秋雨が降る日 そうか、もう秋雨の降る季節だ。
ぼんやりと、ソファの上で体を丸めるように座っている一人の男はそう思った。
遠くで雨がパラパラと小気味良く窓を打ちつける音が聞こえる。その音がどうも言い表し難い心地よさ引き出し、この男は先程から、瞼を落としては上げるを繰り返していた。
彼の視線の先にはテレビがあった。つい三十分前までは、テレビの中の舞台の上で、登場人物たちが楽しいハッピーエンドを演じていた...はずだ。
男は、仕事が忙しい身であった。今日は久々にもぎ取った貴重な休日で、ずっと見たがっていたドラマの録画を一気に視聴するという、ささやかな贅沢を味わっていた。しかし、なぜだろう。ドラマが終盤に進むにつれて、物語に登場する一人の人物が気になり、どうもドラマの最後のシーンが印象に残らなかったのだ。
4653