それをすてるなんてとんでもない! 大戦から数年が経ったある日のこと。我らが長兄の嫁さん・エイミさんに呼ばれて風の賢者の屋敷を訪れたおれは仰天した。案内された広めの部屋が、エイミさんをモデルにした絵画や像で溢れていたのだ。
とにかくいろんなエイミさんがいる。
いつもおれらが見ている、仕事のできるカッコイイ姿だけでなく、おれらが見たことのない、少女のように笑うエイミさん、苦悶の表情を浮かべるエイミさん、そして、なんとも艶かしい姿の……
「おいポップ!何をじろじろと見ている!」
我らが長兄のお出ましだ。
何でか知らないが大戦後ヒュンケルは芸術に目覚め、剣や槍と同様に徹底的に極め、気付けば売れっ子芸術家になっていた。
世に出回っているヒュンケルの作品は、主に大戦を題材にした作品だが、どうやら世間の知らぬところで、愛妻をモデルにした作品をしこたまこさえていたらしい。
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