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    shiro_pigeon

    @shiro_pigeon
    五伏・乙棘小説を書いています。
    物書きの人。アイコンはメジカ様から頂きました♪

    pixiv→ https://www.pixiv.net/users/64940283

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    shiro_pigeon

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    乙骨憂太生誕祭2022記念の
    乙棘小説です。

    デルフィニウムの花はギリシャ神話で
    心優しい青年の生まれ変わりの物語が
    あるそうです。

    読んで頂き、ありがとうございます!

    #乙棘
    OtToge
    #乙骨憂太生誕祭2022
    #乙骨憂太誕生祭2022
    eboneYutaBirthFestival2022

    デルフィニウム「ツナマヨ?」
    「え?僕の欲しい物?」
    「しゃけ、しゃけ!」
    「うーん…あ、もうすぐ洗剤が無くなりそうなんだ」
    「おかか…」

    そう言う事じゃないと、
    狗巻君が首を横に振る。

    「違うの?でも…思い浮かばないや」
    「…こんぶ」

    僕の言葉にガッカリした雰囲気。
    本当にどうしたのかな?

    僕達は付き合っている。
    二年生に上がるタイミングで、
    僕から狗巻君に告白をした。
    里香ちゃん以外に好きな人が出来るなんて、
    奇跡だと思う。
    そう…
    狗巻君は僕にとって【奇跡】なんだ。

    ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

    それから一ヶ月後…
    任務が続いてやっと高専に帰れる僕は、
    狗巻君に会いたくてLIMEをした。

    【今日、帰るよ。部屋に寄って良い?】

    絶対に「良いよ」って
    返信してくれると思ったのに…

    【お疲れ様。今日は疲れてるからダメ】

    まさかの返信にショック過ぎて、
    頭を鈍器で殴られたような衝撃。
    狗巻君に断られるなんて初めてだ。

    なんで?もしかして具合が悪いとか?
    それとも、会えない日が続いて、
    僕に愛想を尽かしたとか?
    ま、まさか…
    他に好きな人が出来たとか!?

    考えれば考える程、
    頭の中はネガティブで埋め尽くされた。

    次の日の朝…

    「おはよう狗巻君」
    「高菜〜」

    教室で会った狗巻君は、
    いつもと変わらない。
    昨日は本当に疲れていただけ?

    「ねぇ、狗巻君…放課後、久しぶりに遊びに行かない?」
    「おかか」
    「…え」
    「すじこ、明太子」
    「用事があるって事?」
    「しゃけ!」
    「…。」

    爽やかな笑顔で肯定されて、
    頭が真っ白になった。

    「憂太、今日は」
    「やめとけパンダ」

    パンダ君と真希さんが
    何か言っているけれど、
    それ所じゃない…。
    狗巻君の《用事》って何だろう。
    気になり過ぎて、
    体術の稽古も座学の授業も、
    集中が出来なかった。

    ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

    放課後

    ダメだと思いつつ、
    狗巻君の後をこっそり尾行する。

    高専を出た狗巻君は電車に乗って、
    到着したのは新宿だった。

    だれだれ?誰と待ち合わせ?

    狗巻君は更に有名なデパートの中に入り、
    地下へと降りて行く。

    で、デパ地下!?
    高級なオニギリでも買うのだろうか…。
    そっと確認すると、
    高級青果店で高級キャベツを二玉も買っている。
    店員さんに
    「ツナツナ、高菜」
    と、高菜では無くキャベツを指差す姿…
    可愛すぎる。
    それから、他の店で
    惣菜を二、三個買ってデパートを出た。

    その後、向かった先は…

    「お、お花屋さん?」

    狗巻君は都会に似合った
    オシャレなお花屋さんに入り、
    店員さんと何やら会話をしている。

    「ツナマヨ…狗巻」
    「あ、予約の狗巻様ですね」
    「しゃけ」

    予約…?
    お花の予約?狗巻君が?
    お花、好きだっけ?

    確かめるように
    目を凝らした僕の前で、
    狗巻君は店員さんから
    大きな花束を受け取っていた。
    青と水色の可愛らしい花束…

    あれは…プレゼントだ。
    狗巻君…好きな女の子が出来たんだ。

    絶望感と虚無感で目の前が
    真っ暗になった僕は、
    そのまま一人…立ち尽くした。

    ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

    【今から部屋に来れる?】

    どうやって帰ったのか覚えていない。
    気付いたらベッドに横になっていた。
    真っ暗で肌寒い部屋、
    僕の心のようだ。
    いつの間にか届いていた
    狗巻君からのLIMEを見て…

    「あぁ…別れ話か」

    気が遠くなる。

    見なかった振りをして、
    目を瞑っていると…

    ピロン♪

    また電子音

    【寝てる?それとも任務?】

    狗巻君…
    そんなに今日話したいの?
    時間を確認したら23時30分過ぎ。
    見なかった振りをして、
    明日…返信をしよう。

    ピロン♪
    ピロン♪

    今度はパンダ君と真希さんから…

    【寝てるのかー?棘が心配してるぞー&おたおめ】
    【私らが祝わなかったから拗ねてんのか?明日うぜーくらい祝ってやるから、今日は棘と一緒にいてやれよ】

    ん?おたおめ?…祝う?今日は…

    「あ!!!!」

    今日、何月何日!?
    いや、そうだよね、そうだよ!!
    僕って本当に…!!
    自分で自分に呆れながら、
    急いで部屋を飛び出した。

    ❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎

    「ごめん!狗巻君!!」

    狗巻君の部屋を開けると…

    「…おかか」

    口を膨らませた狗巻君が、
    ソファーに座っていた。

    「本当にごめんね!気付かなかったんだ…今日が」

    今日が3月7日って事に。
    3月7日は…僕の誕生日だ。
    あと、15分くらいで
    日付が変わってしまうけれど…。

    「ごめんね…」

    もう一度呟けば、
    狗巻君は薄紫の瞳をこちらに向けて、
    じっと見つめた後…

    「…しゃけ」

    小さく頷いた。
    …そして

    「たっかなー!!」

    急に明るい声を発したかと思えば、
    冷蔵庫から大量の塩キャベツを出して、
    目の前に置いた。
    あ…デパ地下で買ってたキャベツ二玉!

    「ツナ…明太子!」

    まだあるよ!と、
    お惣菜と…それから

    「手作り…ケーキ?」

    少し歪な白いショートケーキは、
    手作りだと直ぐに分かる。
    もしかして…
    昨日の夜に会えないと言われたのは、
    これを作っていたから?

    任務で忙しい合間に、
    少しずつ準備をしてくれていたの?
    僕の為に…

    ケーキの上に乗った手書きのプレート
    「Happy Birthday Yuta」
    …なんて愛しいんだろう。
    今まで食べたどんな誕生日ケーキよりも、
    特別に見える。

    「ゆーた、ゆーた」

    更に…名前を呼ばれて前を向くと、
    むせ返るような香りと共に、
    大きな花束を渡された。
    今日、お花屋さんで買っていた
    青と水色の可愛らしい花束…

    『え?僕の欲しい物?』
    『しゃけ、しゃけ!』
    『思い浮かばないや』
    『…こんぶ』

    一ヶ月前の会話を思い出す…。
    僕が欲しい物を言わないから、
    狗巻君なりに考えてくれた
    僕へのプレゼント…。
    花束にはカードが添えられていて、
    そこには…

    デルフィニウム
    《花言葉: あなたは幸福をふりまく》

    読んだ瞬間に涙が滲む。
    僕の心はとっくに限界を迎えて、
    思わず狗巻君を花束ごと抱きしめた。

    「…っ!すじこ?」
    「ありがとう…」

    不安に思ってごめん…
    疑ってごめん…
    君がどうしようも無いくらい
    優しいから、
    僕は君と離れていると不安になるんだ。
    君を…

    「一生大切にする」

    僕の言葉を聞いた狗巻君は、
    『?』という顔をした。
    多分、花束の事と
    勘違いしているんだ。
    「花は枯れてしまうのに、
    一生大切ってどう言う事?」ってさ。
    ふふっ…狗巻君らしい
    僕は心の中でこっそり微笑んで、

    「好きだよ」

    と耳元で囁いた。
    すると、狗巻君は僕の背中に腕を回して
    にっこりと笑う。

    「ツナマヨ」

    キスして良いよの合図。
    この花がいつか枯れてしまっても、
    僕らの気持ちはずっと枯れない…
    そうだろう?
    優しくて可愛くて大好きな恋人に、
    日付が変わるまで何度もキスをした。


    fin
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