阪急の駅を降りて十数分、坂道と階段を登っていくと、北の通う大学がある。キャンパス内には、歴史のありそうな立派な造りの講堂や、近未来感のある研究棟、他にもたくさんの建物が建っている。侑は何もかもが珍しくて、きょろきょろとあたりを見回していた。
「口開いとるで」
隣でキャンパスを案内してくれていた北がくすりとおかしそうに笑う。侑は慌てて口を閉じた。
『北さんの大学見てみたい』
という侑の希望を、北は二つ返事で引き受けた。侑は大学自体に興味があるというよりは、単純に北に会いたかったのだけど。一通り見て回ってから、
「そんで、ここが俺のお気に入りの場所」
と言って案内してくれたのが、キャンパスの端のほうにある記念会館だった。ガラス張りの建物の下の空間が、テラスのように開けていて、街と海を一望できる。侑と北は景色を見渡せる階段に座って、途中で買ってきたペットボトルのドリンクを開けた。
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