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    ひそひそ心

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    ひそひそ心

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    『後悔』星の数あるひとつの話

    ##SKY創作
    ##プロット
    ##BL

    『後悔』星の数あるひとつの話[ベジトの家、工房内]
    レイムが薬を飲む。
    レ「まずいな」
    ベ「薬にうまいもまずいもあるわけなかろう!」
    レ「いや、ベジトの薬は全部不味ィ。これはとくにひでぇ。で、こりゃなんの薬だ?」
    べ「結晶化の薬じゃ。普通の星の子が飲めば身体が結晶化して死ぬ」
    レ「なんてもん作ってんだ」
    べ「毒と対して変わらんじゃろ」
    レ「モノによるだろ…」
    べ「して、身体の調子はどうじゃ?」
    体を動かすレイム。
    レ「少し身体が軋む」
    べ「ふむ。改良の余地はあるがとりあえず成功じゃろ」
    レ「ああ?」
    ベジトがレイムの指を折る。
    レ「!!何しやがる!って、あれ?」
    べ「痛くないじゃろ?今お主の身体は結晶化しておる。故に痛みを感じない。そして折れた指は近づければ元に戻る」
    べ「毒をも良薬とするわし天才じゃなぁ!褒め称えよ」
    レ「オレ以外にゃ毒なんだから絶対に使うなよ」
    べ「当たり前じゃ。そもそもお主が、腕をなくす大怪我して帰ってくるから作ったのではないか」
    レ「でっけぇ組織に侵入となりゃ怪我だってするだろ。こっちは一人なんだ。逃げられるなら腕だろうが足だろうがくれてやる」
    べ「それで全てなくしたらどうするつもりじゃ?」
    レ「そんときゃそん時だろ」
    べ「まだ万能薬が効くから良いが、お主の場合、薬の良い悪いに関係なく耐性がつく。万能薬にまで耐性がついたら二度と生えてこんのだぞ」
    レ「そりゃ困るな。〇〇〇しにくい」
    べ「じゃからこの薬を作ったんじゃよ。他の者ならただの毒じゃが、お主は耐性を一応調節できる。都合が悪ければすぐに耐性をつけ、都合の良い部分は服用のたび徐々に耐性をつける。簡単に言うなれば、今の所お主にとってこれは回復薬そのものじゃよ。」
    レ「んじゃ、これ以上の耐性はつけねぇでおくよ」
    べ「そうしておくれ」
    ク「レイム兄さん。そろそろ行くよ」
    クルスに向かってレイムが頷く。
    べ「今日は捨て地のギミックの修理じゃったか?」
    ク「はい。暗黒竜避けの練習で失敗してぶつかった拍子にダイヤに亀裂が入ったようで、装置に異常がないかも点検して欲しいと」
    べ「なるほど。まぁ、ラカウンがお主の護衛、ランガイの部隊が周囲の警戒をするらしいから問題はなかろう。あとで芙蓉に昼飯を持って行かせよう」
    ク「はい!ありがとうございます」
    べ「うむ。いってらっしゃい」
    ク「行ってきます」
    クルスに続いてレイムも立ち去る。
    べ「ん?」
    レイムの後ろに蝶が舞う。
    べ「蝶の気配?……何事もないと良いがのぉ」


    [捨て地神殿前の戦場跡]
    [落書きしてるレイム。]
    ク「よし」
    レ『終わったか?』
    ク「ん〜。ダイヤは修復できたけど、やっぱり装置の中で接触不良が起きてるようだね。解体して直すからもう少し時間かかるかも」
    レ『そうか。少し外していいか?』
    ク「いいよ。どこ行くの?」
    レ『すぐ近くのアンバスの種を取りに』
    ク「あれ?今日、玄湖さんの所に行く日だっけ?」
    レ『いや。この前、約束破っちまったからな。玄湖の奴カンカンだろうな』くつくつと笑う
    ク「あはは、大怪我だったからね。じゃあ、僕も早く終わらせられるように頑張るよ」
    レ『芙蓉が来た時はタマヤの魔法で知らせてくれ』
    ク「芙蓉がくるのは、まだ先だから大丈夫だよ。いってらっしゃい」
    レイムが頷くと飛び去る。クルスは再び修理に入る。

    [捨て地墓場]
    ネ「お兄様〜お疲れ様〜」
    芙「お疲れ様です」
    お「オーランネビィと芙蓉か」
    桃「ネビィちゃんと芙蓉ちゃんじゃない?お久しぶり〜」
    ネ「桃ちゃ〜ん!相変わらず元気そうね!」
    芙「桃ちゃんさん。お久しぶりです」
    ネ「新作コスメ入荷したから、お休みの時に寄ってよ〜」
    桃「いくいく〜」
    お「どうした?」
    芙「ベジトさまから、レイムさんとクルスさまにお弁当を届けるよにと仰せつかりました。こちらはランガイの分です」
    芙蓉からお弁当を受け取る。
    お「悪いな」
    芙「いいえ〜」
    ネ「私は、商会に行く前に、芙蓉が迷わないようにその付き添いよ」
    お「なるほど。帰りは少尉に任せよう」
    桃「任せてね」
    芙「すみません。お世話になります」
    お「レイムレースとクルスニエはこの先だ。弁当を渡したらすぐに戻ってこい」
    ネ「じゃあ、私は商会の方へ行くわ」
    芙「はい!みなさんお仕事頑張ってくださいね」
    お「ああ」桃「は〜い」ネ「ええ」

    [捨て地神殿前の戦場跡から少し離れた場所]
    玄『なんでこの前こなかったんですカ?飛び方を教えてくださる約束しましたよね?』
    レ「うるせぇ。ヘマこいて行けなかったんだよ。」
    玄『ワタシも暇ではないんですヨ。どう埋め合わせしてくださるんですか?』
    レ「今、テメェが欲しがってたアンバスの種を採取してる最中だ。クルスの用事が終わったらそっち向かうから大人しく待ってやがれ!」
    玄『はぁ?今日来るんですカ?こっちの都合も考えてください』
    レ「テメェ、忙しい時は連絡してこねぇだろうが!」
    玄『失礼ですネ。ワタシだって忙しいんですよ!アナタが連絡もなく約束をすっぽかすからわざわざ連絡したというのに』
    レ「だからオレは約束が嫌いなんだって前から言ってんじゃねぇか!」
    玄『はぁ…怪我はもう平気なんですか?』
    レ「ああ、ベジトの薬が効いてるからな」
    玄『効かなくなったら、いつでも来てくださいね』
    レ「んで、高額請求か?行かねェよヤブ医者」
    玄『本当に口が悪いですね。クズニート』
    レイムの羽角が動く
    レ「……っと」
    玄『レイムさん?』
    レ「通信を切るぞ」
    玄『えっ!ちょっと!!』ブツ
    レイムがクルスのいる方向へと飛び立つ。

    [捨て地神殿前の戦場跡]
    ク「あれがこうなって、ここの接続はうまくいってるようだから、この奥に問題がありそうだな。もう少し解体しないとダメか。」
    芙(没頭してますねぇ。これは声をかけても聞こえないかもしれません)
    芙蓉はレイムの姿を探す。
    芙(レイムさんの反応はありませんね。困りました……)
    カランッという音が聞こえる。
    芙「クルスさま、何か落とされましたよ」
    芙蓉が落ちたダイヤに手を伸ばす。
    ク「ああ、ごめんね。レイムにぃ……芙蓉!!だめだ!!!」
    芙「え?」
    ダイヤが赤く発光し芙蓉を包み込む。
    クルスは弾かれるようにして飛ばされる。
    ク「芙蓉!!!」
    目の前に暗黒竜が現れ、クルスは大きく目を見開いた。
    暗黒竜がクルスに襲いかかる。間一髪でレイムが助けに入る。
    ク「レイム兄さん!」
    レ「何がどうなってやがる!?」
    ク「芙蓉が!」
    クルスが暗黒竜の背後にいる芙蓉を指さす。
    耳飾りの通信機に電流が走る。
    レ(チッ!ダイヤが芙蓉に反応してやがる)
    レイムは耳飾りのダイヤを壊す。

    玄「レイムさん…」

    周囲に眠っていた暗黒竜が目を覚まし、レイム達の方へ忍び寄る。
    ク「そんな!装置はまだ壊れてるのに……」
    レ「芙蓉に反応して起きやがった!とにかく逃げるぞ!」
    ク「待って!芙蓉をここに置いていくつもりなの!?」
    レ「ランガイ達の部隊が近くにいるだろ。あとは任せてオレ達はズラかるんだ」
    ク「そんな事をしたら芙蓉が殺されちゃうじゃないか!!」
    レ「ああなった以上、芙蓉も覚悟の上だ」
    ク「芙蓉は僕たちの”きょうだい”だよ!!」
    レ「!!」
    レイムにライムレースの姿が一瞬過ぎる。
    レ「うっ」
    レイムが頭を押さえる。
    ク「レイム兄さんなら芙蓉を助けられるんじゃないの?!」
    レ「……無理だ」
    ク「こうなったのは僕のせいなんだ。だから、芙蓉を見捨てるわけにはいかない!レイム兄さんが助けてくれないのなら僕が助ける!」
    レ「クルス!待て!」
    ク「レイム兄さん」
    クルスが走ろうとするのをレイムが止める。
    レ「テメェが行ったって芙蓉を助けられやしねぇよ。クルスはランガイに知らせろ。アイツなら大鳴きすりゃ異常に気づく」
    ク「!…はい!!」
    レイムが芙蓉の方へ向き直ると、大量のカニと暗黒竜が4体待ち構えている。
    レ「はは…震えてやがる。」
    壊れた耳飾りを触る。
    レ「約束か…。クソッタレが!」
    レイムが芙蓉の方へ飛び込む。
    クルスはそれに続いて大鳴きをした。

    [捨て地墓場]
    お(クルスニエ?)
    お「少尉」
    桃「なぁに?」
    お「すまんが、奥の様子を見てくる。15分で俺が戻らなければ隊を動かして奥に来い」
    桃「私が様子を見に行きましょうか?」
    お「いや、問題ない。俺が行く」
    桃「分かったわ〜。伝令出しとく」

    [捨て地神殿前の戦場跡]
    おじさんがクルスの元へワープしてくる。
    お「こ…れは?」
    ク「兄さん!兄さん!!ごめんなさい」
    お「芙蓉が暴走したのか?レイムレースは何を?」
    ク「僕が芙蓉を助けて欲しいって頼んだんです」
    お「なに?」
    おじさんは一瞬クルスの言葉に動揺する。
    お「とにかく、ここは敵の攻撃範囲だ。もう少し後ろに下がるぞ。」
    ク「は…はい!」
    クルスの手を繋いで後ろへと飛ぶ。
    お(くそ!レイムレース!約束が違うぞ)
    レイムの方を見る。

    [回想:ベジトの家]
    レ「つまり、マリは闇に近いからダイヤに触ると闇の生物が○○○○のように生み出されると?」
    べ「そうじゃ。今はまだ幼いゆえ、闇のカニだけで済んでおるが、成長したらおそらく暗黒竜まで生み出すことが可能じゃろう」
    お「暗黒竜一体ならまだ良いが、複数体呼び出されたら流石にお手上げだな」
    べ「うむ。マリが大きくなって暴走した際は、ラカウンは無闇に突っ込んではならんぞ。ランガイはわしと約束した通り速やかにマリを始末せよ」
    お「分かった」
    レ「りょーかい」

    [捨て地神殿前の戦場跡]
    レイムは襲いくる暗黒竜やカニを躱す。
    レ(もう少し)
    芙蓉が持つダイヤに右手を伸ばした。
    レ「目を覚ませ!芙蓉!!」
    レイムが叫ぶのも虚しく、差し出された右手が上からの衝撃で外れる。
    レ「!」
    続いて上から喉、腹部、腿に衝撃が来る。
    レ「…ッ!」
    おじさんが反応し、続いてクルスが振り返る。
    ク・お「!!!」
    芙蓉の真後ろから、暗黒竜が生み出され、その脚がレイムを突き刺していた。
    レ「……くそ!」
    左手で腰のナイフを投げる。ダイヤに当たりヒビがはいる。
    レ(はは。オレはライムレースみたいな死に方はしねぇと思ったんだけどな…)
    レ「すまねぇ……あと頼む。……兄貴」
    左から別の暗黒竜が、暗黒竜の足共々レイムの身体を突き飛ばした。粉々に崩れ去るレイムの身体にカニが群がる。
    ク「嘘だ……レイム兄さん」
    崩れ落ちるクルスニエ。
    お「レイムレースーーーーーー!!!!!!」
    おじさんは近くの槍を引き抜くと群がるカニを一掃する。
    壊れた耳飾りを手に取る。
    お「……大馬鹿野郎」
    耳飾りを握り締めポケットに入れる。近くに落ちてる盾を背負いおじさんは芙蓉に向き直る。
    芙蓉の後ろに5体の暗黒竜。そして大量の闇のカニと睨み合う。
    襲いかかる暗黒竜を盾で振り払い、芙蓉の元へ飛び込む。襲いくるカニを高く飛び躱すと、芙蓉の真上で盾を振り下ろした。
    4体の暗黒竜が一斉におじさんに襲いかかると下へと落ちるようにして躱す。
    盾が芙蓉近くに落ちると衝撃でカニは全て飛びひっくり返り、ダイヤが芙蓉の手から離れる。
    崩れ落ちる芙蓉の身体を抱き止め、おじさんがその場を離れようとすると、レイムの右手が飛ばされているのを見つける。
    気を取られた隙に、1体の暗黒竜がおじさんの背後から襲いかかる。
    背中にダメージを受けつつも、衝撃を利用しレイムの腕を握る。
    お「レイムレース…」
    芙蓉にレイムの右手を握らせて近くに寝かし、5体の暗黒龍へと立ち向かう。

    最後の1体を倒して荒い息をはく。
    芙蓉はすでに目覚めていた。
    レイムレースの右手をしっかり握り締めている。
    おじさんは芙蓉に近づき片膝をつく。
    お「大丈夫か?芙蓉」
    芙「どうして…」
    お「?」
    芙「どうして私を殺してくれなかったんですか?」
    ポロポロと涙を流し怒りと悲しみの表情でおじさんを見た。
    お「……クルスニエとレイムレースがそれを望んだからだ」
    芙「私は化け物です!暴走したら殺す!殺してくれるって約束したじゃないですか!!私は誰よりもそれを望んでいたのに……どうして!どうして!!どうしてェ!!!!うわあああああああああ」
    おじさんに縋り付くように何度も殴る。
    芙「……どうして……、レイムさんが……」
    まるで子供のように泣きじゃくる芙蓉。おじさんはそっと抱きしめる。
    遠くで二人の様子を見つめるクルスニエ。
    ク「僕の所為だ。僕があの時レイム兄さんに助けてなんて言ったから」

    [ベジトの工房]
    べ「背中の傷は大丈夫か?」
    お「ああ」
    ベ「昨日の今日じゃ、まだ痛むじゃろ。」
    お「平気だ」
    ベ「治す気は…ないようじゃな。」
    お「……」
    ベ「ほれ、熱冷ましの薬じゃ。」
    お「助かる。またすぐ軍に戻らなきゃならない」
    べ「うむ。軍にはなんて報告したんじゃ?」
    お「装置の不具合で眠っていた闇が目覚めたと…。技術者の警護についていた一名が死亡。後日、安全を確保したのち修理を続行する旨を報告した」
    ベ「……ふむ。その報告では周辺警護だけでは事足りなかった事になるな。経歴に傷をつけおってからに」
    お「そこは完全に俺の読み間違えだ。」
    べ「強がりおってからに」
    お「警備体制を見直した後、引き続きクルスニエに修理を担当してもらう。」
    ベ「そうじゃな。嘘を突き通すならそれが良い」
    お「何か言うことはないのか?」
    ベ「何かとは?」
    お「俺はレイムレースを守れなかったんだぞ?」
    ベ「話を聞く限り、あのタイミングじゃわしとて守れん。お主の行動はなにひとつ間違っておらんよ。強いて言うなら今回大敗を期したのは、ラカウン、マスウン、芙蓉の3人じゃ。お主ではないよ」
    お「いいや、本来のお前なら助けられたはずだ。」
べ「お主はちとわしを過信しすぎておるようじゃな」
    お「……」
    ベ「ランガイよ。お主は簡単に負けてくれるなよ?」
    お「厳しいな」
    べ「当たり前じゃ。お主が殺すのは芙蓉だけではないのだからな。」
    お「……」
    べ「はぁ〜、やれやれ、全くどいつもこいつも辛気臭いったらない。居心地が悪いわ」
    お「どこか行くのか?」
    ベ「うむ。いずれ薬の効果も消えラカウンの腕は消えるじゃろうが、いつまでもここに置いていても皆に悪い影響しかないからのぉ」
    お「……」
    べ「ラカウンはもういない。お主もいつまでも引きずるでない。」
    お「わかった」
    おじさんを後にし、ベジトは外に出る。
    ベジトの持つレイムの腕の周りを蝶が舞う。
    ベ「ランガイよ、お主は死した者を生き返す事に反対しておるが、わしは逆なんじゃよ。ラカウンの魂はまだ消滅しておらん。なれば、その行く末を彼ものに賭けてみようではないか」
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