遍歴『一斗、もういい。もう十分だから……』
正式にパートナー契約を交わし直し、支配欲を抑えることなく兄を慈しむようになった二十歳の頃。Domの愛執を一身に受けた兄は、羞恥と苦悩の混じった表情を見せることが多くなった。
"幸せ過ぎて怖い"と、より貪欲になっていく己の第二の性を恐れ、兄は涙を流した。しかし、長年その思いを押し殺してきた一斗にとって、そんな理由で手を止められるはずもなく、一斗は己の欲求に導かれるままに兄を甘やかし続けた。
『一斗は本当に僕を甘やかすのが好きだね。いい加減嫌にならないのかい?』
甘やかされることに慣れ始めた21歳の頃。兄は度々呆れながらそう笑った。この頃の兄は一斗からの奉仕に素直に喜んでくれるものの、未だにそれを享受することに躊躇する素振りも見せた。
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