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    702_ay

    DC(赤安)、呪術(五夏)の二次創作同人サークル『702』のアカウントです。
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    <10/30 今夜帳の中で>
    【祓ったれ本舗パロ】お忍びデートに行く話です

    ##五夏

    「うげぇ。人おおっ……ゴミかよ」
    「言い方。平日だろうと休日だろうと、こういう場所の人の多さはたいして変わらないよ」
    「だってー、こんなに人多いとは思わねぇじゃん……今日は平日だよ?」
     良い子は学校や仕事で大忙しでしょ。七海がサラリーマンは十八時まで毎日お仕事だーって教えてくれたのにぃ。嘘吐きじゃんアイツ、と口を尖らしながら文句が続く。
     よく動く口ではあると常々思っていたが、改めて感心してしまった。人の多さに対するぐちから始まったと思っていたら時折、七海に対する噂話のような悪口のような愚痴も織り交ざっているため完全なるとばっちりだ。本人がいないところでぐちぐち言われているのもかわいそうなため、話の矛先を当初の『人の多さ』に戻すことにした。
    「行きたいと言ったのは悟だろう? 私は本当に行くのかと聞いたし、それでも行くと言ったのは君だ」
    「まぁ、それはそうだけどさー」
     これちょっと多すぎじゃん、と肩を落としている五条にそっと息を吐く。
     このお坊ちゃんは貸切またはレセプションパーティーのようなものを想像していたのだろうか。たとえ休日ほどでなくとも、日本を代表する人気のテーマパークなら来場者の数が多いことは考えなくてもわかるはずだ。さらにシーズンごとに開催される催しも、この十月のハロウィンが年間行事の中で、最も人気が高いと言われている。必然的に休日よりもマシというレベルなだけで人が多い。本人が想像していた人口密集度にしようとすると本気で貸切るか、閑散期の平日それも雨の日狙いでもしなければならないだろう。
     駐車場に車を止めるまでも一苦労だったのだから、きっと入園までも時間を要するに決まっている。途中で帰ろうなんて言い出す可能性も十分にあるが、まだスタート地点にも立っていないのだ。せっかくここまで来たのだから少しはテーマパークの空気に触れたいし、美々子と菜々子にお土産くらいは買って帰りたい。気分屋の相方がどこまで思い通りに動いてくれるかは神のみぞ知るところだとしても、最低限は楽しみたかった。
     そのためには、五条の機嫌を損ねることなく常にテンションを保たてなくては。
    「いつまでも車の中にいても仕方がないし、さっさと行こう。まずは何するんだっけ?」
    「そんなのペアルックコーデに着替えるところからに決まってんじゃん! 合法的に傑とペアルックができるなんて最高だな!!」
     これとこれでコーデすんの! 傑はどれも似合うから悩むんだよね。ああ、でもこっちもいいかもしれない。
     スマートフォンを出して画像をスクロールさせている五条は楽しそうだ。テーマパークにつくまでのドライブ中も、ああじゃないこうじゃないとおそらくコーディネートを考えていたらしい。何度、信号で止まるタイミングを考えられることもなく画面を見せられたか。運転中の人間によそ見を強要してくるのに呆れながら、生返事をしていたせいで最終的な結論を聞いていない。
    (お忍びだろうが、『デート』と言えば、よっぽど変なのは指定してこないだろ)
     そのあたりは安心できるはずだ。五条のセンスは正直悪くない。悪ノリをすることはあるが、その時は仕事ではなくデートなのに本当にいいのかと問えば回避ができる。たぶん。きっと。
    「はいはい。悟の好きなようにするよ」
    「さすが傑! いやー。でも、ほとんど決まってるんだけど……ひとつ問題があってさ……」
    「急に深刻そうな声を出してどうしたんだい?」
     一瞬前までの陽気な声音と違い、突然落とされた声にごくりと息を飲んだ。テーマパークに行くと決めてから楽しそうに検索をかけている五条と違い、遥か彼方に訪れた記憶しかない。当時とは勝手も大きく変わっている可能性もあって。
     来場者の多くが血眼になって手に入れたがっている数量限定の物や売り切れ必須のような物が欲しいと思っているのか。それとも謙虚に言えば、互いに日本人の標準サイズよりすこし体格がいいためサイズ感が不安なのかもしれない。大抵のグッズはフリーサイズが多いだろうが。
    「傑にどのキャラクターが似合うかってところなんだよなー! キャラ多すぎてマジ悩むんだけど」
     さていったいどんな深刻な問題が出てくるのだろうかと固唾を飲んで、五条の言葉を待っていただけに呆気に取られてしまった。確かにテーマパークらしくたくさんのキャラクターがいる。迷うくらいならメインキャラクターを選んでしまえば無難だろうに、そう言えば傑はわかってないな、なんて得意げに言われた。よっぽど自分よりも初心者のくせに。
     機嫌よく車を降りて、一人でさっさとエントランスに向かう男の背中を追いかける。特徴的な白髪がキャップで誤魔化していても、美しい水縹の瞳がサングラスで見えなくなっていても、後ろ姿ですぐに一般人とは違うことがわかる。お忍びであり、自身で周りにバレるまでの間と制約を付けたのだから、もう少し一般人に擬態することを考えて欲しいところだ。
    (存在感を消すなんて、悟には無理か……国宝みたいなものだもんな。ま、悟が楽しければいいんだけど……)
     そうやって結局は五条が楽しいなら、と甘やかしてしまう所が駄目な所だと言われそうではある。
    「なぁなぁ。こういう所でいつか僕たちもコラボしたくない?」
    「ここは制約が厳しいみたいだから難しいかもしれないけど、西にあるテーマパークなら可能性あるんじゃないかな? あそこは色々とコラボしているようだけど……さすがに芸人はないか」
    「マジか! 伊地知にたのもーと!」
     ここでどうして頼んで仕事が入ってくると思うのだろうか。しかもテレビ出演や雑誌の取材というまだハードルの低そうな内容ではなく、テーマパークとのコラボだ。また伊地知が頭を悩ませそうだ。今日のお土産はお菓子の他に余計なことを言ってしまった償いを込めて胃薬も渡そう。
     久しぶりのオフ。その貴重なオフに人が多い、疲れるような所に行きたいとは思わないが、五条が楽しそうなので良しとするしかない。一度言い出すと聞かないのもまた五条だ。オフとはいっても、半分仕事のようなものでもある。
    ――デート?
     ひとつ瞬いた。当然のように告げてきた男はこちらの反応を気にすることもなく寛いでいる。まるで決定事項だと言わんばかりだ。もとより相手に選択肢を与える概念がないことは長い付き合いの中で知っているが、やはり時折、唐突さについていけないことがある。
     戸惑いが声音に滲み出たにも関わらず、水縹の瞳は変わらずにテレビに向けられたままだ。誰が見てもいい態度とは言わないだろう。ましてや。
    (こっちは悟の部屋の片づけしているんだけどな……)
     本人は全く片付ける気がないらしい。
     人の家に居座って滅多に自宅に戻ろうとしない男の家の様子を聞けば、プレゼントが山のように積み上がったままだと言うではないか。呆れて片付けを申し出たものの、単に大袈裟なのだろうと言葉半分の惨状を想像していたのを裏切られた。文字通り積み上がっているだけの状態に頭が痛くなって。ハウスキーパーを雇えば室内の清潔さは保たれるが、荷物の片付けはしてくれないから仕方ないとにべもなく言う五条に呆れてしまったか。
     必要があれば片付けはするし、できる男だ。ましてやハウスキーパーのような他人が私室に入ることを嫌う繊細さもある。そんな男が時々こうやって大雑把な様子を見せるせいで、線引きがいまいちわからないままだ。
    ――そ。お忍びデート
    ――お忍びの意味を検索してから、もう一度提案してきてくれるかい?
    ――あ? 喧嘩売ってんの?
    ――なんだ。ちゃんと知っているなら話が早い。私には到底、悟にお忍びができるとは思わないんだけど……
    ――それを言うなら僕より傑のほうじゃね? その前髪はキャップやマスクでは隠せないし
    ――悟の王子様オーラよりよっぽど周りに紛れられると思うけど
    ――何それ?
     片付けに一区切りをつけて五条の隣に座った。自宅では座る場所も限定されているが、ここには広いソファがあるというのに結局肩が触れ合うような距離に座ってしまう。慣れとは恐ろしいものだ。しかも五条もそれを当然とばかりに受け入れている。
     きょとんと首を傾げる男に小さく笑った。こういうところが可愛いとファンをはじめ周りに思わせるのだろう。年齢よりもうんと幼く見えてしまう。顔がいいとはたちが悪い。
    ――王子様って言われているみたいだよ、君
    ――ふーん。顔がいいってこと? けど、不特定多数の王子様になっても仕方ないしなー。あ、だったら今度、馬で傑姫の家に行くわ
    ――誰が姫だ、誰が。私なんかよりもよっぽど悟のほうが姫にならないか? その綺麗な顔にピッタリじゃないか
    ――ええー。僕より傑でしょ。あー、でも自慢の筋肉でどうにかしそうだな。傑姫は王子の助けなんて待ってないで、自分で魔王倒しちゃいそう
    ――それは姫ではないだろ
    ――それでも僕にとってはお姫様だもん。で、僕は王子様ね
     高身長に分類される上にガタイもいい男に姫はさすがにないだろう。五条も身長は可愛くないが、顔だけなら女優やアイドルなんかよりもよっぽど可愛い。だから、姫と言うなら五条だと誰もが言うはずだ。
    ――あ、言わなくてもわかっていると思うけど、公道での馬の利用は迷惑だからやめなよ
     認識の訂正を一応しつつも、それより気になることを口にしていたことを思い出して慌てて乗馬について言及すれば、えー、と口を尖らす五条に釘を刺してよかったと心底安堵した。五条の場合はシャレにならない時がある。本気で馬に乗って登場してもおかしくない男だ。しかも白馬で。それが様になっていそうで怖い。
    ――でもさー。法律的には問題なくね? 軽車両扱いだろ
    ――『五条悟、公道で乗馬をする』なんてトップニュースを私は見たくないね
    ――ちぇー。面白そうなのに
     これだけ釘を刺しておけばおそらく馬に乗っての登場はないはずだ。そもそも馬に乗って迎えに行くなんて発想は凡人にはいきつかないだろうに。
     仮に五条が乗馬するとして、その場合の馬はレンタルなのかそれとも実家の馬なのか。馬主だと言われても、五条ならそうかと納得してしまいそうだが、とりあえずこの話を引き伸ばすのは得策ではない。話を元に戻すのが先決だ。
    ――それで? 今回は何を食べに行きたいんだい?  明日は次の配信の動画を撮ろうと言っていたと思うんだけど
    ――あ、あー……
    ――その反応は確実に忘れていたね
    ――ち、ちげぇし! それに別にネタ変えたっていいだろ!? だから遊園地行こうぜ! んで、見つかったら即終わりのドキドキワクワクお忍びデート!
     スマートフォンが表示しているのは誰もが知っているテーマパークだった。遊園地なんて可愛い規模の場所ではなく、常に人が多い人気のテーマパーク。九十九パーセントの確率でファンにバレる未来が見えている。むしろエントランスに向かう途中で終わる気がする。それはそれで動画のネタとなるのかもしれない。
     滞在時間僅か五分! 入場前に終了! なんてタイトルで残念そうな五条をサムネにすれば完ぺきだろうか。動画の内容がすぐに想像できるが、五条がまた余計なことでもしたのだろうとファンは五条の突飛な行動に期待を寄せるはず。
    ――これは遊園地というよりテーマパークだろ
    ――細かいことはどうでもいいじゃん。お揃いのカチューシャつけて、ポップコーンとかチュロスとか食いたいんだよねー!
    ――カチューシャなんて女の子や学生が付けたら可愛いものだけど、私たちの年齢では悪目立ちするだろう。しかもごつい男同士だよ? 現地でファンに見られるのもさすがにきつくないかい……?
    ――こういう場所はカチューシャ付けるほうが浮かねぇって言ってたぞ。つーか、なんでバレる前提なんだよ!!
     不服そうな五条が勢いのままに入園券を購入していたが、逆にどうしてバレないという考えができるのか問い質したい。どう考えても、五条は目立つ。それはもう十メートル。百メートルと離れていようと存在自体が目立つのにバレないわけがない。ひとえに善良なファンの優しさの上で成り立っているだけだ。
    「何してんだよー! 傑!!」
    「はいはい」
     早くしろよー、と間延びして聞こえてくる声は明らかに浮かれている。きっと一日、強制終了することなく楽しむことができると思っているのだろう。すでに周囲の視線を集めているというのに。
    (これで紛れているつもりなんだろうけど……ドキドキワクワクお忍びデートはどうしたんだか……)
     このまま入園ゲートをくぐると一目散にお土産売り場に行くつもりなのだろう。そして、あーだ、こーだと車の中でも聞いたようなことを言いながらカチューシャや帽子を選んで。同じキャラクターにするのか、それとも別々のキャラクターにするのか。五条の今の気分がわからないが、動画としてアップすることを考えるならお揃いのほうがいいだろうか。さすがにペアルックまではやりすぎだと思うので、止めようとは思うが。
     そっと背後から近づいてくる気配がある。軽い足音は遠慮がちにこちらを伺うようなそぶりを見せていた。視線だけを後に向けると大学生くらいの女の子たちが小声で話している。
     もしかして。でもこのスタイルだよ? 本物? 嘘でしょ。私たち命日じゃん。ドッキリ? 撮影?
     混乱と共に聞こえてくる単語にそっと息を吐き、顔を後に向けた。女子大生たちと目が合うと、驚きに息を止めていたが構わず、人差し指だけを口元に持っていき、ウィンクをひとつする。それから音を出さずにゆっくりと口だけを動かした。
     秘密にしてね。
     かなり黒寄りのグレーではあるが、声をかけられる前だったのだから問題ないだろう。五条も気付いていないようだし、きっとあの子たちも言いふらしたりはしないはず。少なくとも五条が遊ぶ間くらいは。
    (せめて半日くらいは遊ばせてあげたいしね……)
     エントランスにはまだ片手で足りるだろう年齢の子どもたちも多い。今回は五条と来ることになったが、今度は美々子や菜々子たちを連れてきてあげてもいいかもしれない。さすがに高校生にもなると親代わりの人間と行くより友だちと行くほうが楽しいかもしれないが。それでも、声をかければあの子たちは喜んでくれるはずだ。
    「なんか、傑、上の空? 何考えてんの?」
    「ん? 悟とのデートのことしか考えてないよ。ほら、悟は絶叫乗れたかなって」
    「はぁ!? 馬鹿にすんなよ。超得意だし! 写真に決め顔でピースだってしてやるわ。チューでもいいけど」
    「馬鹿はそっちだろ。私たち以外にも乗るんだから、周りの迷惑を考えな」
     ちぇー、と口を尖らせているところを見ると本気でする気だったのかもしれない。外では駄目だと散々言い聞かせてきたのだから、しないはずだと思いたいが。それとも浮かれたテンションのままというのだろうか。いやいや、それはないだろう。さすがに、誰が考えても公共の場だ。そんなところでキスなど信じられない。
     チケット購入は事前に済ませているので、このままスムーズに入園はできそうだ。即終了のタイムリミットまでの猶予も先ほどので多少は伸びただろうか。油断はできないとは言っても。
     今にも駆け出しそうな五条のテンションはうなぎ登りのようで、すげー、すげー、と語彙力が小学生以下になっている様子に笑みが零れた。ワクワクドキドキお忍びデートはまだ始まったばかりだ。

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