったような笑みに、忠の喉からは声にならない声が上がるが、それは咳払いによってかき消された。
    「、ん……ッ! ……ッ、え、延期の連絡でしたので、ご負担にはならないかと」
    「ふぅん、いつのだい?」
    「……はい、明日の午前です。朝一の東京での面会を来週に延期してほしい旨、連絡がありました。スケジュールに問題はありませんでしたので、承諾しています」
     何事もなかったかのように、秘書の顔を取り戻した忠の様子に、愛之介は不満げな表情を浮かべる。しかしそれはほどなくして、楽しげな、にんまりとした笑みにとって代わっていた。
    「……先生?」
     怪訝な声にも、愛之介の表情は変わらない。それどころか、忠にとっては、随分とたちの悪いものになっていた。
    「ああ、すまない。なんでもないよ。……それじゃあ、今夜のフライトは中止で、明日の朝もそんなに急ぐ必要がなくなった、ってことだね」
    「はい、飛行機のキャンセルと、便の取り直しは完了しています」
    「……そう、ありがとう。……ああ、それと、ちょっといいかな」
    「?」
     愛之介が席を立つ。廊下へと向かう愛之介の後ろに付いて、忠も事務所の扉を出た。
    「……先生、どうかなさいましたか」
     ひとけのない昼間の廊下は節電のため消灯されているが、窓からは春の日差しが射しこんでいる。事務所の扉から少し離れた給湯室に忠を連れ込むと、愛之介は、ぐわりと大きく開いた唇から、眠たげなあくびを吐き出した。
    「……お前のせいで、眠くてかなわん。……眠気覚ましをよこせ」
    「は、……と、おっしゃいま、ッ、ん?!」
     がぶりと、愛之介の口が忠の唇へと噛み付いた。下唇を食んでから、閉じたままの忠の唇の隙間に舌を捻じ込んでゆく。つるりとした綺麗な歯列をなぞり、半ば無理矢理に口を開かせて、愛之介はその舌を捕まえた。逃げようとする忠の薄い舌を吸い上げるたび、いやらしい音が響く。愛之介が思うままに這い回っている忠の口中は、ミントの味がする。柔らかな舌を貪りながら、二人の呼吸はどんどんと荒くなっていた。
    「……ッ、は……ッ! ッあい、の、すけ、さま……! ッいけません、だめ、です、ッこ、こんな、ところで……!」
    「……イイ目覚ましになったよ、ありがとう菊池君。……ああ、今夜が楽しみだなあ?」
     ようやく解放され、潜めるように吐き出した忠の声もどこ吹く風と言った風に、愛之介の足元が嬉しげな音を立てる。顔を真っ赤にした忠は、口元を押さえながら、
    「……お身体に障りますので、今夜くらいは早めにお休みになったほうがよろしいかと」
     そう言うのが精いっぱいだった。



    「……なにが、お身体に障りますので、だ。……こんなにされて、すぐに眠れるわけがないじゃないか、なあ……」
     昼間から煽った結果、疲れ切った表情を浮かべることとなった愛之介は、満足げな笑顔の忠に、呆れたように溜息を吐いた。
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