なあ俺どうすればいい?よう!みんなの人気者”鉤爪の蜘蛛”ことショットさんだぜ。
俺は今ギルドの中で仲間からトンチキな相談をされちまっていて、仕方がないから好物のクリームソーダをじゅるじゅると音を立てて時間をかけてゆっくり飲んでいる。そうして口がふさがっているってハッキリさせておかないと返答を求められてしまうからな……不本意ではあるんだが。
「なあなあショット、なんで俺とドラ公がイチャイチャしている漫画がこんなにたくさんあるんだよ」
俺が知るわけないだろボケ!
「それでこの『R-18作品は表示できません』っていうのはどうやったら見れるんだ?」
「ヌクシブの自分のアカウントに……ログインすれば……」
つい口を挟んでしまったぜ。ショットさんもなかなかのお人好しだぜ。
「そうなんだ。ありがと。でもわざわざアカウント作ってまではちょっとな」
「そこまでしているんならもう作っちまえよ……っていうかロナルド、まさかおまえ自分がドラルクとえっちなことしている漫画見たいのか?ええ……」
「えっちなことっていうか、だって何が描いてあるか気になるじゃん。気にならねえ?」
「俺だったらならないな。俺を巻き込まないでくれ」
ショットさんはヌクシブでは健全に男性向けのえっちなものだけを見ているんだよ。女性向けの、しかもナマモノだなんて近寄りたくないんだ。それだけでも絶対にめんどくさいことになるのにそのナマモノが生も生、目の前にいる昔からの仲間と、こいつと同居していて俺ともときどき一緒に遊んだりする気のいい吸血鬼とがくんずほぐれつ……ぐえっ。これ以上はやめよう。やめるんだ。やめろ!
「巻き込むってなんだよ?スマホでネット見てるだけじゃん」
「わからないならこれ以上はやめてくれ……」
「それでなんでこんなにたくさんあるんだろうな」
「知るか!……あー、アレだろ、ロナ戦のファンがいっぱいいて、ファンアート描くやつもそれだけたくさんいるんだろう。よかったな」
「そういうもんなのか?」
じゅるじゅるじゅるじゅる
「おお↑の会話から3日後の、同じようにギルドの中でクリームソーダをすすっているムダ毛フェチさん」
「ドラルク。おメタい状況説明ありがとよ」
「ムゲチさんもなかなかですなあ。さて、うちの若造にヌクシブの説明してくださったそうで感謝いたしますぞ」
ブホッ!
「マスター、雑巾を。いやいや飲み物を吸っている最中に出せる話題ではありませんでしたな。これは失敬」
「絶対ワザとだろ……ゲホッ、ゲホッ」
「死ねないというのは不便なことですなあ」
何か飲むときにほぼほぼむせては死んでいる吸血鬼がマスターから受け取ったダスターで甲斐甲斐しくテーブルを拭いていやがる。
「……それで、ロナルドがパトロールに出ているうちに俺の助言のせいで熱心にヌクシブ見るようになったとかそういういらない報告をしに来たんだろう?ゲホッ。俺そういうの聞きたくないんだけど。勝手におまえらだけでやってろよ、ゲホッ」
「いや、逆に、ヌクシブ見なくなったのだよ」
「へえ〜」
あんなにがっついてたのにな。でもまあコッソリ見てるところを同居人に目撃されて恥ずかしくなったとかそういうことなんだろうな。めでたしめでたしだぜ。
「やっぱり本物の身体の方がいいんだって。ふふふ」
「ゲホッ!ゲホッ!ゲホッ!」
今、コイツ、なんて言った?!?!
「生身だと体温や体臭とか、穴だって開いているし……」
「やめろそれ以上言うんじゃねえ。ジョン、ジョンはおまえの主人がこんなこと外でペラペラしゃべってていいのかよ?!」
描写されていなかったのでまるでいないみたいになっていたが実はずっとドラルクの頭の上に乗っかっていたジョンに向かって俺は叫んだ。ジョンはまるっきり不服そうな表情で、ヌヌゥ……とうめいている。そうだよな、おまえが一番の被害者だよな、ジョン。
俺はクリームソーダの残りを一気に飲み干すとこのお代はロナルドにツケておくようにマスターにお願いし、ジョンにキツいときはウチに避難しにきていいからなと言って帰宅した。マジロに感謝の意をもって見つめられるのがあんなにステキなことだとは知らなかったぜ。それ以外のことは、もう、何も考えたくない……次あいつらに会ったとき俺どういう顔すればいいわけ?ヌクシブで我慢しておけよなあ、もう!