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    gomat002

    とりあえずかいたものをぶちこもうとしています。

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    どっかに出したような気もする書きかけのロイソVSリド寮長とトレセン。ちなみに男装監督生。

    ##ついすて♀

     深く黒い青空に、絵に描いたように真っ白な雲が浮いていた午後。ツイステッドワンダーランド、ナイトレイブンカレッジ、本日の放課後の中庭はやけに静かだった。

     ぴるるっと小鳥の声が鮮明に聞こえるこの日、オンボロ寮の監督生であるユウは、ベンチで『異世界への行き方』という明らかにペテン師が書いたような題名と装丁の本をバカ真面目に読みながら、こっくりと寝てしまっていた。

     しかし、それを見咎めるものもいないので、誰にも邪魔をされることなく監督生はすやすやと寝息を立てていた。彼の夜空の色をした髪は少し荒れていて、風が吹く度にぱさと揺れている。目を閉じる姿は、男子高校生というよりも愛らしい少女の姿に見える。

     実際に、監督生は女の子なのだが。

     このことを学園で知っているのは、学園長と同じ寮に住むグリムと同じくそこに住まう三人のゴースト達だけ。魔法士の素質を一切も感じられない、ただ普通の女の子である彼女がどうして闇の鏡に選ばれ、切り捨てられてしまったのかは今となっては分からないが、監督生は、ユウはまだここにいた。

    「もしもし」

     ふと、ユウに声がかかった。優しい、穏やかな男の声だった。

    「おーい、もしもーし」

     ただ穏やかすぎる声量であったため、監督生の眠りは一向に醒めない。モストロラウンジでバイトをしたり、サムの店で在庫の整理のお手伝いをしたり、先生の授業の手伝いをした疲労の関係もあるのか、やっぱり彼女はすやすやと眠ったままだった。

    「まいったなぁ……」

     声をかけた男は、自分の輝く金色の髪をワシワシと雑にかいた。男は『彼』の目の前にしゃがみ、困ったようにその寝顔を眺めみた。ずいぶんと愛らしい顔立ちをしているなと、男はぼんやりと思った。

    「気持ちよさそうだ……」

     白く輝く制服を着たその男は、この学園の人間ではない。ロイヤルソードアカデミーに在学中の3年生、ジョン・ベール。はっきりとした顔立ちと金色の髪、輝く青い瞳はまるで絵本の王子様のようだった。そして、ここナイトレイブンカレッジではやはり嫌われるようなルックスでもある。

     ジョンは、ユウの膝の上に開かれた本をひょいと取ってその隣に座る。この少年が何を読んでいるのか気になったからだ。すると、予想と反してペテン師が書くような本を読んでいて、思わずフッと吹き出した。面白い子だな。と、思いながら、ジョンはその本を軽く読み流しながら、しばらくこの子が起きるのを待つことにした。




     そして、数十分後。ユウは、体がちょっとだけ軋むのを感じて身じろぎをした。頭がはっきりしていくのと同時にあぁ、寝てしまったんだと思い出し。膝に置いていた本はどこだろうときょろとあたりを見回すと、見つけたのは目が痛くなるほどの白。

    「あ、起きた?」

     そして目が痛くなるほどの美形。現状を把握できず、ユウはただただ困惑した。

    「はい、返すよ」
    「え、あ、はい。ありがとうございます……?」

     自分が読んでいた本をなぜこの人が持っていたのかは分からない。そして、なぜここにいるのかも、なぜここに真っ白の制服を着ている人がいるかも分からない。現状を全く理解できず、この目の前の王子様(仮)に説明を求めようと、視線を合わせ見るが、ご本人はなぜかとっても機嫌よさそうにニコニコしている。

     性別がバレた?いやいやまさか。ユウは、ぐるぐる思考から出られなくなっていた。

    「君、面白いね」
    「え」

     思わず、素の声が出てしまい。これはいけないと咳払いをして続けた。

    「僕の、どこが面白いんですか」
    「いや、すまない。気を悪くさせた?さっきから表情がくるくる変わるから、何考えてるんだろうって思ってた」

     そういうと美形はぐいとユウに顔を近づけた。

    「ねぇ、君。名前は?」
    「え、あの」
    「どこの寮にいるの?腕章は……付けてないみたいだけど、何年生?」
    「いやちょっと、」
    「君と友達になりたいんだ。ねぇ、名前教えてよ」

     気の良い笑顔だが思い切りが良すぎて、ユウはぐいと身を引く。エペルのように女の子のような見た目で普通の男子高校生だったならいざ知らず、ユウは本当に普通の女の子だ。
     ユウは返却された本を盾のようにさっと美形の顔の前に割り込ませ、「いやです!」と思わず叫んだ。

    「自分から!誰かも言わない人とは!お友達に!なりません!!」

     もともと、人見知りするユウは警戒心マックスでぐいぐいと本で男から距離を持つ。その本をぐいと下に下げ、ジョンはすまなそうに眉を下げた。

    「すまない。勝手に隣に座ったことも、先に名乗らなかったのも謝るよ。おれは、ジョン。ジョン・ベール。ロイヤルソードアカデミー在学中の3年生」
    「……なんでロイヤルソードの人がここにいるんですか」
    「君、知らないの?今日は、ここでうちとマジフトの練習試合があるんだよ。みんなそれを見にコロシアムに行ってる」
    「だから誰もいなかったんだ……」
    「ここにいるからマジフトに興味がない子なのかと思ってた」
    「でも、じゃあなぜあなたはここにいるんですか」

     ユウが鋭い目でジョンを睨みつけると、また困ったような顔を見せた。ちなみに本当に困っているような感じではないのでユウは少しイラッとした。

    「試合に出る予定ではあったんだけどね。後輩に試合に出てもらおうと思って抜けてきたんだ」
    「……それ失踪っていうのでは?」
    「有名なナイトレイブンカレッジってのもちょっと探検してみたかったしちょうどいいかなって思ったんだよ」

     なんだか軽薄な男の人だな。
     ぽつりとユウは思った。彼女は、この世界に来てこのようなまでに軽薄な男は見たことがなかった。似た軽薄さはケイトだが、明らかな慣れとカリムのような天然さも兼ね備えている。あまり一緒にいてはいけないかもしれないとユウの発展途上の女のカンが告げていた。

    「あの、じゃあ僕このへんで……」

     ベンチから立ち上がろうとすると、ジョンは軽くぐいとユウの腕を掴みベンチへ座らせた。

    「おっと、どこにいくの?」
    「いやあの……」
    「ねぇ、俺は君のことも名前も教えてもらってないよ」

     きらきらとしたスカイブルーの瞳がユウを見つめる。ここではあまり見ない顔なので、じわじわとユウは視線を逸らした。

    「あー……」
    「ほら、君の番。君のこと教えてよ」

     逃げ道がない。ユウは観念して、必要なことを話して早めに切り上げようとした時だった。

    「ユウ」

     心地の良い、聴き慣れた低い声が聞こえた。振り向けば、トレイとリドルがそこに立っていた。

    「あっ!リドル先輩!トレイ先輩!」

     思わず笑顔で駆け寄ろうとしたが、ジョンはまだ手首をくんと掴んだままだった。

    「ちょっとちょっと」
    「あぁ……」

     大好きな先輩がたを目の前に、ユウはこの状況をすっかり忘れていた。愉快そうに彼女を見るジョンはというと、背筋にひんやりとしたものを感じている。

     目の前に現れたナイトレイブンカレッジ生がすごい目でこちらを睨んでいるからだ。赤い髪の生徒はあからさまであるし、メガネをかけている生徒は笑ってはいるがそのメガネの奥の瞳までは笑ってはいない。

    「……こんなところでロイヤルソードアカデミー生が何をしているんだい?」

     ゆっくりと近づいてきたリドルの威圧する言葉に、ジョンは眉を顰めた。

    「見ての通り友達づくりですよ」
    「へぇ、他の生徒はみんなコロシアムにいるっていうのに、練習試合とはいえ、うちも舐められたもんだな」

     トレイが、少し意地悪な顔をしていった。

    「いえね、後輩にも練習試合に参加してもらいたくってね。いつまでもベンチで試合を見ているだけなんてつまらないでしょう?」
    「それはそれとして、ここで油を売っているなんてね。引率の先生に報告した方がいいだろうか」

     彼らの言葉に、部が悪くなってきたな。と、ジョンはため息をつく。

    「彼を離してくれるね」

     リドルの拒否は許さないという態度にジョンは、熟考したのち観念し、ユウの手を離した。

    「ユウ、こちらにおいで」

     その優しい声の指示に従い、ユウはリドルのそばに駆け寄る。可愛いい後輩を守るようにリドルはもう一歩前に出た。

    「次に僕の後輩に手を出せば容赦はしないよ」
    「……はいはい。わかりましたよ」

     興醒めといったように、ジョンは立ち上がりコロシアムの方へ足を進めた。去り際に「ユウ、またな」と一言残し、そのまま何もすることなくその場を後にすると、リドルはユウの手を取り、掴まれていた手首を確認した。

    「大丈夫かい?腫れたりはしていないようだけど……他に何もされてはいないかい?」
    「はい。先輩方本当にありがとうございます」
    「またお前はなんでこんなとこにいたんだ?」
    「裏庭に人もいないし、いい天気だったんで……」

     無防備でベンチで居眠りしていると、隣にあの人がいました。と、全くもって危機管理能力が感じられないことの経緯に、リドルがこんっとユウの額をノックした。

    「君はもうちょっとしっかりするべきだね。こんなところで居眠りするものではないし、第一」
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