Seeing is believing.俺には生涯を添い遂げる相手がいる。
その人の名前は【五条悟】
自分の恩人であり恋人だ。
幼少の頃から面倒を見てもらい、
中学一年生になった頃…
『僕、恵の事が好きなんだけど…お嫁さんになってくれる?』
五条さんから突然のプロポーズ。
最初はいつもの冗談かと思い無視していたが、
その後、無理矢理キスをされて本気だと理解した。
不思議な事に嫌だとは思わなかったし、
…自分も五条さんの事が
好きなのかもしれない。
そう感じた俺は、
『分かりました』と返事をした。
それから…稽古中は厳しかったが、
基本はふざけたり…
急に優しかったり…
俺は五条さんに振り回されながら成長をした。
呪術以外にも色んな事を教わった。
キスのやり方も…初めての射精も…
中学校を卒業するタイミングで、
セックスもした。
こんな風に、
このままずっと五条さんと生きていく…
そう思っていた。…今日までは…
◾️◾️◾️◾️◾️
「私は最低でも三人と経験してから結婚したい」
「えー?生涯一人でも良くね?一途って憧れるじゃん」
「あんたって本当にお子様ね〜」
教室での虎杖と釘崎の会話に、
読んでいた本を一旦止めて聞き耳を立てる。
「釘崎が変でしょ?何で三人?」
「そりゃあ…恋愛経験があった方が、本気で結婚する相手と上手くいきそうだし」
「そうかな?」
「それに、結婚してから相手の元カノが五人とか聞いたら、経験なしの自分が悔しくなるじゃない?」
「うーん…わかんね」
そこまで聞いて、
五条さん…今は五条【先生】の
恋愛経歴を思い返した。
あれは確か…出会ってすぐの頃…
『女って面倒臭いよねぇ、恵も付き合う相手はちゃんと考えな?』
ちゃんと考え無かった結果が今だ。
『付き合うのは良いけど、別れる時って本当にややこしい…あ、また電話…着信拒否しようかな』
この発言は俺が小学三年生の時…
『新しい彼女が出来たけど、やっぱり面倒だな…別れようかな』
これも小学三年生…最低だなこの人。
『お見合い相手と何回か会ってるけど、無理。性格が合わない』
これは俺が小学五年生…
『少し冷たく言ったら泣くんだよ?参ったなぁ』
これも小学五年生。
恋愛経験豊富…っていうか、
女の人よりも先生に問題がある気がする。
思い返せば思い返す程、
先生に対する不信感とモヤモヤが渦巻く。
もう過去の話だから嫉妬は無い…
嫉妬は無いが、
経験人数が多い事にモヤモヤする。
俺は生涯、五条先生一人なのに…。
「生涯を約束した相手がいて、その人としか経験が無い場合…他の人と恋愛するのは浮気…だよな」
ぐるぐると思考を巡らすうちに、
思わず口に出していた。
「は?伏黒の話し?」
「あ、いや…知り合いの話し…」
不思議そうな虎杖に対し、咄嗟に嘘をつく。
虎杖と釘崎は顔を見合わせた後…
「そりゃ、浮気じゃね?」
「バレなきゃ良いんじゃない?」
声を揃えてバラバラな意見を言った。
「は?釘崎サイテーじゃん!」
「でも結婚するのは決まってる訳でしょ?本気じゃなくて《思い出》としてなら良いと思うけど」
浮気…そうか。でも思い出…
俺はまだ十五歳だ。
青春を全て先生に捧げて良いのだろうか?
虎杖と釘崎の言い争いを聞きながら、
これまでに無い感情に戸惑った。
◾️◾️◾️◾️◾️
「明日からまた遠方で任務だよ〜」
「お疲れ様です」
任務から帰ってきたと聞いたので、
部屋に入ると、ベッドに横たわり
ぐったりしている先生がいた。
明日からまた任務か…
本当に忙しい人だな。
「恵を補給させて!」
「どうぞ」
両手を広げれば、
ガバッ!と抱きついてくる五条先生。
更に、俺の首の匂いを嗅いでいる。
風呂に入っておいて良かった。
「次はいつ帰ってきますか?」
「来週の月曜日…丁度一週間後かな」
一週間か…
休めていない先生が心配になる。
ふと絡まる指先…
「ねぇ、恵…良い?」
誘いの言葉。
「…疲れているでしょう?」
本当に大丈夫なのかと不安になるが、
五条先生は甘く微笑んだ。
「恵を抱けば疲れも忘れられる」
美しいガラス細工のような瞳を向けられ、
何も言えなくなった俺は、
口付けを待つ為に目を瞑った。
◾️◾️◾️◾️◾️
という事で、
先生は一週間帰って来ない。
今がチャンスだ。
次の日の朝…先生を見送った後に、
SNSで出会いを検索してみる。
恋人が男性だからか、
無意識に【ゲイ 出会い】で調べていた。
「えげつないな…」
検索して出てくるものは、
下品な関係を求めるものばかり…。
ガッカリしながら、
そのままスクロールしていくと、
気になるアカウントが目に留まった。
《名前:エス 高校一年生 十五歳 タチ お友達募集中》
同い年だ…気軽な雰囲気…
更に名前が【エス】
五条先生の名前の頭文字。
何だか繋がる物を感じてクリックする。
《心から好きと思える人が欲しい》
《普通にデートして普通に恋愛がしたい》
苦悩している呟き…。
今まで見た中で一番純粋に見える。
しかし、何てコメントを残せば良いのか…
そもそも、
本当にこんな事をして大丈夫なのか…
悩んでいると、ふと釘崎の言葉が頭をよぎった。
『本気じゃなくて《思い出》としてなら良いと思うけど』
そう…これは思い出作りだ。
少し考えた末に、一言だけコメントを残す。
《思い出作りをしたい者です》
これでは不審者…ブロックされるだろうと、
苦笑いをしたが…
ピロン♪
電子音と共にDMが送られてきた。
《思い出作りとは何ですか?僕で良ければ協力します》
ストレートな言葉と、
一人称が【僕】な事に親近感を覚える。
先生と一緒だ…
俺はそのままエスと連絡を取り合った。
◾️◾️◾️◾️◾️
「伏黒、誰と連絡してるの?」
虎杖に言われてスマホから顔を上げる。
「…別に」
「分かった!五条先生だ!」
「は?何で先生の名前が出るんだよ」
「だって伏黒がやり取りするの、先生しかいなくね?」
笑顔でそう言われて、自然と眉が寄った。
俺にだって、先生以外に連絡を取る相手はいる。
まぁ…SNSで知り合った男だが…。
ピロン♪
噂をすれば返信だ。
スマホを確認して、思わず目を見開いた。
「どったの?」
「…何でもない」
虎杖からの質問をはぐらかす。
何故ならエスからの文章は…
《今度の日曜日、実際に会えないかな?》
ついにこの時が来た。
どうするべきか…
天を仰いで思考を巡らせた。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
続きは支部にて公開中♪