『時は戻らない。絶対に』「約束、
ですわ…ですよ。」
「うん。約束。」
あの日誓った指切り。
小学生だったから、とても拙く、そして─儚かった。
でも、私達は、
何を誓ったんだっけ─?
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最近まほかんに入ってきたエリー。エリーは同い年。そして─名前が、
似てるんだ。あの子に。
いや、あだ名かもしれない。本人なのか?
とりあえず、
聞いてみよう。
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「ねぇ、…エリー…って、エリスだったりする?」
「…!そうですわ…そうですけど…何でしょうか?」
やっぱり。名前も、話し方も。おんなじだ。でも─うんん。多分、代償だろう。
まぁ、分からなくて当然か。小学校以来で、私も、エリスも、‘’変わった‘’し。
「イスカだよ…!
覚えてない?」
エリスは、包帯をしていて表情は見えなかったが、
「誰、でしょうか…
すみません。昔の記憶が無いんです…。」
困ったように言った。
脊髄に、氷水が流されたようだった。
…ショックだった。確かに、小学校以来だから。覚えてないのはあるだろうけど、単に、時間の流れって、無情だ。そう、思っただけだから。
「─そっか。」
「覚えてなくて本当にごめんなさい。」
深々と頭を下げるエリス。
─なら、
私は手を出して、そのまま、小指を出した。
「…じゃあ、『約束』も、
覚えてない?」
スッと、気付くか気付かないか位の動きでエリスは後ろに下がった。
「─ッツ─ごめんなさ─」
「エリスー!!!!」
と、叫んで飛び出してきたのは、─シーナだった。「あれ、二人、
知り合いだったの?
─あぁ、なんだ。
‘’間違えた‘’や。
…初めまして。
エリー。」
????
シーナは、一体何を
‘’間違えた‘’んだろう。
知り合いっぽい話し方だったのに、どうして、
いきなり他人行儀に?
「…イスカ、ちょっといい?」
「う…うん。」
私は、戸惑いがちに答えた。こんな真剣な顔のシーナ、初めて見たな…。
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「さっきね、エリスに─を‘’コピー‘’したんだよ。
そしたらね、‘’エリスの手‘’で触れたものが、
─これ、なんだ。」
と、枯れた花を出してきた。これは…
「そう。多分、エリスの魔法は、[死を与える]んだと思う。手袋着けて─
あーなってたから気になってね。」
だから、さっきエリスは後ろに…
「だから…キツいかもだけど─いや、キツくても、‘’その事‘’に触れちゃダメだからね。─誰にでも、触れちゃいけないのって、あるじゃん?」
…確かに。そうだ。
「─分かった。」
「それじゃ─」
パン!と、シーナが手を叩いた。
「これで終わり。んっじゃーね!」
そして、手を降ってシーナは行ってしまった。
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「どうしたんだい?」
小林が目と鼻の先に居た。
どうやら、シーナが行った後、ずっとそこで突っ立っていたようだ。
「っは、小林?!
近い!!!!」
「え、あぁ、ごめんねぇ。」
小林は後ろに下がった。
自分でも、分かるくらいに、顔が赤い。熱い。
「何?悩み事かい?」
「ちが─」
小林。小林は─友達だ。
─のハズ。…
「小さい頃に友達とする約束って、何だか分かる?」
「シチュエーションにもよるねぇ。」
シチュエーション…
「[転校して、離れ離れになる]~的な。」
「そうだねぇ。」
小林は暫く考えて─
「小林だったら、[また会おう]とか─」
「やぁぁぁぁぁ!!!!」
「「?!?!」」
病棟に響き渡る声。この声は─チサトだ。
声のした方に私達は頷き合って急いで向かった。
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するとそこには、騒ぎを聞き付けて来たのであろう、他の魔法少女達が居た。
その真ん中で、チサトが泣いていた。駆け寄っていたのは、─シーナだった。
「…どうしたの?チサト。何かあった?」
当の本人は、過呼吸で、意識は、別な所にあるみたいだった。そして、
「ごめ…なさ…」
と、震えだして、小さな声で、確実に、そう言った。
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どうやら、トラウマがフラッシュバックしたらしい。‘’何が‘’キッカケだったんだろう…ベットの上でふと、そんな事を考えていた。あ、小林との話、うやむやになっちゃったな─。そこでイスカの意識は途絶えた。
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「むかしむかし。わたしたちがうまれるよりもっと前、わたしたちの上にある─そらに‘’おおあな‘’がひらいて、いっぱい生き物がでてきました。その生き物たちは、わたしたち人間をほろぼそうとするわるいやつでしたの。だから、このままでは人間はみんなしんじゃう!…そんな時に、きゅうせいしゅ─わたしたちをすくって─まもってくれる人たち─まほうしょうじょがあらわれたのですわ。」
そう、昔ばなしを披露してくれたのは─エリスだった。小学校の時の。
「すっごぉい!エリスちゃん、ものしりなんだね!!」
そう、目をキラキラさせながら言ったのは─私だった。これまた、小学校の時の姿で。これは、記憶だ。昔の。
そして、色々な記憶─思い出が流れて行き─[約束]の日になった。
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学校が終わって、いつもの公園に来た私達は、私が転校することになって、最後まで一緒に話そう。って、なったんだけ…。そんな事を考えていると、エリスが話し始めた。
「本当に、行ってしまうのですか?」
「うん…」
「離れてしまうのは悲しいですが、それは仕方がありませんね。」
「仕方がないの?」
「えぇ。私達が生き、学校に通えてるのは親のおかげですし…」
「そう…だよね。」
「…そうですわ!別に離れてたって、私達が別に友達で無くなる。そんな事、ありませんわ!…何処に居たって、繋がっていれますわ。─この、空の下で。
…確か、誰かが、昔にこう言ってたと思いますわ。」
「空で─繋がってる?」
「はい!
─約束、しませんか?」
「約束?」
「えぇ。…離れ離れになっても、友達でいましょうう。」
そう言ってエリスは手を出して、小指を出した。
私も、小指を出して、指切りをした。
「約束、
ですわ…ですよ。」
「うん。約束。」
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そして私は、泣きながら目を覚ました。
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そうだ。私達は、[離れ離れになっても、友達でいよう。]そう、誓ったんだ。
止めどなく溢れ出る涙は、私の頬を伝って落ちてゆく。
「…‘’嘘つき‘’。」
消え入りそうな、寂しい声が、無情な部屋に響いた。