依存癖「…あんたは!なんでいつもいつもこう考えなしに動くんだ!」
「はうぅ……」
常夜灯だけが付いた薄暗いカルデアの廊下をずるずると、テオに引きずられながら進む最中。
先程までのお祭り騒ぎが嘘のように静まり返った廊下は、カルデアの立地も相待って余計に寒々しく感じます。
「ちょっとだけ、…小粋なジョークのつもりだったんですよ?ほんとに…」
ゴッホはこう、せっかくのパーティだし、文字通り花が添えてあったら面白いかなーって思っただけでして。
それが思ったよりてんやわんやになってしまい結果として捕縛されテオに回収されてしまっているわけですが。
「あんたのジョークはつまらないんだよ本質的に」
うう、テオ、辛辣。
でもゴッホは自省できる偉いサーヴァントなので、こういう時はなんていうべきか知っています!
「…て、テオ…ご迷惑おかけしました…」
おそるおそる。
返ってくるのは叱責か皮肉か、どっちにしろゴッホにクリティカルな言葉を覚悟し、反省の意を表明します。
いざ!
「……はぁ…」
「…いいよもう、兄さんに迷惑かけられるのは慣れてるし」
あれ?覚悟していたより簡素な返事…というかこれ、一周回って呆れられています⁈
ま、まずいです!不肖このゴッホ、怒られるのには慣れていますが見限られるのはかなり精神的ダメージが!
「…でも」
「…心配させられるのは慣れられないからやめてよね」
「……疲れる…」
……………唖然。です。
ゴッホはテオにはかなり怒られ慣れているのですが。
こういう、なんというか…弱っている様子は、お兄ちゃんとして、ちょっと、いえだいぶ、心苦しく感じるものが…といいますか、しおらしいテオ、ちょっと新鮮。
とはいえテオがこんなしなしなになってしまっている主要因はゴッホの軽率・迂闊・軽挙妄動な行為ですので、精一杯のごめんなさいの感情を込めて頭を撫でて慰めてあげます。
なでなで。
「…あんた反省してないだろ」
「はう⁈そんなことないですよ⁈で、でも、テオがションボリしてたから、慰めなくちゃと思いましてですね?」
「だれのせいだと思ってるんだよ」
「あう……」
「…とにかく、あんまり変なことするなよ、もう」
ふい、と視線を逸らして。
それを最後に、テオは黙ってしまいました。
ゴッホはもう強引に引きずられるわけでもなく、ただ手を引かれて。
ふたりで借りている部屋のドアは目前まで迫っています。
(…心配、)
心配、させるのは。
ゴッホも慣れていないかもしれません。
だって、…だって、だって。
こんなこと言ったらきっとテオはすごく怒るか、下手したら泣かせてしまうかもしれないから、言わないですけど。
いつだって、どんな時にだって、
それこそ最期の時だって。
”僕”は君が心配してくれることが、いちばん嬉しかったんだから。