『 』「今日来たヒトって─えーっと、……あ、そうそう、エリー………うん、挨拶に行かないとね~」
チサトは一人言を、誰かと喋っているかのように話した。そして、自分の嗅覚を頼りに、‘’新しい匂い‘’を探す。ペタペタと、チサトが歩く度に、スリッパが鳴る。チサトはそれが面白いのか、わざと速く走ったり、ゆっくり歩いたりした。それに合わせ、ピョコピョコと、耳と尻尾が揺れている。
「ん~?」
耳を澄ませると、声が聞こえてきた。匂いは…イスカ、…と…?誰…?─覗いて見ると、イスカと、髪が白いヒトが居た。
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「イスカだよ…!
覚えてない?」
「誰、でしょうか…
すみません。昔の記憶が無いんです…。」
…?二人は…
「─そっか。」
イスカ、悲しそう。
「覚えてなくて本当にごめんなさい。」
「…じゃあ、『約束』も、
覚えてない?」
「─ッツ─ごめんなさ─」
エリスは後ろに分かるか分からないか位下がった。
「エリスー!!!!」
シーナが飛び出してきた。
「あれ、二人、
知り合いだったの?
─あぁ、なんだ。
‘’間違えた‘’や。
…初めまして。
エリー。」
…?訳が分からない。シーナは何を間違えたんだろう…?
「…イスカ、ちょっといい?」
「う…うん。」
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「さっきね、エリスに─を‘’コピー‘’したんだよ。
そしたらね、‘’エリスの手‘’で触れたものが、
─これ、なんだ。」
シーナは枯れた花を持っていた。
「そう。多分、エリスの魔法は、[死を与える]んだと思う。手袋着けて─
あーなってたから気になってね。」
「だから…キツいかもだけど─いや、キツくても、‘’その事‘’に触れちゃダメだからね。─誰にでも、触れちゃいけないのって、あるじゃん?」
「─分かった。」
「それじゃ─」
「これで終わり。んっじゃーね!」
シーナは手を振って去っていった。─二人は、エリーの、‘’昔の‘’、エリーの知り合い、だったのかな?…あ、挨拶に行かないと。
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「はじめまして!…えっと…あれ、」
名前が出てこない。あれー…?
「初めまして…私の名前はエリーです─あなたは?」
あ、そうそう、エリーだ。
「よろしくね!エリー!」
ボクはエリーに飛び付こうとした。─が、エリーが飛び退いたから、そのまま、頭からゴチンといった。
「…いたい」
「ごっごめんなさい、大丈夫ですか…?」
エリーは、手を出そうとして、すぐ引いた。
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「お前は、本当に学ばない子だねぇ。どうして、そんな風に育ったのかね?…ウチからこんな塵が出るなんて。嗚呼嫌だ嫌だ。─さっさとどこかに行ってくれないかい?目障りなんだよ」
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エリーに、お母様の顔が重なる。…あぁ。ああああ。
「やぁぁぁぁぁ!!!!」
私は何かの糸が切れたように、叫んで、何も分からなくなる。
「─ごめ、なさ、ごめんなさ、い、おかあ、さま、すてないで、ぶたないで、」
パニックになって、過呼吸になる。
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後もうちょっとでやばくなるすんで所でシーナが来てくれた。周りにはたくさんの魔法少女たちが居た。安心して、ボクの意識は途切れ、真っ暗になった。
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嗚呼、ボクは要らない子。違う、ボクは、孤児(ミナシゴ)だ。お母様なんて、居ない。居ない筈、なんだ。分からない。分からない。全てが曖昧模糊になっていく。
「…あれ、何考えてたんだっけ?」
まぁいいや。どうでもいい。全部全部。