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    aqua_cat2525

    @aqua_cat2525

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    aqua_cat2525

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    連作で続けていた2人とは別人です
    蒼月は一人暮らし
    拓海はよくこの家にお邪魔しているイメージ
    甘めです

    #衛拓
    Eitaku

    現パロ(水族館デート) 衛拓現パロ(水族館デート)
    目の前でカラカラ鳴らされるベルを淡々と見つめる。
    なんとなく訪れた商店街で思いの外興味深い古書を見つけたので大量買いしたら福引きのチケットを貰ったのだ。
    こういうものの特賞はペア宿泊券だったりするので引くか迷ったけど当たりリストを確認したら最近オープンしたばかりの水族館のペアチケットが含まれていた。
    それを見てそういえば拓海クンが魚好きだったなと思い出した。
    料理として好きなだけかと思っていたけど休日に行ったショッピングモールでペットショップの色鮮やかな熱帯魚を見てお魚さんかわいいなと呟いたのも聞いた。
    当の本人はそんなぼそりとした呟きをボクに聞かれているとは思ってなかったのだろう。眼を輝かせて水槽を見ていた。ボクの体質のせいで人の多いテーマパークの類は行こうという発言すら遠慮させてしまっている。
    それを申し訳なく思う反面助かっているのも事実でボクから行こうと言い出せないのもまたこの問題を加速させていた。
    いつか車を持てるようになったらできる限り人が少ないものを調べて一緒に行こうかと思っていたがいい機会かもしれない。
    チャンスは2回。もしこれで当てることが出来たら、素直に拓海クンを誘おう。そう思って回したくじは赤色と金色。
    冒頭のベルの音に繋がるわけだ。
    ボクは無事当たりを引くことが出来た。1等と2等を。
    こういう時のくじ運の良さを笑うとチケットの封筒をふたつ受け取り、その場を離れた。





    翌日。クラスの違うボク達は人通りの少ない中庭のベンチで弁当を広げていた。

    「商店街の福引き?」
    「うん、古書店で探していた本を見つけて購入したときに貰ったんだよ」

    福引きの係の人から貰った封筒を2つ、彼に渡した。
    1等はサンシャインリゾートのペア宿泊券。
    2等はその近隣に最近できたばかりの水族館のペア入場券だ。

    「こういうのってカップルとか夫婦限定なんじゃないのか?」
    「宿泊券の方はそうかもしれないけど水族館の方はほら」
    「あー、お友達同士でもどうぞって書いてあるな」
    「距離はあるけどなんとか日帰り出来そうな場所だし、宿泊券はボクらで使えなかったらキミの両親にでもあげてよ」

    ウチの親は受け取らないだろうからさといい添えたその言葉をボクの手を掴むことで拓海クンが遮った。
    本当、お人好しだな。嬉しくなって身を寄せると弁当食えないだろと抗議された。仕方なく離れるとボクも自分で作ったバスケットを開く。所狭しと詰められた色彩りのサンドイッチを欲しそうに眺めてくる彼の口に1つ押し込むと代わりにとばかりに彼の弁当箱から卵焼きを奪う。
    甘く味付けされているこの卵焼きは拓海クンが絶賛してる通り美味しいと思う。

    「行くとしたら週末か?」
    「そうだね今週は連休で塾もないし。丁度いいかも」

    ナイトラインナップも見たかったから本当は泊まりで滞在出来ればいいけど高校生のボクらだけで泊めてもらえるかも分からない。期待半分、帰宅の段取りを考えるのも半分。頭に終電までのルートを浮かべて待ち合わせの時間を告げる。

    「えー、オレ起きれるかな」
    「起きてなかったらボクが起こしに来てあげるよ」
    「本当にやりかねないな、うう、目覚ましかけるよ」

    拓海クンの口にふたつ目のサンドイッチを押し込むと残った唐揚げを摘み、今日の昼食は終了した。
    楽しみに取っておいたのにと泣かれたが今度作ってくるといったら途端に機嫌が良くなった。餌付けは順調に機能してるようだ。さすがに当日は現地の食事が食べたいだろうから弁当は作っていかないが本当は学校のお昼だってふたつ持ってきても構わないと思っている。
    ただ、ご両親と仲が良い拓海クンの食事を作る貴重な機会を奪ってはといつも堪えている。
    そのうち、彼を構成する全てをボクが担うことになるのだから、それまでは。







    ◆◇

    当日、駅前広場で拓海クンを待っていた。
    早朝7時という学校に登校するより早い時間での待ち合わせだったのて心配していたのだが、眠い瞼を擦りながら5分遅れくらいで彼は現れた。
    それぐらいは許容の範囲内なので事前買っておいた切符を渡す。こんな早い時間に待ち合わせにしたのは片道2時間の距離もそうだが宿泊が可能か念の為確認するためにあった。夜間ライトアップが開始されるのは19時から終電は21時。水族館から駅まで距離があるからどんなに頑張っても1時間半くらいしか留まれない。ならば見て回るコースを夜間見たいものを後回しにして効率よく回る必要がある。
    宿泊できるなら閉館までいても問題ないから回るコースは拓海クンに任せようと思っていた。
    それを確認するためにも事前にフロントに確認しておきたかったのだ。
    どちらにしても帰りは遅くなるので拓海クンの家には事前にボクの家に泊まると伝えている。一人暮らしのボクの家に拓海クンが押しかけるのはままあることだからなにも疑わず優しい拓海クンの母親は送り出してくれた。
    駅弁でもよかったけどさすがに開いてないかと思って使い捨ての容器におにぎりを作って持ってきていた。
    拓海クンに差し出すと嬉しそうに笑うから本当にずるい……
    拓海クンの好物が具に詰まったおにぎりが無くなる頃には彼は船を漕いでいてボクの肩に凭れるようにしてバランスを取らせた。
    (気持ちよさそうに寝て……ボクがなにかしたらとか思わないだろうか)
    鼻を摘んでやると一瞬反応して彼はまた眠ってしまった。
    それに静かにため息を吐き、持ち込んだ文庫本を広げる。
    いつかお前にやらないといけないと思ったといって差し出された押し花の栞を読みかけのページからズラし読書を開始すると案外早く時間が進んだらしい。いつの間にか起きていた拓海クンに肩を揺らされる。
    並んで降りると季節外れのビーチを雄大に構えたリゾートが現れた。

    「え?結構デカイな」
    「くじ引きの特賞になっているホテルだしね」

    フロントにチケットを見せるとやはり未成年者では使えないということだった。
    ただ、食事くらいは構わないということだったので水族館の開館までの暇つぶしに使わせて貰うことにした。
    朝食を食べたばかりなのにホイップが過剰に乗ったパンケーキを食べている拓海クンに呆れながらコーヒーを口に含む。さすがホテルのレストラン。深みのある味はとても好ましかった。
    好意に礼をいい、水族館に向かうとシーズンオフであることとオープンしてから多少日付が空いていたからか早朝は来場者が少なかった。
    持ってきていたチケットを係員に手渡すと中に通された。
    大ホールの右側は土産物売り場。2階はショーのあるプールエリアと見出しが出ていた。時間が決まっているショーから見ようと決めていたので拓海クンに行こうと声をかけるために振り返ると壁面を覆う巨大な水槽をじっと見つめている彼を見つけた。その本当に楽しそうな表情を見て、声を掛けるのをやめて隣に並んで水槽を見てみることにした。

    「昔、こうやってさ、水槽を見てた気がするんだ。食堂みたいな場所でさ」
    「なにそれ?食べるための魚をその水槽で飼育してたってこと?」
    「さあ、でもその魚が可愛くて名前を付けてたら誰かにそう呼んでるのバレて……あれ?」
    「どうしたの?」
    「ん、なんでもない。どっか行くんだろ?」

    じゃあな魚美と小さく声を掛けて、彼は水槽から離れた。
    「魚美って」
    「いいだろ、別に」

    拗ねたように先にいく彼を追いかけながらまた水槽に目線を向ける。その内の1匹が忘れないでと跳ねたように見えた。


    無事イルカショーが開始される時間に間に合うことが出来たようだ。水に濡れないギリギリの位置を勝ち取り並んで座ると拓海クンは身を乗り出すようにワクワクしていた。
    海にいる生物をこのプールに縛りつけて芸を仕込む。その行為自体を人間の業原だと思った日もあったけど……
    隣に目を輝かせている愛しい人がいる。可愛いと声をあげている拓海クンを喜ばせることが出来るものなら少しはこういった悪趣味な行事に付き合ってみるのも悪くないと思った。目の前のイルカが跳ねて水を浴びせてくる。かからないと聞いていた位置だったのにちょっと水が掛かってしまった。それなのに拓海クンが楽しそうだからボクも釣られて笑ってしまった。

    次はペンギンのエリアに来た。
    ひょこひょこと歩くペンギンを楽しそう眺めている拓海クンを横目に看板を探してルートを確認する。
    ライトアップされる海中トンネルは最後にする予定だからサメなどの巨大魚が展示されている水槽エリアに行く予定だ。でも、丁度時間もいいしお昼にすることにした。

    「拓海クン、テラスに行こうよ」
    「テラス?」
    「フードコートがあるんだ。お昼はそこにしよ」

    そう声をかけると名残惜しげにペンギンから離れるとこちらに来た。「そういえば腹減ったな」
    その声とともにに鳴る拓海クンのお腹の音にふふっと笑うとテラスに移動した。
    このくらいの年頃の男子生徒と同じように拓海クンもラーメンとかカレーが好きなのだけどボクが嫌いだから普段は合わせてくれている。
    その反動かこういう自由にメニューを選べる場所に行くとそういったものを食べる。
    こういう時は正面に座るのではなく隣合って座る。
    お互いに食べ終わると内覧エリアに戻った。
    1面張り巡らされた薄暗い水槽に深海の魚が泳ぐ。
    大きいものから小さいものまで自由に泳ぐその姿に拓海クンがまた感嘆の声をあげる。もしかしたらこういった場所に連れて行って欲しいという我儘を両親にも言えてなかったのかもしれない。
    ボクもだけれど小さい頃から両親のことを他人のように感じていて頼るという意識が向かなかった。
    今でこそ会話をするまでには改善しているけれど、拓海クンもそうだったのかもしれない。

    「ありがとな、カルアと見た図鑑でくらいしかおさか…魚なんてみたことなかったから嬉しいよ」

    雄大に泳ぐ大魚や小魚を見て顔をほころばせる彼を見て連れてきてよかったと思った。
    こうして連れてこられたのが自分でよかったとも思った。

    「眺められるためにここにいれられてるコイツらを見てると思うところもあるけど」
    「それは…まあ」
    「でも、綺麗だし。可愛い。うん、鑑賞してくださいというならしっかり見届けよう」

    そのまま進路にそって進む。
    サメが通りかかると怯え、小魚が寄ってくると水槽に触れない程度に指を突き出す。そうして楽しそうに笑う拓海クンを見てる方が楽しかった。
    お前も魚見ろよと言われたので視線を上げるとエイが頭上を泳いでいくところだった。
    どうやら前後の水槽はパネルで閉ざされているだけで繋がっていて魚達は行き来出来るようだった。
    狭い水槽のみでは息が詰まるだろうからいい仕掛けだと思う。
    ふれあいコーナーを抜けるとそろそろ19時なりそうな時間だった。思いの外ふれあいコーナーで時間を潰してしまったが丁度良かったかもしれない。

    「拓海クン、最後の場所に行くよ」
    「もう終わりかぁ、結構大きい水族館だったよな」
    「今度はリゾートを使えるタイミングで泊まりで来たいよね」
    「…そうだな」

    珍しく乗り気な拓海クンの手を引き、目玉の海底トンネルに入った。1面水槽で覆われたトンネル状の通路は謳い文句の通り水中を通っているように思わせる。
    それが館内のライトを落として簡易照明だけでライトアップされている。光を当てると色が変わるクラゲ。
    明るいと出てこない深海魚。
    神秘的な空間は確かにこれを目的に訪れるものがいるのがわかるくらい綺麗だった。

    「すごいな」
    「うん」

    海の神秘を詰め込んだその空間にボクもつい感嘆な声が出た。いいものが見れたと思う。
    でも時間は限られている。水槽に張り付いてみたいだろう拓海クンには悪いけれどここのエリアはかなり長めに取られていた。ちょっとずつでも移動しながらじゃないと時間内に見終わることは難しそうだ。
    そう告げると残念そうにしていたがわかったといって拓海クンがボクの手を取った。周りが暗いから問題ないだろうと思ったのかもしれない。腕にしがみつかれて拓海クンの体温が半身に触れる。ボク達は恋人同士がするようなことが普段できない。人目があるのは勿論だけど拓海クンが気にしてしまうからだ。
    だからこうして暗かったりふたりだけの空間になったら甘えてくる。
    この特別な瞬間がボクは好きだった。
    トンネルを抜け、クラゲの展示エリアに移動すると拓海クンがそっと離れた。それを寂しく思うが時間がない。クラゲの水槽をみることにした。

    「この水槽……」
    「ん?」
    「みんなみたいだ」

    言われて覗くとそこには取り分け同級生の中で親しい数名のイメージカラーに光るクラゲが浮いていた。

    「あそこでくっついてるの今馬と過子みたいだな」
    「あっちの触手をふにゃふにゃ動かして他の個体を探ろうとしてるの歪クンみたいだね」
    「おい、確かにとは思ったがやめてやれ」

    そういって並んで見ていると奥に並ぶ4匹のクラゲが目に入った。水色、赤、薄桃の2匹のクラゲが仲良く寄り添ってふよふよ浮いていた。ああ、そこでは一緒にいることが許されたんだな。そう思うと泣きたくなった。


    いい時間になったので水族館を後にして駅へ向かう。
    今日は2食外食だったので夕飯くらいは家で食べようと朝話したからだ。
    並んで列車に乗っていると「お前の家に帰る前にうちに寄っていいか?」
    「え?なんで」
    隣に並んだ彼を見ると頬を染めて離れ難いという視線でこちらを見ていた。
    「このチケットを渡したら、もう少しお前の家に泊まれるだろ」
    そういって笑った彼をベットに沈めたとしても責められる謂れは無いはずだ。
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