第7回 ケンタとカズトのきらきらラジオ 【せだいのおはなし】〈2024/07/04〉 「ケンタと〜?」
「カズトの」
「きらきらラジオ」
「きらきらラジオ」
「ハイどうも皆さんこんにちは!随分長らくご無沙汰でした。 医者2人の日常を当院所有のラジオカーからざっくばらんにお届けする地域限定不定期放送ラジオ番組。ケンタとカズトのきらきらラジオ、パーソナリティを勤めますのは私、院長やってます富永研太。そしてパートナーはいつものこの方!」
「医師をやっております神代一人です」
「この番組は『明るさで元気をサポートみんなの病院』の富永総合病院の提供でお送りいたします。
つい先程までのオフレコは超ハイテンションだったんですけどね。お仕事は落ち着いて話したいと思います。チャッチャとコレを終わらせてオレ達ご飯行かなきゃなんで」
「いや、仕事は丁寧にな? 」
「刺身と寿司と海鮮丼、どれが良いですか? 」
「海鮮丼で」
「オッケーです!即答やや前のめり頂きました!豪快に丼モノ行きましょう!…オナカ空いてるのねwwwあ、頷いてるし。…あ、でもコレ遊びじゃないですからね?マジメにね?」
「うむ。分かっている」
「あくまでお仕事。インターネット環境が無い方々への情報提供兼来院のハードルを下げるための番組です。
Kぇとゆっくりお喋りしたいなぁ〜とか美味しいご飯一緒にたべたいなぁ〜とかオレがどうにかして病院抜け出せないかなぁ〜とか何とかしてアンタを診療所から出張扱いで円満に連れ出せないかなぁ〜とか不埒なことは」
「考えてないのか?」
「いや。そればっか考えてます」
「無駄に潔いな… 」
「それはもう。職場からも実家からも張り切って行って来いとの全面バックアップ有りです。何だったらK先生連れて帰って来いとwww」
「 …大丈夫なのか富総。オモシロ病院になってないか?」
「ナニ言ってるんスかオレをここへ送り出すため大真面目に一枚岩よ?ウチの病院。みんな勢い凄いよ?何ならちょっと怖いよ⁈」
「確かに。たまに怖いこともある… 」
「あ、若干目を伏せた?ごめんね、みんな鼻息荒くて怖いよねオレも怖いもん。
院長より業務連絡。富総全関係者へ。まずは落ち着いて。嬉しいのは分かるけど、この人を驚かせないよう冷静かつ穏やかに対応しよう。以上連絡終了」
「…それをお前が言うのが凄いな。お前も落ち着け?」
「オレは枠外です。オレは良いんですwww
そしてですね、K。この放送、相変わらずしっちゃかめっちゃか不思議空間です。ではK先生に質問です。 今診療所に居るのは?」
「譲介」
「一也君は?」
「東京在住の医大生」
「オッケー。了解です。時代的にはそのあたりですね。では。以上の事柄を踏まえまして。
最近お札のデザインが変わりましたね!」
「ちょっとまて本当にいつなんだ今は⁈」
「それはもう完膚無きまでに不思議空間です。身近なテーマを積極的に取り込んでいくスタイルで。なお時空は歪みまくっております」
「節操無しだなぁ…」
「それはもう。いやでもね、結構おっきい出来事じゃないですか。お札モデルチェンジって。てか前回いやもう前々回か、のモデルチェンジ。いつだったか覚えてます?」
「千円札が野口英世に変更された時期か?」
「そうそう」
「 紙幣の変更は確か20年ごとだったと思うが……20年⁈」
「そう。オレが無医村(笑)に赴任した年の秋っスよ」
「お前が来た時の千円札は夏目漱石⁈」
「そーなんですよwwwあの雪の日、バス乗る前に小銭へ両替した紙幣は夏目先生www」
「嘘だろう⁈時空おかしくないか⁈何か間違ってないか⁈」
「こっちの時空は合ってるんですよ。ビックリですよね。でね、夏目漱石から野口英世に変わったのって、なんかついこの前ってカンジしません?」
「…する。今驚いている。正直、新紙幣の発行タイミングが早いのではないかと感じていた」
「ですよねー!いやぁ20年経っちゃってますよ。何故か一也君大学生だけどwww」
「…一也の件は置いておこう。…前々前回の伊藤博文から夏目漱石の記憶が強烈だったからな。子供の目で見る「お金が変わる」はとても不思議な感覚だった」
「ですよねぇ。あの時はデザインもお札のサイズもかなり変わりましたしね」
「そうだなぁ…。俺たちの世代があの古い紙幣を実際に使用した記憶を持つ最後の世代かもしれないな」
「そうっスねぇ」
「500円札とか」
「…え…?」
「…は?…おいっ⁈」
「500円…札?」
「ちょっと待て!聞き捨てならんぞっ!!何だその顔は⁈」
「え…だって500円…札⁈」
「……富永。残念だ。たった今お前と俺の間には渡ることのできない暗くて深い川が流れた」
「まって⁈ちょっと待って⁈いやいや何を」
「今の今までお前とは経験知識価値観を共有していると思っていたが…俺の独りよがりだったようだな。押し付けてしまって済まなかった…」
「ええーっ何よーっ!何でよーっ‼︎」
「俺は今深く傷ついている…」
「モアイらないで下さいよーっ‼︎あ、PA卓に突っ伏した⁈」
「お前だってなぁ、こないだ夜中に若いスタッフにテレカが通じなかったと言って泣きながら電話掛けてきただろうがっ!」
「そーですけど!いや、あれはショックでしたよ⁈テレフォンカード知らないのっ?マジで?って、あ、そうよね?アレと同じのあの気分⁈」
「いや、お前なら分かってくれると無防備に信じていた分傷が深い。しかもお前にこの傷は縫えない。正直致命傷に近い」
「ええーっ!そんなぁ‼︎」
「…刈矢に縫ってもらう。俊介でも良い」
「ああ、刈矢先生ならって、なんか腹立つなぁもう‼︎えーと、ちょっと待って下さいよ?知らない訳ではないんです。見たことはありますよ?500円札。…個人的に使った覚えは無いですけど…でもほら、あの頃まだオレ達ほんの幼児だったし!それに500円玉みたいな硬貨って地域差あるから!ウチの病院、当時からそこそこ患者さんも人数いたから!お釣りなんかで新しいモノの流通は早かったから!だってあの村、夏目漱石から野口英世チェンジも少し時間かかったじゃないスか‼︎」
「まぁなぁ。確かに新しい物が来るのは相当遅かったな。俺も当時は勿論未就学児だったしな」
「そのお金はお小遣いとしてですか?」
「いや。初めてのお使い」
「⁈⁈Kぇの⁈初めてのおつかいーっ⁈」
「そう。母から託された任務は牛乳」
「マジでーっ⁈ひとりでー⁈」
「ひとりで」
「500円札握りしめて?」
「500円札入りのがまぐち握りしめて」
「くっわ‼︎ぐわぁぁあああ可愛い‼︎それは悪魔的に天使カワイイ‼︎」
「ラジオカー狭いから激しく悶えるな」
「ぬぁあああぁっ‼︎ 『きりっ!』っとして『ぎゅっ!』としてたんでしょきっと!」
「知らんが。多分そうだったんだろうなぁ」
「うっわ他人事みたいに言ってるけど。ソレ一撃必殺の可愛さよ⁈無敵よ⁈悪いヒトに攫われちゃうよ⁈」
「無敵なのに攫われるのか?」
「いやぁ、当時の村の皆さんハラハラしながらドキドキで神代さんちのかずと君見守ってたんだろうなぁ」
「そんな事は無いと思う」
「いやいや、診療所から村に続くあの道の主だった大木全てに村の皆さんが自主的に張り付いていたと予想しますね。アンタの視界に入らないようにコソ〜っと。配備人数スゲェ居そうwww」
「…そう言われてみれば行きも帰りもイシさんや番頭さん、他の方々も道中に居たな…」
「でしょwwwもしオレも現場にいたらビシッと見守りますよ!距離を取りつつ幼な子かずと君をガッチガチに警護しますよ‼︎」
「どんな時間軸だ。お前も幼児だろう?」
「いやオレはこのままで」
「…お前が攫いそうじゃないか?」
「あ、失礼。目に本心が」
「実際は村の人に何人も会いながら田中商店で牛乳を無事購入した。その時払ったのが500円札だった」
「それは忘れませんよね!そっか〜アンタの初めてのお使いかぁ…。夢広がりまくるなぁ…。それに田中商店懐かしーっ!オレもよく行きましたカップラーメン買いにwwwあのお店ならいっぱいオマケを貰ったんじゃないですか?」
「うむ。後から気が付いたのだが購入した牛乳代金の数倍のお菓子をお駄賃として頂いた」
「分かる!分かるよ田中のおやっさん! オマケあげちゃうその気持ち!かずと君のお初のお買い物でしょ⁈そりゃね、店ごと全部オマケしちゃう勢い。…そうですね。もしアンタが富永商店に牛乳買いに来てくれたら特典でマンションか別荘プレゼントします」
「ええ…?その特典怖いぞ…」
「うっわ引いてるwww お買い物特典に島いっこプレゼントとか言ってないからまだマシでしょーっ⁈」
「全くマシではないが⁈ま、兎に角。金銭に関する一番古い記憶はその時のものだと言うことだ。そしてお前は500円札を覚えていない、いや『500円札を知らない世代』だと言うことを今回は覚えておく」
「いやーっ!根に持ってるよこの人⁈ この件は忘れて?いや、きっとオレも使った事あるはずなんスよ!たいしてトシ違わないんだから!頑張って思い出すから!そうだ!お便りが来てたんだ!」
「露骨に話題を変えたな?」
「イエそんなコトはありませんヨー。 さて、当番組準レギュラー東京都にお住まいのラジオネーム『華麗に宙を舞う悩める魅惑のチキンオムライス』さんことハガキ職人黒須一也君からのおハガキ。『K先生富永先生こんにちは』ハイこんにちは」
「ラジオネームがどうしようも無いな」
「何というかこう、ストレスから来るヤケクソ感を感じますねwww『僕は医学部の友人たちと街に出掛けた際、稀に倒れた人に出会います。その時は友人たちと力を合わせ救命救護に努めております。 しかし、同郷の友人と2人っきりで外出するとそれはそれはもう高確率で倒れる人、怪我をした人、交通事故現場などに遭遇します。その場所で自分の習い憶えた知識や技術を役立て誰かの支えになることができるのは喜びです。なのですが。なのですがやはり彼女と2人きりの貴重な時間だったのにとふと思ってしまいます。宮坂さんと落ち着いて共に行動できる日は来るのでしょうか。こんな情け無い僕に喝を下さい。K先生富永先生よろしくお願いいたします』 何だかペロッと同郷のお友達の名前が記載されておりますが。まぁ良いとしましょう。このラジオを聞いて『華麗に(中略)ライス』さんは悶え苦しんでいるかもしれませんが。 それではK先生。この件は如何に?」
「うむ。諦めろ。一族の体質だ」
「でっすよね〜。アンタと一緒にいた頃オレも『わぁ…』って思ってたもんwww」
「その状態で落ち着いて共に行動すれば良い。と、言うかそれしか無い」
「一也君、人間が沢山居る場所はね、もうどうしようも無いと思うよ?エンジン付いてる物も機械類も鬼門だしね。何かコッチへ向かって来たりアタマの上から降って来たり崖下に落ちて行くじゃない?もう物理的にそんな物が無い……」
「?どうした?」
「…島」
「む?」
「一也君!島です!」
「うむ?」
「人のいない島へ行きましょう!いやいっそ無人島買いましょう!!そう!物理的にヒトが居なければ急患も出ないんだよ!!エンジン付いてるモノも始めから無ければ良いんだよ!!で、自分の私有地だったらそのあたりも思うがままなんだよ!」
「いやちょっと待て⁈…ん?…しかし、一理ある、のか?」
「大丈夫隣で速攻丸め込まれてるヒトいるから!きっと彼女も丸め込まれてくれるから‼︎てか、オレも買うから島!」
「そんな近所で牛乳買うようなノリで言われても?」
「いやいや、人生のモチベーション大事でしょ?さぁ明日からも頑張ろうオレ。新紙幣たんまり貯めようオレ!そしていつか2人っきりでウフフフフwww」
「そうだな。2人しか居ないのならば、まずは安全な真水の確保からだな」
「…あれ?」
「水さえあれば暫くは活動できる。湧水とまで贅沢は言わんがせめて川があれば良いな」
「あれあれ?」
「現地の気候にも拠るがなるべく早く火が欲しい。手に入れた水も煮沸できる」
「あれれれれ?南の方の天国に一番近い島的な素敵島じゃなくて?」
「機械重機類の存在しない無人島だろう?気を抜くと本当の天国行きになるぞ。効率は落ちるが単独行動は控えた方が良い」
「いやまぁいつも一緒でってトコはクリアしてるけれども。なんかオレが思ってたのと違うような気がするんですが」
「眠る場所の確保も重要だな。夜間の低気温対策として身を寄せ合って体温保持は必要かもしれない」
「いやコレもアリ‼︎てかアリ‼︎最高‼︎採用‼︎」
「最後は食料問題だな」
「じゃあねオレ魚釣って食料調達しますよ!アンタのために大物ゲットしますから‼︎カニも取って来ますよ‼︎」
「俺に識別がつく植生なら山菜を採取してこよう。野草にも薬効成分がある物が見つかるかもしれんしな」
「いやぁお互い医者だとこんな時も安心ねwww島買うってか漂流して漂着してるっぽいけどwww」
「そうだな。しかしお前の島なんだろう?安心してサバイバルを楽しめると思う」
「うん、オレの島wwwwで、アンタ今とっても楽しそうねwwww
……いっちょ真面目に買いますか島。
てな訳で一也君。島です。島を買いましょう!一緒にいるお相手が女医さん(予定)ならお互いの健康面も安心! 急患はいない交通事故も起こらない。2人でジックリ無人島を開拓して下さい!」
「だが待てそれは女性にとって『楽しい』のか?その助言が元でまた一也が『ズレてる系男子』にならんか?」
「いやそれは分かんない!」
「俺たちは楽しいんだがなぁ。良かれと思って一也にはかなり斜め上の教育を施してしまったからな」
「あ、ズレてる自覚ある?実はオレもwww」
「俺たちの文化圏に合わせて育成してしまったからなぁ。学友たちと娯楽文化の世代差がかなりあると思うぞ?…あいつが産まれた年代前後の楽曲聞かせ倒したぞ?」
「…そうですね。色々と思い当たる節が」
「うむ。最初の子は難しいな。どこから間違ったんだろう…カラオケの持ち歌は大丈夫だろうか…」
「深刻に心配するとこソコなのwww⁈弟子思いのK先生の思案顔拝んだところでね、今回の放送も終了時刻間際となりました。…ホントに綺麗な悩ましい表情するよね。内容がアレだけどwww
大丈夫ですよ。一也君シッカリしてるから。大都会の学校で年齢相応の世間知を身に付けていきますよ!……多分。さぁ気分切り替えて、オレたちは今からご飯行かなきゃですよ?海鮮丼!」
「そうだったな海鮮丼!」
「そんな訳でお食事タイムとなりましたので、放送はここまで! この番組は『明るさで元気をサポートみんなの病院』の富永総合病院の提供でお送りいたしました。
地域限定不定期放送『ケンタとカズトのきらきらラジオ』次回もお楽しみに!
それではお別れの曲はB'zで 『MR. ROLLING THUNDER』」
「…やっぱり俺たち漂流漂着して遭難してないか?」
「『太陽のKomachi Angel』の方が良かった?」
「…いや、それはちょっと」
終
【録音終了後】
「…島に船、突っ込んで来ないか…?」
「そのクラスはもう腹を括りましょう!」