小さなクリスマスの富K「こんな時間に来てもらって悪かったね」
痛めた腰を摩りながら老人は申し訳なさそうに眉を下げた。
「いえいえ、明日まで我慢するのも診療所まで来るのも大変でしょう。いつでも気にせず言ってくださいね。湿布と、痛み止めも出しておきます。それから……」
富永は往診カバンから必要なものを取り出して説明しながら渡していく。
「夕食はもう?」
奥さんが湯気の立つ湯呑を乗せたおぼんを持ってキッチンから戻って来た。これから寒い外へ出ることを思い、ありがたく頂くことにする。
「ええ、先ほどすませました。お茶いただきます」
「ケーキは食べたんか? これからか?」
老人の言葉に富永は一瞬どうしてそんな質問をするのだろうとさえ思った。視界に入った壁掛けのカレンダーのおかげでやや遅れてクリスマスイブであることを自覚した。
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