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    shiro_pigeon

    @shiro_pigeon
    五伏・乙棘小説を書いています。
    物書きの人。アイコンはメジカ様から頂きました♪

    pixiv→ https://www.pixiv.net/users/64940283

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    shiro_pigeon

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    2022年5月21日に支部にUPした、
    Farmer's GOFUSHIの続編です。
    https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=17626272

    五条(35歳)✖️恵(22歳)
    牧場パロディ

    何でもOKな方のみ、お読み下さい🙇‍♀️

    #五伏
    fiveVolts

    story after that (Farmer's GOFUSHI)「だからさ、新宿にレストランをオープンしようと思って」

    牛に餌を与えながら言う五条さんに、
    首を傾げる。
    レストランのオーナーもするなんて、
    本当にやり手だと思うし、
    悩まずに初期費用を出せるくらい、
    お金持ちなんだな…と再確認した。

    「あ…恵ってば、ピンときて無いでしょ?」

    「え?…まぁ…すごいですね」

    「そうじゃなくて!」

    ん?これは真面目な話だな…。
    牛の搾乳を一旦止めて、
    五条さんと視線を合わせる。

    「何の話しですか?」

    「そのレストランに出すチーズや生クリームを、この牧場のミルクで作りたいって話し」

    あぁ…そう言うことか。
    自分で新しいビジネスに挑戦しつつ、
    この牧場の事もしっかり考えている。
    さすが五条さんだ。
    津美紀の結婚式が終わり、気付けば秋…。
    最近では、
    五条さんのアドバイスを素直に聞いて、
    バイトを雇ったり、
    牧場にカフェを併設したり、
    結婚式やガーデンパーティーに
    敷地の一部を貸したり…
    着実に良い方向に向かっている。

    「それで、今度はレストランにミルクを提供するって事ですか」

    「そう!【牧場直送のミルク】ってワードが決め手!」

    「わかりました」

    俺が頷くと、五条さんはにっこり微笑み、
    上機嫌に言葉を続ける。

    「それから、僕達のハネムーンはいつ行く?」

    「はぁ…またその話しですか?忙しいので無理です」

    「仕事熱心なのは素晴らしいけど、たまには僕の事も構ってよ〜」

    「…」

    確かに…それはそうかもしれない。
    一緒に牧場の仕事をしたり、
    五条さんが本職の仕事をしている姿を、
    見ているだけで満足していたが…
    この人は不満だったみたいだ。
    何だか申し訳なく感じる。

    『たまには恋人らしい事を』
    俺は最近買った牛の搾乳機を
    両手で持ちながら、
    顔を上げて瞳を閉じた。

    「え…恵、大丈夫?貧血?」

    「…」

    「どうしたの?」

    「…何でもないです」

    初めてのキスの催促は、
    伝わらずに失敗に終わった。
    …どうやら俺には、
    恋愛の勉強が必要なのかもしれない。

    ◾️◾️◾️◾️◾️

    それから、
    五条さんはレストランのオープンに向けて、
    忙しそうにしている。
    俺もレストランに提供するミルクの為に、
    牛を増やしたり、餌を変えてみたり、
    新鮮なまま配達する方法を模索したり…
    ハネムーンなんて考える暇がない程、
    目まぐるしい日々を送った。

    気付けば冬。
    その日、俺はオープン前の
    レストランを見るために、
    五条さんと車で新宿まで来ていた。

    「ここが…五条さんのレストラン」

    「そう!結構広いでしょう?」

    有名な商業施設の高層階。
    広々とした店内に、木の椅子とテーブル。
    所々に観葉植物が置いてあり、
    ボタニカルな雰囲気がある。
    大きな窓からは自然光が降り注ぎ、
    テラス席は都心とは思えない程、
    緑に囲まれていた。
    まるで、小さな農園のようだ。

    「すごいですね…」

    「春になればもっと緑が青々として、綺麗だよ」

    「へぇ、楽しみですね」

    「恵の牧場をイメージして作ったんだ」

    「っ…」

    何だか照れる。
    言葉が出て来ない俺を見て、
    五条さんは楽しそうに笑った後、
    テラス席で試食をさせてくれた。
    近くにストーブがあるおかげで、
    あまり寒くはない。
    料理はイタリアン。
    シャキシャキのサラダや、
    生パスタ…デザートのパンナコッタ。
    全て美味しかった。
    この料理に、
    自分が育てた牛のミルクが
    使われているのかと思うと、
    誇らしい気持ちになる。

    「どう?恵…美味しい?」

    「はい」

    「良かった…あのさ恵、この後「社長!」

    言葉の途中で、
    秘書の伊地知さんが五条さんを呼んだ。

    「はぁ?僕の大切な時間を遮って何?」

    「す、すみません社長…お電話がありまして」

    「下らない内容だったら殴るよ伊地知〜」

    「ひぃ」

    「恵、ちょっと待っててね」

    五条さんは不憫な伊地知さんを連れて、
    店の外へと出て行った。
    残された俺は食後のコーヒーを飲みながら、
    空を見上げる…。
    動物達は元気だろうか。

    「君が伏黒恵君?」

    呼ばれて振り返ると、髪の長い女性がいた。
    名前は確か…

    「家入さん?」

    「そう、私がこの店のマネージャーだ。よろしく」

    「…よろしくお願いします」

    確か五条さんと昔からの知り合いで、
    今回のレストランの経営も、
    二人で話し合って決めたとか。

    「五条と暮らしてるって?大変だろ?我儘で」

    「我儘ですね。でも、色々と手伝ってくれますよ」

    「へぇ…あいつも変わったな。前は女を取っ替え引っ替えで」

    「え」

    「あ…悪い。昔の話だから忘れてくれ」

    罰の悪そうな家入さんを見て、
    頭が真っ白になった。
    女を…取っ替え…引っ替え?

    家入さんと入れ違いで戻ってきた、
    五条さんの顔が見れない。
    今、自分はどんな表情をしているだろう?

    「恵?何かあった?」

    「別に…」

    「そう?なら、この後は夜景が見えるホテルに」

    「疲れてます…帰りたい」

    「えっ…あ、そうか…久しぶりの都心だもんね」

    気が付かなくてごめんね。なんて、
    優しく話す五条さんに罪悪感が芽生えた。
    昔の話しに戸惑っている自分が、
    女々しくて嫌になる。

    それから…真っ直ぐ自宅に戻り、
    風呂に入って軽食を食べた。
    まだ夜の九時…

    「もう、寝ますね」

    ベッドに横たわった俺を見て、
    五条さんも俺の隣に寝転ぶ。

    「ちょ、狭い」

    「恵…何だか元気無いね?」

    「…そんな事ないです」

    「あるでしょ〜?」

    五条さんが冗談っぽく言って、
    俺を抱きしめながら、顔をくっつけた。
    こめかみに触れる吐息が擽ったい。

    「ふふっ…やめて下さい」

    「あ、やっと笑った」

    「…本当に…何でも無いですから」

    「恵って、すぐに隠し事するじゃん?」

    拗ねた声を出しながら、
    頭や首筋にキスを落とされる。
    …あ、これって…

    「今日…しますか?」

    「んーん、しない」

    「何で?」

    「恵が疲れてるから」

    よしよしと背中を撫でられて、
    一気に眠気が押し寄せた。
    寒い冬の部屋で、
    二人分の体温があたたかい。
    瞼を閉じて眠る瞬間、
    『経験豊富なこの人に、
    満足してもらう方法を考えないと…』
    そんな事を思った。

    ◾️◾️◾️◾️◾️

    ついにレストランのオープンの日がきて、
    オープンパーティーも開かれたが、
    俺は行かなかった。
    人が沢山いる場所は苦手だ。
    五条さんは「恵らしい」と笑ったが、
    本当はそんな性格も、
    治すべきなのかもしれない。

    オープンから数日後…
    俺はこっそりレストランを
    覗いてみる事にした。
    五条さんに言えば、一緒に行くと
    言い出すだろうから内緒だ。
    だって、あの人…忙しいし。
    今日だって朝早くから会議だと言っていた。
    五条さんを見送ってから、
    電車に乗って新宿に向かう。
    一人で都心に行くのは久しぶり。

    「南口ってどこだよ…」

    地下鉄でも無いのに、
    改札が下にあるのは何故だ?
    とりあえず、
    適当な階段を登って外に出て…

    「ここは…何口なんだ?」

    レストランは駅近…南口…
    では、ここは…?
    まぁ…とりあえず歩くか。
    考えるのが面倒臭くなったので、
    とりあえず真っ直ぐ歩いてみた。
    すると見えてきたのは、
    テレビで見た事があるアーケード。

    「…歌舞伎町」

    どうやら俺は、
    真っ昼間の新宿で迷子になったらしい。
    スマホを取り出して、MAPを開く。
    もっと早く調べれば良かった。

    「お兄さんっ!格好良いね!」

    急に話しかけられて顔を上げると、
    黒いスーツを着たチャラそうな男。

    「なんすか?」

    「仕事探してない?良い仕事を紹介するよ!」

    怪しい奴に絡まれた。
    仕事ならある。しかも天職だ。
    俺は目の前の男を無視して、
    歩き出そうとした…が

    「金にもなるし!恋愛のスキルも磨けるよ!」

    「…恋愛の?」

    「お!恋愛に興味あり?やっぱり男だねぇ!」

    「スキルって?その仕事をしたら、恋愛のどんなスキルが上がるんですか?」

    「そりゃあ、話術とか…スキンシップもそうだし、希望すればSEXだって」

    「…」

    「恋人いる?内緒にしておけば大丈夫!飢えてる女の子と、ちょっと遊ぶだけだから」

    「女の子?…いや、俺の恋人は」

    「あ、お兄さんそっち!?じゃあ男のデリヘルも」

    ん?何か会話がおかしな方向に…
    これってもしかして…やばい仕事か?

    「ほら、店がすぐそこだから」

    「やめろっ」

    手を掴まれそうになって、
    抵抗しようとした瞬間。

    「何やってるの?…恵」

    馴染みの声が聞こえた。
    普通なら安堵する所だろう。
    しかし俺の身体は強張った。
    何故なら…

    「…五条さん?」

    「何してるか聞いてるんだけど」

    五条さんの声も視線も冷たかったから。
    …怒っている。
    こんなに怒っている姿を見るのは、
    初めてかもしれない。
    五条さんは俺の腕を強く掴むと、
    呆気に取られる黒いスーツの男を置いて、
    歩き出した。

    「五条さん…痛い」

    掴まれた腕が痛くて抗議しても、
    五条さんは離してくれず、
    無言で歩いている。
    ようやく立ち止まった先は小さなビル。
    寂れた外観…
    安っぽい看板に安っぽい文字。
    俺でも分かる。ここはラブホテルだ。
    何も言わずに俺を引っ張りながら、
    中に入ろうとする五条さんに対して、
    流石に声を荒げる。

    「ちょ、何してるんですか!!」

    「何って…ラブホだよ?する事は一つでしょ」

    やっと口を開いた五条さんは、
    やっぱり冷たい。

    「何で…そんな、急に…」

    「急じゃないよ、そんな仕事を紹介されてたじゃん」

    「ち、違う!あれは勘違いして」

    「勘違いって何?でも、立ち止まって話を聞いたって事は、興味があるんだよね?」

    「…」

    今更、自分の行いが恥ずかしくなった。
    『恋愛のスキルが上がる』
    どう考えたって怪しい話し。
    信じる方がおかしい。
    自覚した途端に顔を青くした俺を見て、
    五条さんが溜息を吐く。

    「最愛の人が内緒で歓楽街にいる所を…偶然見かけた男の気持ち、分かる?」

    「…五条さん」

    「しかも、分っかりやすい怪しい男と、真剣に会話している姿を見て…どんな気持ちになるか…分かる?」

    「…ごめんなさい」

    冷静の中に、
    少しの悲しみを含んだ五条さんの声…
    胸がギュッと潰されるような罪悪感。
    俺は素直に謝って、俯いた。
    寒空の中…心まで冷たくなっていく。

    「恵…」

    そんな俺を見た五条さんが、
    小さく名前を呼んだ。
    ゆっくりと顔を上げる。
    そこにはもう、冷たい表情は無かった。

    「…家に帰ろう」

    いつもと同じように…
    優しい表情の五条さんが呟く。
    …家に帰ろう
    自分も同じ気持ちだと伝えたくて、
    手を握りながら頷いた。

    ◾️◾️◾️◾️◾️

    帰りの車の中は静かで、
    時折、
    五条さんが話題を振ってくれたけれど、
    上手く返せなかった。

    家に着くと、もう夕暮れ時…
    牛達に餌を与えて干草の掃除をしたら、
    いつの間にか辺りは真っ暗になっていた。
    夕飯は何にしよう…
    冷蔵庫には肉と玉ねぎがあったな…
    なんて考えていると…

    「寒いね…すっかり冬って感じ」

    白い息を吐きながら五条さんが言った。
    そりゃあ冬ですからね。
    と返そうとしたら…

    「本格的に焚き火の季節だね」

    微笑む顔を見て、あ…と思う。
    焚き火のお誘いだ。
    さっきまでの憂鬱な気分が晴れていく。

    「じゃあ、夕飯はバーベキューですね」

    そう微笑み返すと、
    五条さんは更に笑顔になった。

    ◾️◾️◾️◾️◾️

    牛のバラ肉と輪切りの玉ねぎを焼いて、
    味付けは塩胡椒。
    シンプルだけど美味しい。
    水筒に入れたコンソメスープも絶品だ。
    以前、五条さんが買ってくれた、
    お揃いのダウンジャケットを着ながら、
    焚き火をする…温かい。

    「恵って牛を飼ってるのに、お肉食べるよね」

    「畜産はやりませんが、肉は好きです。心から感謝して頂いています」

    「そんなギャップも好き」

    付き合ってから、こんな風に…
    自然と好きと言われる事が増えた。

    「何か…照れますね」

    「えー何それ、可愛い!ってかさ…」

    「はい」

    「何で今日は一人で新宿にいたの?」

    あ…やっぱりその話題か…そうだよな。
    意を決して素直に伝えようと、
    真っ直ぐ五条さんを見つめる。

    「レストランを覗いて見たかったんです」

    「僕に内緒で?」

    「五条さん…忙しそうだし、一人で行動しようと思いまして」

    「え、どう言う風の吹き回し?」

    「俺…五条さんに相応しい男になりたいんです」

    心の底から出た言葉。
    ずっと一緒に居たい。だから、
    自分が変わるしか無いと思った。

    「恵…」

    「五条さん…モテるし、恋人なんて選びたい放題でしょう?」

    「へ?」

    「でも、俺から離れないで下さい。…五条さんの隣に居る人間として、相応しい男になります」

    はっきり言えた。これが俺の覚悟だ。
    すると、五条さんは目を見開いて…
    それから、
    泣いているようにも、
    笑っているようにも見える表情で破顔した。

    「恵…かっこ良すぎ」

    「いえ、五条さん程では」

    「全く…もう金輪際、変な男に絡まれないでね?」

    下を向いて額に手を当てた五条さんが、
    俺の隣に来て、ぴったりくっつく。

    「え、何ですか?」

    「大好き」

    言われたと同時に、
    肩を抱きしめられる。
    更に、
    頭のてっぺんにチュッとキスをされた。

    「ちょ、お風呂まだなんで臭いですよ」

    「恵の匂いがする」

    「は?いつも臭いって事ですか?」

    「ねぇ、恵…あの星座は何かな?」

    抱きしめる手を緩める事なく、
    五条さんが聞いてくる。
    俺の質問は無視なのか…?
    空を見上げると満天の星空。
    あぁ…久しぶりだな。
    夏の日を思い出した。
    あの時よりも空気が澄み切っていて、
    より一層、星が綺麗に見える。

    「あれは…オリオン座ですよ」

    「あの、三つに連なってるやつ?」

    「それが真ん中で…ほら、それを囲うように星が見えませんか?」

    俺達はしばらくの間、
    空を指差しながら星座の話しをした。
    心まで温かい時間。
    【幸せ】って多分、今日の事かもしれない。

    デザートに、
    マシュマロを焼こうとしたタイミングで、
    五条さんがポケットから、
    何やら小箱を取り出した。

    「恵…これ受け取って?」

    「?」

    「色々と考えたけど…渡すのは今かな?って」

    言われて、その小さな箱を開けてみる。
    これって…まさか…

    「五条さん…これ」

    予想は見事に的中。
    中にはシンプルなシルバーリングが、
    二つ重なるように入っている。

    「夜景の見えるレストランで渡そうとか…思ったけどさ、やっぱり僕達らしく今日みたいな日が良いよね」

    「五条さん…」

    「因みにそれプラチナね。なかなか良いブランドでデザインも悩んでさぁ…あ、指輪のサイズは恵が寝ている内に「五条さん!!」

    珍しく緊張しているのか、
    いつもより饒舌な五条さんの口を、
    止めるように名前を呼ぶ。

    「五条さん…これ、本当に…?」

    「ずっと一緒にいよう。って言ったでしょ?」

    「でも…だって…」

    「恵、結婚しよ?」

    まさか、
    こんな風に契りを交わせるなんて…
    結婚指輪や結婚式は、
    男同士の自分達には無縁だと思っていた。

    五条さんは自分の指輪を俺の掌に乗せる。
    促されるように、
    五条さんの左手を取り、薬指に嵌めた。
    それから、
    自然な流れで五条さんも俺の薬指に、
    ゆっくりと指輪を嵌める。
    嵌めた瞬間は、
    ひんやり冷たかったリングが、
    次第に体温に馴染んで、
    違和感が無くなっていく…。
    なんとも言い難い高揚感に満たされた。

    「結婚式はさ、ハネムーン先で二人きりで挙げよう?」

    「…良いですね」

    「あ!やっと乗り気になった!どこに行きたい?」

    「…ニュージーランド」

    「ふふっ恵らしい」

    耳元で笑った五条さんに、
    顔を上げて瞳を閉じてみせた。
    キスの催促…
    少しの間があって、唇に柔らかい感触。
    今度は上手くいったみたいだ。
    目を開けてお互い見つめ合って、
    もう一度…
    星空の下で誓いのキスを交わした。

    fin
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