てのひらをあわせる「マヨさんさァ、最近全然ご飯食べてなくない?」
「フム…マヨイ先輩はいつもあまり食べていないみたいだけど、最近は特に、だね」
「このままでは体調を崩してしまうかもしれません…心配ですな」
「じゃあさ!おれに、考えがあるんだけど」
『マヨさんに朝ごはんと昼ごはん、たくさん食べさせてあげてくれませんか?』
あさごはん、ふかふかパンケーキ
じゅう、熱されたフライパンから小気味良い音が鳴る。
砂糖と、卵と、小麦粉と、牛乳を混ぜた甘い匂い。午前七時の共有スペース、運動部のひとたちは朝練でもう寮を出ているし学校がないひとはもう少し寝ていようかという半端な時間。目の前には空っぽの白い皿。それと、ガラスコップのなかのオレンジジュース。テーブルの真ん中に置かれた花瓶に生けられているピンクと黄色のガーベラ。キッチンでジャグリングのように何枚もパンケーキを焼いているのはエプロン姿の日々樹渉。そこに何人かが皿を持って並ぶ。まるで絵本の中みたいな“あさごはんのしたく”で、優しくて暖かくてしあわせだから消えてしまいたくなる。
7481