エクリュに触れる 優しく撫でたかと思えば時に弾かれ、また悪戯に指でするするとなぞられる。彼女の細長くもしっかりとした手指が僕の身体を撫でる度に、情けなくも僕の肉体は欲情に苛まれ今にも茹だりそうである。
「これは?」
「……ハンターなりたてのころ、かな」
「ふうん、立派な腕。あ、ここにもある」
「それは多分……ああ、兄貴と喧嘩した時のやつ」
「へえ、ユウイチさんと」
そんな時もあったのね、と志信くんが乳白色の湯を僕の肩に掛けながらころりと笑う。くそ、煽りやがって。先ほどから恥ずかしくて目が合わせられない僕の気も知らずに……。
桃色の柔らかい髪をゆるりと結い上げ、生成色の肌を薄桃に染めた彼女の姿はあまりにも扇情的で、僕は今にも押し倒したい衝動を必死に噛み殺してここにいるのだ。
とろみのある乳白色の湯は、長湯には心地の良い温度で保たれている。恥ずかしいから、という理由で手ぬぐいが巻かれた彼女の身体が湯にうっすらと透けるのがまた目に毒だ。
湯をかけてはなぞり、また湯をかけては撫でる。愛撫にも似た心地の良さと、股間に苛立ちを覚える彼女の手付きに限界が近づく。ぽっかりと僕を嘲笑うような大きい月を見上げて身体を落ち着けていると、彼女の少し低くて落ち着く声が空気を震わせた。
「あのね……あたしね、とうじろくんと会うと楽しいの」
月のような銀の瞳、伏せられたまつ毛が頬に影を落とす。
「どうしてだろう、ずっと、ずうっと前から知ってたような……懐かしい気持ちになるんだよ。」
僕の全身の細胞が、一斉にどくりと脈打つ。
どことなく儚げな志信くんの輪郭が霞んで揺れ、僕は思わず彼女の腕を掴んでいた。
「しのぶ、くん」
「……ねぇ、とうじろくん…。あたしの傷も、見てみる?」
耳まで真っ赤に染めた彼女にごくりと喉が鳴る。
ばしゃりと大きな飛沫をあげて、僕は彼女を抱き抱え浴場を後にした。