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    mygblueline

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    フェザラン短文や再録、表に載せられないものなど。

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    同室設定のフェザラン。短い文です。

    #フェザラン
    phetheran

    ある夜の話ランドルの準備は長い。
    まず顔と首に化粧水や乳液を叩き込んで、指をくるくる動かして念入りにマッサージをする。
    その次は手だ。いつもは黒い手袋をしていて見えないけれどランドルの指は細くて長い。拳を使わないという信念を持っているのでーーフェザーからしたらとても勿体無いことだがーー傷のない真っさらな手だ。グローブの上からはアクセサリーもしているから手はランドルにとっては着飾るところらしい。爪をチェックし、ハンドクリームをマッサージするように塗っていく。以前自分も興味が出て借りてみたが、傷口に滲みて合わなかった。その後ランドルからオイルを勧められたっけ。どこへやったかな…
    次は脚だ。ランドルの大事な武器である脚。寝巻きの裾をたくし上げて脚の甲、裏、指の間や爪まで念入りにオイルでマッサージしている。ふくらはぎまで手が上がりしっかりと筋を辿り揉み込んでいく。ランドルの強力な脚技は毎日の鍛錬と手入れによって維持されているのだ。
    鏡台の前から立ち上がって洗面台のある方へ歩いて行った。
    手に塗れたオイルを洗い流した後、少し乾き始めた髪をふんわりとした清潔なタオルで包みながら帰ってくる。
    ランドルの髪は長い。いつもは頭の上の方でしっかりまとめられて馬の尻尾のように垂れ下がっている。歩くと左右に揺れるし、ジャンプすると跳ね上がる。戦うときは髪も一体化するようにランドルの全身は弧を描いていく。
    そんな活動的な髪も今はすっかり大人しく、背中の真ん中より下ら辺で静かに揃えられている。
    この部屋にはドライヤーという蒸気の動力を使って熱風を起こさせる機械がある。それを手に取り横から当てると大きな空気音と共にブワッと薄桃色の髪が舞った。
    フェザーの髪は短く軽いので少しの間放っておけばすっかり乾いて、いつものように髪先が上に向かって跳ねている。ランドルからはそのまま寝るなドライヤーを使えって言われるが、めんどくさいなぁとなり使うのを早々に諦めたフェザーだった。
    ランドルのうねる髪を見ながら、風に舞う花びらみたいだなと思う。花の種類には詳しくないからどんな花かは分からないけれど、ランドルの髪はそれは美しかった。



    「おい、こっちで寝てんじゃねぇ。テメェのベッドはそっちだろ」
    強くゆすってみるが、フェザーは一度眠りに入り込んだらちょっとやそっとでは起きやしない。ランドルのベッドの上で、文字通り大の字になって布団も被らず、口を開けて寝ている。
    せっかく念入りに手入れした脚をピクリとも動かない胴に当ててぐっと力を入れてみる。強く蹴りすぎるとまずいから起きる程度にと思うが上手くいかない。
    俺が寝れんだろうが。
    隣を見ると掛け布団の乱れた空きベッドがあった。ランドルの寝床を占拠しているフェザーの本来の寝場所だ。
    動かすことを諦めて仕方なくそちらに移動する。ぐちゃぐちゃになったシーツをある程度整え、端の方に飛ばされていた枕を真ん中に持ってきて、その上に頭を置いて横になる。
    途端にフェザー特有の匂いが鼻に抜けていく。汗の匂いと太陽の日のような匂いと、血の匂い、自分もよく知るものだ。布団を被るとさらに全身に行き渡った。フェザーの小さいが強靭な腕を思い出し身体がぶるっと震えた。
    いつも寝るときとは違う匂いという違和感は最初だけで、それもいつの間にか馴染んでいく。フェザーの匂いに包まれて、自分の身体に溶け込んでいく。



    「ん…」
    目を開けると真っ暗な天井が見える。
    あれ、寝てしまったのか。寝る準備をするランドルを眺めながら待ってたはずなのに。
    ここはランドルのベッドだ。一緒に寝たかったのだ。ランドルに触れたかったから待っていたのに。今その所有者はいない。腕が空ぶって行き場のないシーツの波に浮かぶ。
    上半身を起こし自分の本来の寝床に目を移すと、布団の膨らみが見えた。
    布団からは長い髪が流れて揺蕩う川を作っている。
    ランドルはフェザーのベッドで向こう側を向いて寝ているようだった。
    ランドルの寝相は悪くないから、手前には空きがある。
    そのまま自分のベッドに移動し、ゆっくりと乗り上げるとそのスペースに身を横たわらせ、ランドルの丸くなった背中にくっついた。
    静かな寝息が聞こえる。起きてはないようだ。
    手のやり場に一瞬迷ったが目の前の身体に回す。驚くほどに馴染んで抱きしめると目の前の淡い色の後頭部に顔を寄せた。欲しかったものを手に入れると安心する。
    髪を踏むと怒るからちゃんと間に包み込んで。



    妙な暑苦しさを感じて目を覚ました。
    身体を動かそうとしたが何かにつっかえて身動きが取れない。
    見なくても分かった。
    フェザーだ。
    こっちへ移動してきたのか。
    せっかくベッドを使わせてやったんだからずっと朝まで寝てくれたらいいものを。
    自分の身体に回された腕や脚を少しだけ避け、肢体を緩い拘束から解放させる。
    ゆっくり振り向いてフェザーを見ると自分に身体を預けよく眠っているようだった。また何をやっても起きないだろう。
    自分のベッドに戻る理由はなかった。
    フェザーの身体に腕を回して息を吸い込む。
    自分が昔から欲してやまない、好きな匂いだった。 



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