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    Bonzin0704

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    Bonzin0704

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    理解お兄さん主役のホラーもどき
    文通友達の話です。



    この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません

    ヤマオカ メグミさんへはじまり「なんだ、これ。」

    自室の机の上に白い封筒が一通置かれていた。
    宛先欄は滲んでいて読みとれず、郵便消印も付いていない。
    自分の部屋は基本鍵をかけていて、合鍵を持っているのは依央利さんと家主であるふみやさんだけ。
    きっと依央利さんが受け取ったかなにかして、この宛先が自分であるとわかったのだろう。
    そう納得しながら封筒をひっくり返し、ペーパーナイフを差し込み開いた。
    中には入っていたのは一枚の便箋だった。
    拙い文字で、友達になって欲しいと綴っていた。
    そしてその下に住所とやまおか あかねという名前が書かれていた。

    そんな手紙を読み進めているうちにふと昔のことを思い出した。
    理解がまだランドセルを背負っていた時、父親が買ってくれたのがあしながおじさんだった。
    孤児だった少女が学校に通い、友人が出来て、夏には別荘で遊び、そして恋に落ちる。
    その頃の理解には毎晩喧嘩する両親と、揶揄って馬鹿にしてくるクラスメイトしかいなかった。
    だから憧れた。なんでも話せる文通相手が欲しいと。
    両親の喧嘩で縮こまる心も、クラスメイトに嗤われて溢れる涙も。
    誰でもいいから知って欲しかった。

    この手紙を書いた子供もきっと理解と同じような思いを抱いているのだろう。

    そう考えた理解は手紙を綺麗に直すと、上から2番目の引き出しにしまった。
    そして新しい封筒と便箋を取り出しペンを取った。

    これが不思議な文通の始まりだった。
    はじまり
    「これは?」

    自室の机の上に白い封筒が一通置かれていた。
    宛先欄は滲んでいて読みとれず、郵便消印も付いていない。
    自分の部屋は基本鍵をかけていて、合鍵を持っているのは依央利さんと家主であるふみやさんだけ。
    きっと依央利さんが受け取ったかなにかして、この宛先が自分であるとわかったのだろう。
    そう納得しながら封筒をひっくり返し、ペーパーナイフを差し込み開いた。
    中には入っていたのは一枚の便箋だった。
    拙い文字で、友達になって欲しいと綴っていた。
    そしてその下に住所とやまおか あかねという名前が書かれていた。

    そんな手紙を読み進めているうちにふと昔のことを思い出した。
    理解がまだランドセルを背負っていた時、父親が買ってくれたのがあしながおじさんだった。
    孤児だった少女が学校に通い、友人が出来て、夏には別荘で遊び、そして恋に落ちる。
    その頃の理解には毎晩喧嘩する両親と、揶揄って馬鹿にしてくるクラスメイトしかいなかった。
    だから憧れた。なんでも話せる文通相手が欲しいと。
    両親の喧嘩で縮こまる心も、クラスメイトに嗤われて溢れる涙も。
    誰でもいいから知って欲しかった。

    この手紙を書いた子供もきっと理解と同じような思いを抱いているのだろう。
    とはいえ小学生を恋人にする気はないし、そんな趣味もない。

    それから理解は手紙を綺麗に直すと、上から2番目の引き出しにしまった。
    そして新しい封筒と便箋を取り出しペンを取った。

    これが不思議な文通の始まりだった。

    ***
    返信の封筒は最初と変わらず名前の書かれていないものが机に置かれていた。
    1ヶ月も経つころには一週間に一度のやり取りが気づけば三日に一度になっていた。
    何度注意してもあかねさんは名前を頑なに書こうとしない。そのせいで最近は仕方がないと許容してしまっている。
    彼女の話は似たような話ばかりだった。
    父親は泣いていて、母親は祈っていて、姉は部屋で眠っていて、“ハナちゃん”はうるさい。
    歪な家族関係は明らかに彼女を病ませていた。
    正しい大人として児童相談所に通報しようかと考えもしたが、彼女の文面からは家族への愛が滲み出ていた。
    それに児童相談所に保護されたとしても、結局は親元に返されるか、もっと酷い所に連れて行かれるだけ。その苦しみを理解は知っている。
    過去の自分に重ねながら家で起きたはちゃめちゃな日常をおもしろおかしく書き起こす。
    いつもこの手紙が彼女の救いになればいいと願いながら封をする。
    ポストに投函しようと椅子から立ち上がれば、視界がぐるりと回る。

    このところ、8時間寝ているはずなのに体の疲れが取れなくなってしまっている。
    またリビングでウトウトと寝てしまうことも増えてきた。
    一回病院で調べてもらおう。と決意を固めながら手紙をカバンに詰めて外に出る。

    ギラギラと太陽が照りつけ、蝉は耳が破れそうなほどの大音量で鳴いている。
    少し前にテラさんが日傘の良さを話していたことを思い出して、雑貨店での購入を考慮しながら門へと向かう。

    門を出てすぐに散歩から帰ってきたらしい大瀬さんとふみやさんに出会った。
    後ろ手に隠した手紙を見られないように、たわいもない会話をすぐに終わらせる。
    背を向けた理解にふみやが声をかける。

    「理解、何かあった?」

    何もありませんよ。
    そう答えて一度も振り返ることなく、目的地へと足を進めた。

    なぜかふみやの声が頭の片隅にずっと残っていた。

    ***
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