放課後の練習を終えた侑は、体育館外の水道で立ち尽くしていた。
『何でバレー続けてるほうが「成功者」みたいな認識なん?』
「八十歳なった時、俺より幸せやったって自信持って言えたんなら、そん時もっかい俺をバカにせえや」
言い合った言葉を反芻して、顔に思いっきり水をかける。二月の水道水はひどく冷たくて顔が凍りそうだったけれど、侑はしばらくぽたぽたと水を滴らせたまま考えていた。
ふと隣に誰か来た気配がする。そいつは五のことなんか気にかけず水を飲んで顔を軽く洗い、立ち去ろうとする。
「おい、なんか言えや!」
「えっ、やだよ面倒くさい」
答えたのは角名だった。その表情の薄い顔面を睨んでいると、
「先に顔拭きなよ」
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