不足したコトバ元々おしゃべりというものは得意ではない。特に彼女の前ではコトバというものを出す事が苦手になってしまう。
心臓がバクバクとうるさくなって、妙に体が熱くなって、変に焦る。
「あ、こんにちはヤスくん」
弁当配達の帰りに彼女とばったり出会う。
「……うっす」
桃色がかった白い髪が真昼の陽光で眩しく見え、やはりどぎまぎと胸を鳴らしてしまった。淡白な挨拶しか出来ない自分が恨めしい。
彼女と打ち解けられる“魔法のアイコトバ”はないかと、今日も好きという感情の中を溺れながら探している。
(おわり)