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    ・海賊軸キラゾ
    ・寝起きの悪い大型犬みたいな🌐と寝起き良くて意外にも面倒見の良い⚔を見てみたかったやつです
    ・直接的な描写はないですが情事を匂わせる表現があります

    キラゾ週間(?)の間に書き上げるのが目標…!

    🌐の誕生日の翌朝の話「……おい、そろそろ離せって」

    そう言うと腹に回った手はさらにぎゅうと締め付けを強めてきた。
    はぁ、と何度目かのため息が漏れ出る。
    ここで無闇に身を捩ろうものならさらに事態を悪化させるだけ。
    経験上分かっていることなので今は大人しくしてやっているのだが……。



    ここはとある冬島。
    今背中に引っ付いているこの金髪男を掻っ攫い夜中に適当に連れ込んだ、なんてことない街のなんてことない普通の宿だ。
    窓から差し込む日の光はとっくに世界が動き出している時刻であることを告げており、遠くの方からは市場の喧騒も聞こえてくる。

    朝目が覚めてから二度寝することもなく身体を叩き起こしたゾロ。
    身体は未だ気怠さを引きずるが比較的寝起きはいい方だ。

    むくりと起き上がった拍子、以外にも肌寒いことに気が付いたのでその辺に脱ぎ捨ててあった大きめのシャツを勝手に拝借して。
    そのまま片手で下を押さえながら風呂場へと向かい蛇口をひねって湯を溜めていく。
    立ち上る湯気を見届けその間にさっさと用を済ませてしまうかと立ち上がるも、ジリリリ、と廊下の向こう側から目覚まし時計の音が聞こえてきた。

    慌ててベッドまでかけ戻りこれ以上余計なものを垂らさないようにと慎重に膝だけ乗り上げ音を止める。
    確か寝る前にセットしたんだったか、そう思いながらベッドサイドに置き直した。
    ふぅと一息つき、さて風呂に戻るかと立ち上がろうとするも、どうやら途中でこの男を起こしてしまったらしい、布団からぬっと伸びてきた小麦肌の腕に阻まれてしまう。

    「……ん…………いくな……」

    シーツの擦れる音と共に聞こえてきた声。
    寝起きの低く掠れたようなそれに多少の動揺はあれど時間も時間、またベッドに引き戻されるという訳にもいかない。
    そう思い掴まれた腕を少し揺すぶってみる。
    しかし、やはりと言うべきか鍛え上げられた太く逞しい腕はびくともしない。
    それどころかもぞもぞと動き出し、ベッドに腰掛けている状態のゾロにぴとりとくっつくような形で後ろから覆いかぶさってきた。

    本気で抵抗を見せれば解けないこともないのだろうがゾロとて寝起き。
    朝っぱらから殴り合いをおっ始めたい訳ではないし6つ歳上の男のこんな姿を拝めることもそうそうない。
    と、そうこうしているうちに冒頭に戻るのだが。



    前に回る太い腕をぽんぽん、と緩く叩いてやりながらなぁ、ともう一度声をかけてみる。

    「風呂入るだけだ、別にどこにも行きやしねぇよ」

    キラーは上下ともに裸の状態。
    少しひんやりとした部屋の温度に反し、密着した部分を通してあたたかな体温がじんわりと伝わる。
    後ろ手に顔を見てやろうかと少し首を動かしてみたのだが、ふぁさ、と首元に触れたキラーの毛先がくすぐったく思わず身を捩ってしまった。
    すると逃げられると思ったのだろうか、キラーはぐりぐりとゾロの後ろ首に額を擦り付け、

    「…………だめだ…」

    またも低く唸る。
    まだ寝ぼけ眼なのだろう、加減もできず馬鹿みたいにぎゅうぎゅうと力を強めてくるキラー。
    「〜〜……」と低く唸りながらどこにも行くなと言わんばかりに抱きすくめてくるその仕草はまるで駄々をこねる幼子のようで。

    しかし、ここは心を鬼にもう一度脱出を試みる。
    すぐ戻る、だからここで待ってろ。
    今度は長めに腕を叩きながら再度声をかけてみた。しかし、

    「…………なんで…」

    むにゃむにゃと言わんばかりの舌たらずな喋り方。
    そこで声を出されたら直に耳に響くというのにこいつは。
    はぁぁぁ………、思わず天井を仰ぎ見る。

    「………ったく、」

    何でもクソもないだろうが。
    こちとらナカのものを掻き出さねばならないのだ。そのくらい察しろ。

    ………と、ここまで表面上は苛立ちを見せてはみたものの。
    正直、というか内心。
    あくまでここだけの話、だが。

    …………ちょっと可愛いすぎやしないだろうか。

    ゾロの鼓膜を震わすその声は、普段凛として仲間たちに指示を出しいち海賊団のNo.2として船長を支える男のものとはとても思えない。
    お気に入りのおもちゃを取られまいとぎゅうぎゅうとゾロの腹を締め付けてくるその腕は、"断罪者"の意味を持つ恐ろしい武器を握りしめ敵を前に次々と血祭りを上げる男のものとは到底想像できない。
    世間に"殺戮武人"として名が知られ恐れられている男がゾロの前ではこれ程までに無防備になるものかと一抹の優越感を覚えると同時、普段こちらをガキ扱いしてくるこの男の珍しいギャップを前に、心の中では悶えるのに忙しい。

    あーー、ったく……。
    昼までには戻るとうちの航海士に約束してしまったというに。くそが。
    もう少しこの男の我儘に付き合ってやりたいなどと思ってしまうじゃないか。

    しかしずっとこのままというわけにもいかない。
    このままでは風呂場からお湯が溢れ出してしまう。
    はぁぁ、と今度は先程までよりさらに深めのため息が出た。

    …………決めた、担ぐか。

    そうと決まれば話は早い。
    前に回った手にぐっと力を込め強引に解いてやり、そのままぐるっと180度回転する。
    どうやらこの我儘武人はそれが気に食わなかったらしい、あからさまにむぅと口を曲げてきやがった。
    ぱらりとかかった前髪の奥で眉間に皺を寄せ「なんでだ」と表情で訴えてくるキラー。
    しかし肝心な目がまともに開いていないのだからその渾身のしかめ面も何も怖くなどない。

    漏れ出る微笑を抑えずお前も行くなら文句ねぇだろ?と話しかけながら腿の下辺りに腕を差し込む。
    下半身にかかったシーツごと巻いていくかとも迷ったがそんなことで恥じらう生娘などではないしシーツは一思いに取っ払ってやった。
    ん、と短く返答があったのを耳で確認し次の瞬間、ぐっと力を込め米俵を担ぐような形でキラーを肩に抱えてみる。
    さすがに上背があるだけにずしりと重みがあるがこのくらいは何ともない。

    そのままペタペタと裸足で風呂場へと向かう。
    道中、窓ガラスに反射した自分達の姿に思わず苦笑いが漏れ出た。
    片手ではキラーを抱え、もう片方ではナカのものが床に溢れないよう下生えの部分に手を添えている状態。
    何が悲しくて朝から全裸の野郎を担がねばならないのか。
    女と迎えた朝はお目覚めのキッスとお姫様抱っこが定番だろうが、いつだったか上機嫌にコーラを煽っていた船大工の顔を思い出す。

    だがまあ、おれにはこれくらいが丁度良いと一人納得もする。
    雑に扱っても壊れない、寝起きに俵担ぎされようと未だに寝ぼけてやがる、このくらいの神経の図太さを持ち合わせてくれている方がこちらとしても気が楽だ。
    まぁきっと、これもこいつが心を許してくれている証拠なのだろうが。



    風呂場につきまずは抱えているのを湯船の中に静かに下ろしてやる。
    ほら、ちゃんと座れよと声をかけながら無駄に長い足だけ先に湯につけてやり自力で座ることを促した。
    んぁ?と間抜けな声を出しているあたり流石にここがベッドではないと気付いたらしい。

    言われるがままに身体を沈めるキラー。
    するとまだ半分程しか溜まっていなかった水嵩はちょうど肩下辺りまで一気に上がった。
    こいつは能力者ではないが湯船ほどの少量の水でも溺れてしまう可能性がある。
    それでもまぁ、このくらいなら大丈夫だろうというところまで湯を入れてやり、きゅ、と蛇口を閉めた。

    「…ろろのあ……?」

    少し目が覚めたのだろう、先程より気持ち目が開いている気がする。
    不機嫌というよりは不思議そうな、そして少し、不安そうな顔。
    「何でこっちに来ないんだ?」と言わんばかり。

    湯船のへりに両腕をつき、こてんと首をもたげるキラーにお前はモデルか何かか?と問いたくなるもその気持ちを抑え、そっと近付いてわしゃわしゃと無造作に髪を混ぜてやる。
    すぐ終わるからここで待ってろ、と声をかけるも未だ眉根を寄せたままでいるので、ここにいるから、な?と言葉を重ね、我ながらぶっきらぼうに前髪を掻き分けその額にちゅっとキスを落としてやった。
    するとそれに安心したのか、キラーは相変わらずのぼんやりとした瞳でゾロの顔を見やり、どどめ色にも近いようなその唇を、ふ、と綻ばせる。
    やがてゆっくりと瞼を閉じながら満足したようにふぅ、と大きく息を吐き出す様子をゾロは静かに見守った。

    はらりと解けた前髪の向こうに見える表情が意外にも穏やかで、存外、この男が風呂嫌いじゃなかったことを思い出す。
    ただ、一人だともう入れなくなってしまったとぽつり溢していたことも。
    湯に浸かりながらも微笑みを見せるその口元に、水の中ではろくに力も入らない状況だと言うのに随分気が抜けてやがるなと思うも、それが自分の存在を確認したからこそなのかと思うと妙にむず痒い。

    本来ならベッドに据え置いてきても良かったはず、ここで一発ひっぱたいて起こすくらいしてやっても良かったはずだ。
    しかし、この表情を見れば甘やかしてやりたいと思うのも仕方がないではないか。
    歳の差も相まってか何かとこの男に世話を焼かれることも多いが、元々ゾロも面倒見はいい方なのだ。
    こいつのこの顔を引き出せるのならば少しくらいの我儘は聞いてやりたい。

    まったく、手のかかる犬は困るなと心の中では呟くも、残念ながらどうにもそれがおれは嫌じゃないらしい。
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