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    柊月んたまよしのり

    気ままに描いたり書いたりお休みしたりする。
    ジャンルは雑多。

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    POIPOI 27

    ニート次男を巡って黒金魚次男と鬼書生次男がバトりますが、恋愛要素はありません。
    口調等、色々と特殊設定あります。

    #松野カラ松
    #鬼書生
    ghostwriter
    #黒金魚

    神ハ隠サズその日、赤塚育ちのとある六つ子が1人、松野カラ松は怪奇に見舞われた。
    唐突に、前触れもなく。

    「美味そうな稚児(ややこ)だ、取って食おうか」

    そう宣うは人ならざるもの。
    顔も身体も人間だが、やたらに長い墨色の裾をふわり靡かせ、水槽の中のように宙を泳ぐその姿は金魚のよう。
    墨色のその者はすい、とカラ松に泳ぎ寄ると、背後から「だーれだ?」とするようにしなやかな手で彼の両の視界を塞ぎ
    「籠めや 籠め。やはり食わずに飼うとしようか。」
    いやに楽しげに謳う墨色金魚の妖は、カラ松を抱き上げようと身動きするが……

    白銀の一閃。

    鋭い光の筋が墨色金魚の両の腕を切り落とした。
    眼前の姿に驚き、声も忘れて固まってしまったカラ松の肩をぐい、と引くと、さながら姫を守る騎士の如く自らの背に隠したるは和装の男。
    手には鋭く光る太刀を構え、切っ先を両手を失った墨色金魚へと向けている。


    その姿を、かつて、何処かで見た気がする……


    カラ松はふと、強烈な既視感を覚える。
    彼は何者だったか…必死に己の記憶を探っていると、墨色金魚が両腕の無いままにその身から着物と同じ墨色の霧を放ち、にやりと笑む。
    「貴様が何者かは知らんが、邪魔立てすると云うならば取って食うてやろう。」
    その言葉にも和装の彼は微塵も怯まず、低く凛としたよく通る声でこう返す。
    「ならば次はその顎を切り落とそう。この子には毛の1本さえ触れさせやしない。」


    その声を、俺は、知っている……?


    墨色金魚が僅かに身動ぎをしたその刹那、和装の男は一切の躊躇なく太刀を振るう。
    しかし今度はひらりと躱され、墨色金魚の繰り出す裾の鞭をまともに食らってしまう。
    墨色金魚は云う
    「分からんな。お前さんも妖と見たが…何故その人の子を庇う?」
    「些か愚問。俺達の顔を見て察せぬか。しても、天狗ならまだしも唯の妖風情が神の真似して神隠しなど…甚だ稚拙だな。」
    「何を云うか。神隠しなど、人間が勝手に神の仕業と思い込んだに過ぎん…それより、良いのか?俺の結界に入った以上、そう易々とは俺を倒せんぞ?」
    男は再び切っ先を墨色金魚へと向ける。
    墨色金魚はそれも意に介さぬ様子で話を続ける。
    「その人間の身内だか何だかは知らんが、いつまで人の面をしているつもりだ?まさか、その様な半端な姿で俺を討つつもりではあるまいな?」
    「………」
    男はその問いには答えず、無言でじっと眼前の敵を見据える。

    一方カラ松は、謎の既視感について必死で思考を巡らせていた。


    青の上衣に紺色の袴、昔の学生が被っていた黒い学生帽、古風な口調…
    こちらからは背中しか見えないが、恐らく丸眼鏡もかけていた筈だ。


    その間も二人の妖の戦いは続いていた。
    裾…もとい尾の鞭と男の握る刀、それらが激しくぶつかり合い、火花を散らす。
    何度も、何度も。
    ほぼ互角と思われた二人だが、次第に男の顔に疲れが見え始める。
    汗の滲む額を長い袖でぐい、と乱暴に拭う男の姿に墨色金魚は勝利を確信し、ほくそ笑む。


    あの時もこうして俺を何か怖いものから守ってくれて…
    ……「あの時」?何時だったっけ…確か、2回ほど会ってる。
    とても小さい頃…まだ、ほんの小学生くらいの………
    2回目は……そう、あれは俺が珍しく一人ぼっちになって寂しくて泣いてた時だ。二本足の下駄をカラコロと鳴らしてやって来たんだっけ。
    確か、ベーゴマがとても得意で……


    男が斬撃を放つより一瞬早く墨色金魚の鞭が飛んできて、男の右腕に命中した。
    男が思わず刀の柄から右手を離す瞬間を敵は見逃さない。
    瞬時に鞭の連撃を男に振るい、高笑いする。
    「利き腕をやられた剣士など、赤子も同然!その人間に拘ったばかりに…なんと愚かな!!」

    ​───バシィッ!!

    到底片手では防ぎきれぬと思われたその尾を男は左手で力強く掴む。
    「愚かしいのは貴様の方だ、金魚野郎。」
    「!!?……くっ、このっ……なんて馬鹿力だ…!放せ!!」
    「俺の武器は刀だけにあらず…この身総てが俺の武器だ!!」
    圧倒的な覇気を放つその声に、漸くカラ松の記憶が明瞭になる。


    そうだ、家の物置部屋にあった古いアルバムにこの人の写真があった。
    確か、この人は俺の……


    「曾祖父さん……」


    カラ松の口からぽろりと零れたその声を聞き、丸眼鏡の彼はカラ松の方を振り向くと心底嬉しそうに微笑む。

    「漸く思い出してくれたか、カラ松。」

    刹那、青白い炎のような光が彼の全身から放たれ、その姿が変容する。
    頭からは青白い角が二本生え、上衣は紺の花菱柄に変わり、袴も紺から薄墨色に変わり、目尻には朱が灯り、刀は番傘に姿を変えた。

    ……鬼だ。

    カラ松は、不思議と怖くは感じなかった。
    その姿の彼を見るのは初めての筈なのに、どことなく懐かしさに似た安心感を覚えてさえいる。

    「この力は少々面倒な制約があってな…この子が俺をこう呼んでくれることで漸く本来の力が発揮されるのさ。」
    「くそ、先祖の神格化か……これは分が悪い、一度退かせてもらう…くそ、いつまで人の尻尾を握ってるつもりだ!!放せ!!」
    圧倒的な力の差を感じ取ったのであろう、墨色金魚は逃げの姿勢になったが、尾を掴まれたままの為、それも叶わず。
    「まぁ逃がしてやっても良い。だが一つ誓え。この子を二度と狙わぬと。」
    「わ、分かった!誓う!もう二度とそこの人間を狙わないし襲わない!!だからその手を離してくれ!お前の神気が尾に滲みて痛い!!」
    カラ松の曽祖父たる鬼に凄まれ、墨色金魚はやむなく敗北宣言をし、二度とカラ松を狙わない旨を言葉に誓った。
    そこで漸く鬼は尾を握る手を離してやり、墨色金魚を逃がしてやった。


    夕刻、家への帰り道。
    カラ松は自分の曽祖父と並んで川べりの土手を他愛ない会話を交わしながら歩く。

    「…曾祖父さん、なんだよな?俺の。」
    「そうだとも。」
    「名前は…たしか、俺と同じ…」
    「唐松だな。お前の「カラ」は片仮名だけどな。」
    「いつも見守ってくれてたのか?」
    「あぁ、お前達の傍でな。お前が兄弟達と騒がしくやっている時も、ご婦人に声をかけて盛大に振られた時も、幼子のように泣きべそかいてる時もな」
    自分の情けない姿までしっかり見られていたと知り、恥ずかしくなったカラ松の傍でからからと笑う曽祖父は今やすっかり元の人間の姿に戻っていた。
    優しい笑顔の曽祖父…唐松は言う。
    「良いか?カラ松、何時の世も、人と妖も隣り合わせだ。人であっても悪に身を染めれば妖となり得る。お前は、そうなってくれるなよ?」
    その横顔は、よく晴れた日特有の強烈な夕陽に照らされて幾分か神々しく見えた。
    ふと、先程の墨色金魚の言葉を思い出したカラ松は訊ねる。
    「そういえばさっき、アイツ「先祖の神格化」って言ってた気がするが…曾祖父さんは神様になったのか?」
    「ん?あぁあれか。そうだなぁ…神だなんて仰々しいものになった覚えは無いが、まぁ強くなったとは思うなぁ!」
    はっはっは!と豪快に笑う唐松の姿につられるようにしてカラ松も声を出して笑う。
    「っはは、曾祖父さんが神様なら、随分呑気な神様だなぁ。」


    そうして二人、笑いながら夕暮れの岐路を辿り、家の前まで来たところで、カラ松が振り返り
    「そうだ、曾祖父さんもたまには一緒に​───」
    と、言いかけたが、そこに曽祖父の姿はなかった。
    恐らくまた、姿を消して家の中にでも入ったのだろう。
    「呑気だし、こういうとこシャイだし、神隠しもしないし…ホント、変わった曾祖父さんだな。」
    一人、クスリと笑うと、カラ松も自宅の引き戸をガラガラと開けて入っていくのだった……。




    ​───後日、カラ松が縁日で弟達に付き合って金魚すくいをやっていると、黒い金魚が自分から器に入ってきて「これも何かの縁か」と家で飼うことになったが、それが先日の墨色金魚で、「見知らぬ者より知った者に飼われる方がいいと思った」と宣ったため、カラ松は大層に驚かされるのであった────


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    Cloe03323776

    SPUR ME毛入りさんの素敵漫画に触発されて、書いてしまいました。ドフ鰐♀。女体化注意。原作沿いです。毛入りさん、ありがとうございます!
    ボタン・ストライク それは、初デートだ。
     誰がなんと言おうと。
     二人にとって、生涯で。
     初めての。

    「フッフッフ! さァ、どれがイイ?」
     ドフラミンゴがクロコダイルを連れてきたのは。世界最大級のショッピングモールだ。この島は、観光業で成り立っている春島。世界各地のブランドが集結し、買い物客は1日で余裕で万を超える。常に大盛況であるこの島を、初めてのデートの舞台として選んだ。ちなみに、ドフラミンゴが羽織っているのはいつものピンクの羽根のファーコートと、クロコダイルは彼が用意した黒い羽根のファーコートを羽織っている。
    「……あァ、そうだな」
     そして。一件ずつ、店を見させられては。そこのお店で欲しいと思う物全てを「買われて」プレゼントされるクロコダイル。荷物は全て、ドフラミンゴが持つ。買ってくれると言うのであれば、特に逆らう必要もない。クロコダイルも気持ちが赴くまま、何の躊躇いもなく、欲しいものをどんどんレジへ持っていく。服でも、宝石でも、小物でも、鞄でも、靴でも。何でもだ。そんなクロコダイルの様子を、ドフラミンゴは楽しげな様子で眺めている。そして、嬉々としてレジでお金を支払う。そんなドフラミンゴの様子を、クロコダイルは呆れた表情で見つめていた。この男は、こんなにも貢ぐ男だったのか、と。だが、この程度の金など、微々たる物なのだろう。そうして漏れなく一件ずつ、店回りは続いた。
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