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    ichika__82

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    ichika__82

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    自機(イヴェール・シュヴァリー)の半生?を小説っぽく綴ってみることにしました。

    ##FF14

    Suite de Azure-argente(仮) 『──これは「エオルゼアの英雄」、そして皇都イシュガルドで「蒼銀の竜騎士」と呼ばれた一人の男の記録である』

     後になって見返しに誰かがそう加筆したらしいそれは、ちょうどアイメリクから「蒼銀の竜騎士」という位を叙された頃に書いたものだ。
     
     ある日私は、終末の戦いの中で誰もが私に尋ねようとしたけれど口をつぐんでいた、私自身の過去について記録しておこうと思い立った。
    「──そう言えば、聞こえは良いのだけれどな」
     実際は遺言書のようなものだ。アイメリクやエスティニアンの過去に深く関わっている以上、彼らには私がどのような人物だったのか知る権利があると思う。だから一度だけ二人には話したことがあるが、きっと「暁」の仲間達も同じく、信頼を寄せた相手の素性を知りたいと思うのは当然だろう。
     だからこうして重い腰を上げ、ペンを取るに至ったのだ。
     
     ◆◆◆
     
     私……イヴェール・シュヴァリーが生まれたのは、下級貴族の家らしい。けれども容姿の特徴──氷のように青みがかった銀髪と空色と銀のオッドアイ──から『戦神ハルオーネの祝福を受けた子供』と神殿騎士団病院で騒ぎになったそうだ。生まれたばかりの私は、有無を言わさず高位聖職者のネージュ家へ引き取られ、「アナスターズ」と名付けられた。
     
     私の記憶は、アナスターズになった頃から始まっている。
     
     と言っても、具体的な何かを覚えているわけではない。あの家に居たのは十年程度で、その後は教皇庁に部屋が設けられたからだ。
     ネージュ家で覚えているのは、石造りの広い部屋。大きな窓の向こうに広がる、クルザスの険しい稜線。淡くも透き通った蒼天。その光が部屋に差すことはなく、いつも薄暗かった。大きな暖炉はいつも薪がくべられ、私の銀髪を金色に染め上げていた。部屋の中心にはピアノやハープ、バイオリンが音を奏でられるのを待ち、壁をぐるりと取り囲む本棚には聖書や皇都の歴史書、宗教学、政治や経済の書物がぎっしりと詰められて頁を開かれるのを待っていた。
     そして、毎日決まった時間に部屋を訪れる養父。何か言葉を交わすわけでもなく、椅子に座る私の足元に跪き、爪の先にそっと触れては聖書の一節を呟くだけだった。
     
     十歳になって、私の拠点はネージュ家からイシュガルド教皇庁の一室に設けられた。生活はネージュ家にいた頃とあまり変わりはなかったが、多くの信者が私の姿を一目見ようと訪れるようになった。初めは私の部屋が謁見室のようになっていたが、やがて私は毎日決まった時間に水天宮に行くよう促され、戦神ハルオーネ像の前で信者達に触れられるようになった。
     今思い返せばなんとも気持ち悪い習慣だが、当時の私は触れられる相手が養父一人からその他大勢の信者に変わっただけで、何も感じなかった。なんとも異様な子供だったなと、今になって思う。
     
     …………そうさせたのは、養父をはじめイシュガルド正教の聖職者達なのだがね。
     
     アイメリクと最初に出会ったのも、この奇妙な儀式の中だった。髪を伸ばし、ハルオーネ像とよく似た服を着た私を別人の女性だと思っていたらしく、このことを話したときにはひどく驚いていたな。
     当時はまだトールダン七世は教皇にこそ就任していなかったが、かなり高い位置にいた。その隠し子と噂されていただけあり、とても冷ややかな眼差しで私を見ていたことをよく覚えている。
     
    「自分とそう年齢の変わらない子供があんな扱いを受けている、という事実が嫌だったんだ」
     アイメリクはそう語っていた。知らない大人達に訳もわからないまま崇められ、触れられ、何かしらの恩恵を受けようとぎらぎらした眼差しを向けてくる。もし自分が同じ立場だったとしたらゾッとする……彼はそう言いながら、身震いするような仕草を見せていた。
    「俺には想像もつかない生活だが……まぁ、確かに気持ち悪いな。俺だったら絶対に逃げ出すが、よく耐えたな……」
     もう一人の親友、エスティニアンは心底嫌そうな顔をしていた。アイメリクが言葉を慎重に選びながら自身の考えを述べるのに対し、エスティニアンは真っ直ぐに言葉をぶつけてくる。それが彼の良いところでもあるが、悪いところでもある。
    「エスティニアン……流石に、気持ち悪いと言われるのは……その……」
     その状況に慣れてしまっていた自分には随分と痛い一言だった。
     
     偶像のような扱いを受けていたことは確かだ。そのことに何の疑問も持たなかったのか、と問われると、イエスともノートも答えづらい。周りに同年代の子供はおらず、幼い頃からそのように扱われてきて、そういうものだと思って十年の時を過ごしてきたからだ。だからこそ、アイメリクのあの冷ややかな視線が忘れられない。軽蔑のような同情のような怒りのような、さまざまな感情が入り混じった、あの視線が。
     
     私はあの日、アイメリクに見られたあの日を境に、自分自身について疑問を持つようになった。
     
     このままこの生活を続けて大人になるのだろうか。
     私は一生、誰かに跪かれながら、偶像として無味乾燥な日々を送るのだろうか。
     いつまで私は女神のフリをできるのだろうか。
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