失墜の鬼武蔵人生最大の敗北。
これは俺にとっての名誉をひどく傷つけた。
誘惑に負け、能無しのように突っ走り、結果
酒井忠次にまんまとしてやられた。
これ程の敗北、今まで受けたことはなかった
俺、鬼武蔵は初陣から今まで敗北という敗北を経験したことがない。
16のとき、興奮で突っ走り単騎で27もの敵兵を討ち取ったとき、織田信忠様は目を丸くして青ざめていた。
「も、森長可と言ったかニャ?」
「信忠様」
「君…血まみれだけど、大丈夫か?」
「ああ、これは全部、敵のだからな」
「…」
あのときの信忠様の反応はいかにも"ありえない"と言わんばかりの顔だった。
またあるとき、関所の役人に止められたことにムカついて「殿の命令ならまだしも、お前の命令なんか聞かねえよ!」と怒鳴り散らかして暴れたもんだから、さすがに殿に呼び出された。
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