神殺しの男 血の滲むほど長い時間鉄を握りしめて、しかしとうとうワタシは倒れ伏した。ささくれだった冷たい床さえも私の体力を奪っていく。なぜこのような不可解な状況であるか説明しなければなるまい。時は数日前に遡る。
私は旅人だ。彫刻や絵画を手掛ける者で、さほど名も売れず、今は学びのためになけなしの金を叩いて異國の地まで遥々やってきたのだ。その日はたいして整備もされていない山道を進んで、木々や動物たちの観察をしていた。気が付けば暗雲が立ち込め、雨が降り、ぬかるんだ地面が私の足を絡めとろうとしていた。この先には小さな集落があるらしい。
先の村で聞いた話ではここ一帯の地主が住んでいるそうだ。地図を見る限り、その集落は山岳に囲まれ、極めて閉鎖的な土地であった。何故地主が所有する広大な土地からその地を選び、定住するのか疑問であったが、どうも土地神が影響しているのではないかという話であった。興味深い話だ。専門外ではあるが。
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