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    カニせんべい

    @himanatu_bungo

    超エキサイティング!!!パリピの三連休

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    カニせんべい

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    講義を一人で受け、他の講義でも誰とも話さない様子のドクトーレを、ヒストーリエは気にしていた。

    そんなある日、構内の温室近くの東屋で勉強をしているドクトーレを見つけ、ヒストーリエは彼に声をかけた。

    ##A島の人たち

    ドクトーレとヒストーリエの出会いヒストーリエには、少しだけ気になる同級生がいた。講義中も目立たないのに、なぜか視線が吸い寄せられてしまう。そんな不思議な雰囲気を纏うドクトーレ。入学式の日から、彼はいつでも一人だった。

    ヒストーリエと同じ生物学科生で、必修科目の講義がよく重なっていたが、ドクトーレは誰にも話しかけず、黙って講義に出て、黙って去っていく。

    特別社交的というわけではないヒストーリエだが、その様子がどうにも気になって仕方がなかった。

    ---

    ある日、ヒストーリエは大学内を散歩していた。南海岸大学は地方一の大学を誇るだけあり、敷地がとても広い。園芸学部の大きな温室の横を通り、道端にポツンと建っている東屋に視線を向けると──

    「あれっ、ドクトーレくんだ」

    そこにいたのはドクトーレだった。

    春の日差しの中、ドクトーレは東屋のベンチに座り、机に資料を広げて勉強しているようだ。

    話しかけて良いものだろうか。ヒストーリエはそう一瞬迷ったが、勇気を出して声をかけた。

    「おーい!ドクトーレくん」

    呼びかけると、ドクトーレは少しだけ顔を上げて会釈した。

    「この学校広いですよね。俺、最近毎日探索してるけど、まだまだ全体は回りきれてないんだ」

    ドクトーレは何も言わず、ただヒストーリエの方を見つめている。

    「えっと…ああ、俺はヒストーリエ!君と同じ生物学科生で、同じ講義受けてて……」

    少しの沈黙。そしてしばらくして、ドクトーレは初めて口を開いた。

    「すみません、なぜ私の名前を知っているのですか」

    しまった!とヒストーリエは内心焦る。

    「ごめん、ストーカーとかじゃなくて……俺、人の顔と名前を覚えるのが異常に得意でさ。自己紹介の日に聞いたのを全部覚えてて……。昔からちょっと気味悪がられるくらいで」

    言い訳じみた説明だったが、意外にもドクトーレは少し驚いた様子で呟いた。

    「私とは逆だ……」

    「そうか……!じゃあ、今度の講義で話しかけてもいいかな?何度も話したら覚えるんじゃないか?」

    「いい、ですけど」

    少しの手応えを感じ、ヒストーリエがぐいぐい話しかけると、ドクトーレは不思議そうな顔をして首を傾げた。

    「ありがとう!じゃあ、改めてよろしく!ドクトーレくん!」

    「よろしく……ヒーストンくん?」

    「あははっ、ヒストーリエだよ」

    ---

    次の日。ヒストーリエはわざとドクトーレの横の席に座ってみた。

    「おはよう!ドクトーレくん」

    「おはようございます。ええと──」

    「ヒストーリエだよ、昨日言った通り、今日も話しかけてみた!」

    ヒストーリエがそう言って笑顔を見せると、ドクトーレは「そうですか」と呟いて視線を落とす。

    嫌がってはなさそうだ。ただ、今までに出会ったことの無いタイプの反応。ヒストーリエは少し困ったが、とりあえず地道に、姿を見たら声をかけることにした。

    そうして話しかけること1ヶ月。ドクトーレはヒストーリエと会話を続けてくれるようになった。

    「ドクトーレ、おはよう!」

    「おはようございます」

    「今日もこの後は東屋か?」

    「はい、あそこは大学内で一番落ち着く場所ですから」

    「そうか……でもそろそろ台風の時期だろ?室内のお気に入りも探した方が良いんじゃないか?」

    「まあ、検討してみます」

    「そう言って探そうとしないだろ〜。先にドクトーレの好きそうな場所を見つけておいたんだ。この後一緒に見に行くぞ!」

    「面倒ですね」

    「まあまあ、静かで落ち着ける場所だから、そう言わずに見るだけでも!」

    「うーん」

    会話をしてみて分かったことが2つあった。まず1つは、ドクトーレは毎日のルーティンを大切にしているということ。空き時間は必ず東屋で勉強をしていて、昼食は必ず手作りのサンドイッチ。基本的に、このルーティン以外のことは乗り気じゃない様子だ。雨の日でも東屋で勉強している姿を見て「このままでは台風が来ても東屋にいるんじゃないだろうか」と、ヒストーリエはわりと真剣に心配している。今はドクトーレの第2の居場所を見つける計画を実行中だ。

    もう1つは、ドクトーレは見かけ通りの不思議ちゃんで、かなりの世間知らずだということだった。
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    カニせんべい

    DONE「えっ!ハンバーガー食べたことないのか!?」

    ヒストーリエは思わず耳を疑った。ドクトーレとの会話はいつでも驚きの連続だが、まさかハンバーガーを食べたことが無いとは想像もしていなかった。

    「もっとドクトーレは色々な経験をした方が良い…!」

    ドクトーレは全く気にした事が無かったが、そう力説するヒストーリエに押され、人生初のファストフード店にチャレンジすることにした。
    ドクトーレと初めてのファストフード6月に入り、雨の日が増えてきた。ドクトーレの東屋の周りにはアジサイが鮮やかに咲き始め、温室への小道を彩っている。雨の日でもドクトーレは東屋に現れたが、東屋はお世辞にも過ごしやすい場所とは言えなくなってきていた。

    湿気と日照不足、そして蚊。ヒストーリエは東屋に蚊取り線香やランタンを準備して、過ごしやすい環境作りをしていたが、風の強い日は雨が吹き込んでくるので、そういった日には嫌がるドクトーレを連れて、ドクトーレの第二の東屋(東屋に代わる室内の居場所)探しのために建物内を歩き回っていた。

    そんなある日のこと。

    「サンドイッチ忘れた」

    ヒストーリエのお昼ご飯を買いに学内のコンビニへ向かっている最中、ドクトーレがボソッと呟いた。
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