初めて・爪「道満の手って大きくてゴツゴツしてるけど、爪が長くって綺麗で……触ってもいいかな?」
「いいですよ」
快い返事とともに右手が差し出された。
道満の長い人差し指を手に取る。先端の硬質な爪甲はまるで彼の耳飾りと同じ翡翠でできているように思えた。宝石から削り出したように惚れ惚れするような輝きを放っている。
その爪先をそっと撫ぜた。ひんやりとしていて滑らかで硬い。不思議な感触だった。
爪の表面をなぞりながら、どさくさに紛れて指の付け根の方まで触れてみる。骨ばった男らしい手だ。この手がいつも俺を助けてくれているんだと思うとなんだか胸が熱くなる。
ふいに悪戯心が湧いた。そのまま手を滑らせて手首の内側に触れる。道満の腕が小さく跳ねたような気がするけれど気にしないことにした。
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