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    bach_otamama

    @bach_otamama
    普段はFGOヘクトール受メインに小説書いてます。アキヘク、タニヘク、マンヘク多め。こちらはメギド72ロキマネなどFGO以外の作品を上げていく予定です。

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    bach_otamama

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    アスサラ。アスサラと言い張る。
    アスモデウスにずっと綺麗な赤い髪の自分を覚えていてほしいと思うサラです。実は数十年後の捏造話で、ウィッグで白髪を隠していたサラの話が浮かびましたがかき出したら変わりました。

    Under the Rose~秘密は紅の下~ 鋏を手にしたアザゼルが尋ねる。
    「本当にいいのか?」
    「ええ、お願いします」
    サラは微笑んだ。毛先を少し撫でる。
    (宿主は何を考えてイる?)
    「庭師として鋏は使うが、人の髪を切るのはやったことがない」
    (切るのカ?いや、切り離せるワケがなイ)
    アナキスさえも娘の意図が掴めず、毛先ごとゆらりとざわめく。
    「あら、なんだか髪が……」
    「本当に切っていいのか?だが、俺が聞くのもなんだが何のためにするのか?」
    すると、少し離れたところに座っていたカイムが立ち上がった。
    「私めが説明しますよ。こういうものがありまして」
    カイムが栗色の細長い何かを束ねたものを取り出した。よく見ると、人の頭の形をしている。
    「それは何だ?」
    「ウィッグですよ。病気や加齢で髪が抜けたり薄くなった者がそれを隠すために使ったり、舞台役者などが変装したりするときにも使いますね」
    「サレオスは使っていないが?」
    「あれは剃っているのだそうですよ。間違っても言わないように。個を尊重するのは我らが軍団と我が君のご意向でもありますので」
    「それと、髪を切ることに何の意味があるんだ?」
    「こういうものは、人の髪で作るんですよ。長く美しい髪はそれだけで高く売れます」
    「なるほど。しかし」
    アザゼルはサラを見下ろした。こちらに来てから庭師として貴族の館に出入りするようになり、貴族の服や調度品などを目にする機会も増えた。そのアザゼルの目から見てもサラの服は生地も仕立てもしっかりしている。そもそも、髪を売るつもりならアザゼルに頼む必要はないはずだ。
    「あのですね、売るためじゃないんです」
    「では何を?」
    「ウィッグを作るんですよ。王都に腕の良い職人がいますので、私めが預かります」
    「そうか。では、本当にいいんだな?」
    「はい、お願いします」
    アザゼルが赤い髪にはさみを入れた。

     サラが髪を切った。アナキスが寄生しているため、完全には短くならず、耳の横のあたりは前と同じ長いままだが、後ろの髪は首の付け根のあたりで切り揃えられている。サラが髪を大切にしていることはアジトの皆も知っているので、ちょっとした騒ぎになった。
    「どうして切った?美しい髪なのに。それとも、誰かに乞われたか?」
    長く生きる間に、病や加齢で抜けた髪を他者の髪で作った品で補う者がいることはアスモデウスも知っている。しかし、サラの縁者は老いた祖母しかおらず、彼女は自身の白くなった髪を受け入れている。経済的に困窮しているわけではないようなので髪を売る理由もないはずだし、何よりもサラは髪をそれはそれは大切にしていた。
    「少し、イメージチェンジをしてみようと思って。でも、アスモデウスさんは長い方が好きですか?」
    「そうだな。今の髪型もよく似合っているが、お前の髪は本当に美しい。伸ばしても良いだろう」
    「ありがとうございます。じゃあ、また伸ばしますね。私の髪、すごく伸びるのが早いんですよ」
    サラは微笑んだ。

     そして、その通りになった。サラの髪が腰のあたりまで伸びたころ、カイムが出来上がったウィッグをもってきた。
    「いかがですか?」
    完成したウィッグは今のサラよりも少し長い、腰を覆うくらいまである。赤髪は切った時と同じように鮮やかな色をしていた。
    「すごい!これなら私がおばあちゃんになってもずっと使えますね」
    「大事に使っていただければ。私めも紹介した甲斐がありました」
    カイムが口の端を引き上げた。異端審問官は、調査をする際に身分を隠すことがしばしばあった。また、彼は道化として芸人たちに混じって過ごしたことがある。その際に舞台衣装に使う品やそれらを扱う職人や商人と会ったこともある。
    「ありがとうございます。あの、お礼の品とか」
    「それには及びませんよ」
    カイムが首を横に振った。

     ウィッグを作りたいと聞いた時は驚いたが、理由を聞いたら大切な友にずっと綺麗な髪を覚えていてほしいと彼女は言った。炎を紡いだようと言われるこの髪もいつかは年を取れば白くなる。年を取るのが悪いことだとは思わないが、彼女も綺麗と思っていてくれるならずっと赤髪の自分を覚えていて欲しい。無二の友のため。そんな理由を聞いてしまったらカイムは断れなかった。職人の手配、部分的にメギド化した髪をどうやって切るかなどアザゼルに打診したのもカイムだ。
    「でも、あの……お礼をしたいんです」
    「でしたら、キッシュは作れますかな?」
    「レシピがあれば大丈夫だと思います」
    「では、食事当番の時にキッシュをお願いします。そうそう、アスモデウスが貴方の淹れる紅茶は美味しいと言ってましたな」
    「はい!薔薇の入ったお茶もあるんですよ」
    「ではそれもお願いしましょう」
    「任せてください!あ、でもこのこと、アスモデウスさんには内緒でお願いしますね」
    「貴方がそれをうまく隠せば大丈夫ですよ。かの御仁は掃除なんてしませんから」
    カイムは片目をつぶってみせた。どこからともなくモーリュの花を取り出し、くるりと回る。仲間を意味する花言葉を持つ花が、サラの目の前でどんどん増えていった。
    「わぁ」
    「私は道化なれば。笑っていただければ何よりです」
    歓声を上げる娘へカイムは笑い返した。
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    bach_otamama

    DONEフォロワさんへのお誕生日プレゼント代わりの掌編です。
    聖下の話。時間軸としてはROM6のパウラのバトル直後。
    ラストはレクイエムの歌詞ですが、ミサの際に唱えられる言葉でもあるそうです。
    本来は日本語に「レクイエム・アエテルナム・ドナ・エイス、ドミネ、エト・ルクス・ペルペトゥア・ルケアット・エイス」とラテン語のカタカナ表記をするべきなのだと思いますが、読みづらいのでラテン語の原文と邦訳を併記しました
    三度、知らないと言って 天地がひっくり返ったのだとあの時思った。実際にアイアンメイデンが回転し、文字通りひっくり返ったといえなくもないことをアレッサンドロはよく知らない。ただ、自分の命など歯牙にもかけないと思っていたパウラから向けられる眼差しが、これまでとは少し違っている気がした。

     冷厳なシスターの視線に込められたものをどう表せばいいのかアレッサンドロはわからない。かつて、幼い頃父に侍っていた女達が見せたような媚びとも、即位してから多くの者に向けられてきたような軽侮の念や失望などとも違う。むしろ、今までのパウラから向けられていたものはそれが近い。失望や軽侮ではなくもっと乾いたそれ、無関心という方が近かった。しかし、今のパウラがアレッサンドロへ向ける声や眼差しには立場上だけでないいたわりも感じられる。それは、亡き人を思い出させた。色も、性別も違うのに。
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